講義一覧
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(8)「頭の良さ」とアストロサイト
「頭が良い人」とはどのような人のことをいうのだろうか。脳研究の結果、衝撃的な事実が報告されている。IQが高い人はIQが低い人に比べて「脳がスカスカしている」というのだ。一体どういうことなのか。実はそこには「アストロサイト」と呼ばれる脳細胞が関係している可能性があり、アストロサイトの活性化にはノルアドレナリンが重要な働きをしているという。高度な知能を発揮するヒトにとって欠かせないアストロサイトの重要性と、その活性化のためにおススメの方法について解説する。(全8話中第8話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(7)老廃物排出と睡眠の関係
脳の老廃物として有名な「アミロイドβ」というタンパク質がある。それが異常に蓄積することがアルツハイマー病の原因になるのではないかといわれているのだが、そうした脳の老廃物をどうやって排出しているのかということが長年の謎だった。近年、その謎を解く鍵として注目されているのが「脳脊髄液」と「アクアポリン4」である。そこでは睡眠が大きな役割を担っていた。いったいどういうことなのか。その仕組みと役割について解説する。(全8話中第7話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(6)4つの情報伝達方式と広範囲調節系
脳の中には「一対一」だけではなく、「一対多」や「多対多」といった情報伝達の仕組みもある。大きく分けると、4つの情報伝達の方式があるという。その中でも特に注目したいのが「広範囲調節系」という伝達方式で、私たちの日々の気分や生理の制御に大きく関わっている。そこで今回は、広範囲調節系について、そこで働く化学物質のうち重要な役割を担うセロトニンやドーパミンの詳細とともに解説する。(全8話中第6話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(5)ニューロンが生み出す活動電位
脳が情報のネットワークを形成するために不可欠の細胞「ニューロン」は、いったいどのようにして情報を伝達しているのだろうか。鍵を握るのは「活動電位」と呼ばれる電気的活動だ。ニューロンは、活動電位によって細胞間の情報伝達を行っている。しかし、情報伝達の終末部では、その電気的活動は化学信号に変換される。いったいどういうことなのか。その仕組みについて解説し、化学信号への変換に使われる神経伝達物質を紹介する。(全8話中第5話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(4)脳の構造と特徴
マウスを使った脳研究の成果は、ヒトの脳へすぐに応用できるわけではないという。それでは、ヒトの脳と他の動物の脳には、具体的にどのような違いがあるのだろうか。脳の画像を見比べると、ヒトの脳の明らかな特異点が見えてくる。ヒトの脳は大脳皮質が非常に大きいのが特徴だが、さらに外部環境と隔絶し厳重に保護されている脳の中身を見ていくと、その重要性を痛感することになる。今回はヒトの脳の内外の構造と特徴を解説していく。(全8話中第4話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(3)脳活動の測定技術
脳障害や遺伝子に着目することで発展してきた脳研究だが、脳の活動を観察する手法はそれだけではない。1700年代、生物の肉体が電気を発しているという、いわゆる「生体電気現象」の発見をきっかけに、電気的な測定法が開始される。これが後に「電気生理学」と呼ばれる学問に発展していく。そこから、脳に電極を埋め込むことで、生きている動物の電気活動を測る「細胞外記録法」へと展開し、脳細胞のミクロな活動を観察可能にした顕微鏡技術、そして、脳の解剖学的な構造を理解するのに飛躍的な進展をもたらした「脳の透明化」と呼ばれる技術へと進んでいく。それらはどのようなものなのか。それぞれ紹介する。(全8話中第3話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(2)脳科学研究の歴史
古代エジプト時代から行われてきた脳研究だが、長い間、脳は単に血液を冷やす場所だと考えられて重要視されない時代が続く。しかし19世紀、フィニアス・ゲージの事故によって脳への認識が一変する。脳はその場所によって働きが異なる、いわゆる「機能局在」であることが判明するのだが、その後、「光遺伝学」と呼ばれる分野において脳研究に革命的な進展をもたらす技術が誕生する。今回は脳研究の歴史をその端緒から振り返り、最新の研究動向を紹介する。(全8話中第2話)
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(1)脳科学と「ミクロのマクロの隔たり」
脳科学は医学のみならず、教育や経済にもその知見が応用される注目の分野である。その最前線ではいったいどのような研究成果が生み出されているのだろうか。まずは四つの次元に分けられる脳科学という学問を概説。続いて、無数の細胞による回路が詰まっている脳の解説を進めながら、最近の脳科学のニュースから死の定義を揺るがす脳の蘇生の事例を取り上げて、脳の電気活動の研究だけでは乗り越えられない「ミクロとマクロの隔たり」について伝えていく。第37回講談社科学出版賞受賞作『脳を司る脳』の著者が解説する脳科学研究の最前線。(全8話中第1話)