川合伸幸

名古屋大学大学院情報学研究科教授

プロフィール

1966年京都市生まれ。
90年関西学院大学卒業。
95年関西学院大学大学院文学研究科満期退学。
心理学博士。
94~99年日本学術振興会特別研究員(DC,PD)。
99年京都大学霊長類研究所COE研究員。
2001年名古屋大学人間情報学研究科助手。
04年から同大学情報科学研究科助教授、
17年から同大学大学院情報学研究科准教授を経て、
19年から同大学大学院情報学研究科教授。
中部大学創発学術院客員教授。

専攻は比較認知科学・認知科学・実験心理学。
国立精神・神経医療研究センター神経研究所客員研究員、
文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センター・専門調査委員。
05年度文部科学大臣表彰・若手科学者賞、
09年度日本学士院・学術奨励賞、
同年度日本学術振興会・科学研究助成事業審査員表彰ほか多数受賞。

主な著書は
『心の輪郭 比較認知科学から見た知性の進化』(北大路書房、2006)、
『ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか』(講談社現代新書、2015)、
『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』(講談社現代新書、2017)、
『凶暴老人 認知科学が解明する「老い」の正体』(小学館新書、2018)等

講義一覧


認知機能を高めるのに必要なのは脳トレではなく有酸素運動

「怒り」の仕組みと感情のコントロール(5)認知能力の鍛え方

近年、「脳トレ」という脳の認知機能向上を目指したトレーニングが話題となっているが、これまでの研究の結果、脳トレが日常の生活に必要な能力の向上に寄与することはほとんどないことが分かっている。むしろ、ウォーキングなどの有酸素運動を通じて、代謝や神経伝達物質の伝達効率を上げたほうが認知機能の維持、改善には効果的で、そうすると抑制能力が高まり、怒りを抑えやすくなる。(全5話中第5話)


セルフコントロール能力は訓練によって鍛えることができる

「怒り」の仕組みと感情のコントロール(4)自制心を鍛える

怒りを鎮めるための抑制機能の働きと関連して注目されているのが「セルフコントロール」だ。これは「自制心」とも言い換えることができるが、将来のより大きな成果のために自己の衝動や感情をコントロールし、目先の欲求を辛抱する能力のことで、幼少期におけるその能力によって大学入試の成績やその後の収入にも関連することが分かっている。ではどうすればそれを鍛えることができるのか。また、そもそも怒りの発生を抑えるためにはどんな方法が効果的なのか。(全5話中第4話)


怒りを抑える方法としてとても効果的な「再評価」とは

「怒り」の仕組みと感情のコントロール(3)怒りの抑制方法

怒りの感情は他の感情とは異なり、他人とのコミュニケーションの中でのみ生じるものである。しかし、怒りを抑えられず暴力を振るうと大きな問題になる。では怒りを抑えるためにはどうすればいいか。効果的なのは、自分の置かれている状況を客観視して思い返すことである。さらに効果的なのは「再評価」という方法だ。再評価とは自分に生じた出来事を別の視点で考え直すことで、「フレーミング効果」と似ているという。(全5話中第3話)


脳が身体の状態にだまされて怒りが弱まることがある

「怒り」の仕組みと感情のコントロール(2)怒ったときの脳と体の反応

普通の状態では怒ったときの脳と体の状態は一致しているが、意図的に一致させないようにすると、脳が体の状態にだまされることがある。例えば、強く握るのが右手より左手のほうが怒りは弱くなるという。また、怒りには攻撃性の成分と不快感の成分があり、体の状態の変化は前者にのみ作用する。(全5話中第2話)


なぜ高齢者はキレやすい?…ヒトの「怒り」の本質に迫る

「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体

「高齢者はキレやすい」などといわれることがあるが、それは本当なのだろうか。実はメディアの報道では、高齢者の比率が増加していることを無視しており、データを見てみると人口比では高齢者が暴力関係で検挙される比率はそれほど高くないことが分かる。しかし、ちょっとした場面で高齢者が自分を抑制できなくなる傾向があることは事実で、そうした変化には前頭葉の機能の低下が関連している。(全5話中第1話)