安井裕雄

三菱一号館美術館 上席学芸員

プロフィール

1969年生まれ。財団法人ひろしま美術館学芸員、岩手県立美術館専門学芸員を経て、現在、三菱一号館美術館上席学芸員。専門はフランス近代美術。

主な担当展覧会に「モネ―睡蓮の世界」(共同監修、2001)、「シャルダン―静寂の巨匠」(2012)、「ルドン―秘密の花園」(2018)、「全員巨匠!―フィリップス・コレクション展」(2018)、「1894 Visions―ルドン・ロートレック展」(2020)など多数。
「ルドン―秘密の花園」では第13回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞した。

業績詳細 https://researchmap.jp/hiroo-yasui

著書
『もっと知りたいモネ ―生涯と作品』(2010年初版、2022年改訂版、東京美術)
『もっと知りたいミレー―生涯と作品』(2014年、東京美術)
『ルノワールの犬と猫―印象派の動物たち』(2016年、講談社)
『モネ作品集』(2019年、東京美術)
『図説モネ「睡蓮」の世界』(2020年、創元社)
『ロートレック作品集』(2024年、東京美術)
『印象派の誕生』(2025年4月刊行予定、創元社)
『「不在」トゥールーズ=ロートレック』(2024年、青幻舎)

共著
『いわて未来への遺産 岩手県立美術館収蔵作品・県人美術家作品 』(「舟越保武」「麻生三郎」「千葉勝」「百瀬寿」の作品解説、1999年、岩手日報社)
『モネ入門』(2006年、地中美術館)
『コロー 名画に隠れた謎を解く!』(2008年、中央公論新社)
『まるごと三菱一号館美術館』(2013年、東京美術)
『美術と都市: アカデミー・サロン・コレクション (フランス近世美術叢書)』(「画商ルブランと画家ヴィジェ・ルブラン」、2014年、ありな書房)
『地中美術館』カタログ(「地中美術館のモネ室と晩年の『睡蓮』」、2017年、公益財団法人福武財団、http://benesse-artsite.jp/about/publication/)

講義一覧


セーヌ川ラ・グルヌイエールにみるモネとルノワールの違い

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(8)モネとルノワールと印象派の出発点

モネとルノワールの《ラ・グルヌイエール》は、パリ近郊の保養地ラ・グルヌイエールで描かれた作品で、印象派の出発点ともいわれている。興味深いことに、同じとき、同じ場所で描かれた両者の作品から、2人の作風の違いが如実に表れている。具体的な描き方や着眼点の違いを見ながら、それぞれが学んできた画法の影響を読み解いていく。(全8話中第8話)


印象派の画家たちによる最先端の表現方法「筆触分割」とは

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(7)マネのトリックと印象派の表現方法

印象派の画家たちに大きな影響を与えたマネは、最後の印象派展を見届けることなくこの世を去った。マネの最後のサロン出品作となった《フォリー・ベルジェールのバー》には、よく観察するとさまざまなトリックが隠されており、そこには時代背景やマネの社会的ステータスが反映されていることが分かる。アカデミスムを重んじるサロンと世俗を表現した印象派の違い、そして当時の最先端の表現方法などとあわせて解説する。(全8話中第7話)


マネ《エミール・ゾラの肖像》に残る浮世絵の影響

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(6)浮世絵が印象派に与えた影響

印象派の画家たちに影響を与えたといわれるのが日本の浮世絵である。ではその影響は具体的にどのような形で作品に反映されているのだろうか。マネの《エミール・ゾラの肖像》という作品を取り上げて、その中で描かれたアイテムや色使いから見てとれる、浮世絵の影響について解説する。(全8話中第6話)


マネ《オランピア》がスキャンダラス…モネへの影響の真相

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(5)《草上の昼食》と《オランピア》

マネの《草上の昼食》の影響を受けて、描かれたモネの《草上の昼食》。屋外で描かれたその表現の斬新さは、光の描き込み方をバジールの《家族の集い》など他の作品と見比べれば一目瞭然である。しかし、そんな画期的なモネの《草上の昼食》も、サロンへの出品が果たされることはなかった。その一つの理由として、スキャンダラスといわれたマネの《オランピア》の存在があったのではないかという話がある。いったいどういうことなのか。その経緯について解説する。(全8話中第5話)


マネの《草上の昼食》が問題に…スキャンダルの真相とは

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(4)マネとモネの《草上の昼食》

印象派を代表するマネとモネがそれぞれ描いた《草上の昼食》という作品。マネの《草上の昼食》について、その内容が発表当時からスキャンダルをおこしていたとする言説が長年あったが、実際にはそこまでではなかったようだ。そんなマネの本作に影響を受けたモネの《草上の昼食》は、作品の大きさに着目すると、マネとは異なる影響を与えた作品の存在が浮かび上がってくる。(全8話中第4話)


印象派の中心的画家ピサロとドガに影響を与えた人物とは

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(3)印象派を牽引したピサロとドガ

印象派を中心的に引っ張っていた画家として、ピサロとドガを取り上げる。のちに絶縁することになる2人だが、印象派展を牽引する上では手を取り合っていた。この2人がどのような影響のもとでその画風を作り上げたかを掘り下げることで、印象派の特徴やサロンにおける表現主題のヒエラルキーを窺い知ることができる。(全8話中第3話)


鍵は「真似る」…印象派の歴史をたどる上での重要な観点

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(2)絵画は絵画からしか生まれない

どんなに優れた芸術家にも手本となる先達や刺激を与え合う仲間がいるものだが、印象派の画家たちはどのような人物に影響を受けてその作風を磨いていったのだろうか。その画法でピサロやセザンヌに影響を与えたクールベ、ミレーと交流したルソーなどを取り上げ、印象派を発展させた人々との繋がりを解説する。(全8話中第2話)


風景画家だけの集まり…?誤解された印象派の本当の姿

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(1)印象派への誤解

印象派はしばしば誤解されている。風景画だけを描いていたのではないか、画家たちがとても貧しかったのではないか。そういった誤解が印象派にはまとわりつくのだが、実際には、風俗画も印象派の主題として欠かせない要素だったし、景気の波に乗って展覧会を開催していたこともあった。当時の動向や画家たちの関係性を、印象派の画家たちが影響を与えたドラクロワとコンスタブルなどをもとに具体的に掘り下げ、印象派の本当の姿を明らかにする。(全8話中第1話)


マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生

印象派の誕生~8人の主要な芸術家

モネ、ルノワール、セザンヌといった印象派の画家たちはあまりに有名だが、その「印象派」を定義するのは簡単ではない。19世紀後半、フランスはパリで開かれた第1回展覧会を皮切りに、合計8回の展覧会を足場にして形成され展開した印象派という芸術運動。その誕生と、そこで中心的な役割を果たした8人の芸術家を解説する。