山口芳裕

杏林大学医学部教授/高度救命救急センター長

プロフィール

昭和61年、香川医科大学卒。米国ハーバード大学 MGH 外科留学などを経て、現在、杏林大学医学部教授。同大学高度救命救急センター長。
東海村(JCO)臨界事故被ばく患者の治療担当(1999.10)、九州・沖縄サミット首脳医療対応(2000.7)、旧日本軍遺棄化学兵器(イペリット・ガス)事故対応(於:中国、2004.8)、北海道洞爺湖サミット医療対応(2008.7)、APEC(横浜)医療対応(2010.11)、東京消防庁・総務省消防庁の医療アドバイザーとして福島第一原子力発電所での対応(2011.3)など、数多くの現場を担当。
東京都の災害医療コーディネーター、東京DMAT運営協議会会長も務める。

講義一覧


なぜ日本の医療はテロに対応できないのか?三つの理由

医療から考える国家安全保障上の脅威(5)日本の医療の問題点と提言

残念なことだが、現在の日本の医療はテロ攻撃には対応できない。その理由として、テロの悪意に対して無防備なこと、時代遅れの教科書的知識しか持っていないこと、テロで想定される健康被害に対応できる医療体制にないこと、があげられる。最終話では、日本の医療の問題点を米国の事例を示しながら解説し、国民の命を守るための医療体制のあり方についての提言をして講義を締めくくる。(全5話中第5話)


日本のインテリジェンスは大丈夫か…行政機関の対応に愕然

医療から考える国家安全保障上の脅威(4)国家インテリジェンスの課題

「日本のインテリジェンスは大丈夫なのか」という声が海外から聞かれるという。例えば北朝鮮のミサイルに搭載されている化学剤について、「エイジング」と呼ばれる拮抗薬投与までの制限時間の観点からはまったく見当違いの神経剤を想定していたことが明らかになった。今回は、こうした日本のインテリジェンスの課題について、2017年北朝鮮のミサイルに関する安倍総理(当時)の発言、2007年中国冷凍餃子事件などの事例を挙げながら解説する。(全5話中第4話)


今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

医療から考える国家安全保障上の脅威(3)NBC兵器をめぐる最新情勢

2006年ロシアのKGB元職員暗殺には「ポロニウム210」というNBC兵器が用いられた。これは、検知しやすいγ線がほとんど出ない放射線核種で、監視の目を容易にすり抜ける。また、2017年金正男氏殺害に使われた「VX」は、2種の薬剤を混合することで強い毒性を発揮するバイナリー手法によって、空港の警備が突破された。今回は、こうしたNBC兵器によるテロ事例を検証していく。(全5話中第3話)


医療者から見た「NBC兵器」三つの特徴と救命活動のポイント

医療から考える国家安全保障上の脅威(2)NBC兵器の特徴

非対称兵器の中で最も蓋然性の高い兵器が「NBC兵器」である。NBC兵器とは、核兵器、生物兵器、化学兵器のことで、その最大の特徴は、安価で強力な殺傷能力を持つこと。特に生物兵器は、資金力の乏しいテロ組織が使う「貧者の核兵器」と呼ばれることもあるという。NBC兵器の脅威として具体的にどういうことが想定されるのか、その特徴について解説する。(全5話中第2話)


フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威

医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威

国家安全保障上の脅威といえばミサイルや爆弾投下などの「武力攻撃」を想定しがちだが、現在、特に先進諸国では異なる見方をしているという。2024年米国下院の特別委員会で、国内に大量の中毒者・死亡者を出して社会問題視されているフェンタニルが、中国の国家的戦略によって持ち込まれたものと報告されたのだ。これは「非対称兵器」と呼ばれるものの事例だが、いったいどのようなものなのか。その脅威について解説する。(全5話中第1話)