講義一覧
「自分をコントロールする力」の仕組み(6)訓練による実行機能発達の可能性
実行機能の発達には親子関係が重要だが、それ以外にも訓練によって発達を促進することができる。保育園や幼稚園への通園をはじめ、ごっこ遊び、モンテッソーリ教育、音楽など、子どもの実行機能の発達に良いと考えられているものも少なくない。こうしたことを親子だけでなく、地域ぐるみで行う環境づくりが進めば、より多くの子どもの実行機能を発達させていくことも可能である。(全6話中第6話)
「自分をコントロールする力」の仕組み(5)実行機能を伸ばす環境要因
実行機能には、さまざまな環境要因によって個人差が生じる。実行機能の発達を高めるためには、規則正しい生活を送る必要がある。また円滑な親子関係や夫婦関係も、ストレスなく子どもが発達していくために重要である。実行機能は自分で目標を定め自己を抑制していく力なので、過保護も悪影響を与えることになる。適度なしつけと子どもの自主性を重んじる姿勢が親子関係には求められているのだ。(全6話中第5話)
「自分をコントロールする力」の仕組み(4)実行機能発達のメカニズム
なぜ実行機能は幼児期に著しく発達するのか。3歳から5歳にかけての子どもを対象とした研究で、実行機能の発達は脳の成長と密接な関係があることが分かった。実行機能は幼児期に著しく発達した後、思考面は緩やかに発達していくのだが、中高生の時期になると欲求を抑える感情面の実行機能は一旦下がってしまう。その時期は脳に大きな変化が訪れるので欲求をうまく抑えられなくなり、暴走したりするなど不安定な時期なのだ。よって、実行機能の発達に関しては、子どもの頃から成人するまで一貫して考える必要がある。(全6話中第4話)
「自分をコントロールする力」の仕組み(3)幼児期に発達する実行機能
実行機能には感情面と思考面の二つの側面があるが、それぞれどのように発達していくのか。まず、感情面に関しては「マシュマロテスト」というテストがある。マシュマロという子どもにとって魅力的なお菓子を食べるのをどれぐらい我慢できるかを計測するのだが、こうしたテストを通じて指摘されるのは、自分をコントロールする力に関する要素として、「未来のことを考える」という側面が非常に重要で、それが幼児期に急激に発達するということだ。それは思考面についても同様で、その発達の度合いは幼児期が最も著しく、その後は緩やかになっていく。(全6話中第3話)
「自分をコントロールする力」の仕組み(2)アタッチメントと社会情緒的スキル
自分をコントロールする力の根底には、「アタッチメント」と呼ばれる親などとの情愛的な絆がある。このアタッチメントがしっかりしていれば、幼児期に「社会情緒的なスキル」、特に「実行機能」と呼ばれる自分をコントロールする力が成長する。この実行機能には主に社会性に関わる感情面と主に学力に関わる思考面の2つの側面がある。(全6話中第2話)
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
人間は起きている時間の4分の1ほど何らかの欲求を我慢して過ごしている。実はこの「我慢する」という行為は、目標のために「自分をコントロールする力」と関係があり、「自制心」とも呼ばれている。「自分をコントロールする力」は動物にはほとんど見られない人間特有の力で、教育現場などで最近、注目を集めている。「自分をコントロールする力」はいつ、どのようにして発達していくのか。子どもの自制心の発達に着目したさまざまな研究を外観し、これらの問いに対する解答に迫っていこう。(全6話中第1話)