講義一覧
セルロースナノファイバーとは(1)バイオマスと環境問題
悪化の一途をたどる環境問題への対応は、世界的にも喫緊の課題である。その解決の糸口として、「セルロースナノファイバー」という新素材に関して、東京大学農学生命科学研究科の磯貝明教授が連続講義を行う。初回の講義では、植物由来のバイオマスという材料を用いるサイクルが、大気中の二酸化炭素量の減少を含めたさまざまな恩恵をもたらすことを説明し、バイオマス利用の今日的重要性を強調する。(全7話中第1話)
セルロースナノファイバーとは(2)変換プロセスの問題
今回の講義では、植物の要素とその用途について詳細な解説を加える。植物の主成分は大きく分けて3種類の要素から形成されており、それぞれに特有の性質や用途がある。その中でも、セルロースは環境適応性が高いために、新たな素材として着目されている。しかし、セルロースを利用可能な素材にするプロセスで環境に負荷がかかるなど、乗り越えていかなければならない壁はいまだ存在する。そうした問題を解決する方策として、現在の最適なセルロースの利用法は考えられている。(全7話中第2話)
セルロースナノファイバーとは(3)ナノセルロースへの変換
木質セルロースから実際に素材として使えるナノセルロースへの変換過程には、安全性、コスト、質の高低など、さまざまな問題がある。そんなセルロースには大きく分けて4つの種類があり、それぞれ形状や生成方法に短所と長所があるという。そうしたなか、世界各国でさまざまな研究が行われた結果、4つの重要なブレイクスルーが起こり、材料としての実用可能なレベルにまで進展してきている。(全7話中第3話)
セルロースナノファイバーとは(4)世界の研究開発の動向
日本ではさまざまな分野の企業が、セルロースナノファイバーに大きな期待を寄せ、その研究開発に投資を行っている。また、その実用化に際して生じる問題を乗り越えるため、経済産業省を中心とした国家機関のイニシアティヴにより、この10年で官民の連携が非常に緊密になってきている。一方、海外では、セルロースナノファイバーを扱う国家機関が設立され、大規模な予算が投入され、より進歩的な施策が取られている。しかし、残念ながら日本にはこうした拠点が存在しない。ここに日本の課題があるという。(全7話中第4話)
セルロースナノファイバーとは(5)TEMPO酸化の革新性
磯貝明氏の研究室は、「TEMPO酸化」と呼ばれる手法を用いたセルロースナノファイバーの生成について研究している。セルロースを工業素材として実用化するためには、安全で安価な反応経路を突き止める必要があったが、TEMPO酸化はその条件を満たす画期的なものであった。(全7話中第5話)
セルロースナノファイバーとは(6)CNFの特性
セルロースナノファイバーは、どのような特性を持っていて、どのように私たちの生活に役立つのであろうか。磯貝明氏が、セルロースナノファイバーが持っているさまざまな特性と、その応用例に関して、豊富な研究成果とともに紹介する。高強度の材料や、包装用のフィルム、フィルターとして用いることができるだけではなく、高分子との複合化によってさらなる用途を見いだすことができるポテンシャルも持っている。セルロースナノファイバーは、さまざまな分野に発展をもたらす、まさに夢の新素材なのである。(全7話中第6話)
セルロースナノファイバーとは(7)CNFの利用状況と課題
セルロースナノファイバー(CNF)の優れた点は、バイオマス由来であるため、二酸化炭素(CO2)の吸収、固定化、削減に貢献できることである。日本はこの分野をリードしており、実際にいくつかの企業が実用化に成功している。しかし、本格的に二酸化炭素の削減に貢献するためには、いくつかの課題がある。最終話では、CNFの利用状況と課題について解説する。(全7話中第7話)