講義一覧
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
生態心理学の中心的理論である「アフォーダンス」について解説するシリーズレクチャー。アフォーダンスはアメリカの心理学者ジェームズ・ギブソンの造語で、一言でいえば「動物に行為を与える環境の資源」ということになる。すなわち、動物の行為には環境の意味や価値が大いに影響しているのであり、佐々木正人氏はこのことをトップアスリートの究極のアフォーダンスを例に示してくれた。(全9話中第1話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(2)アフォーダンスとは何か-2
アフォーダンスの特徴として、アフォーダンスを特定するのは刺激ではなく情報だと佐々木正人氏は言う。また、われわれは最初、環境の意味をぼんやりと知覚しているが、段々と分化してきめ細やかになっていく。つまり「意味が先」であるということもアフォーダンスの特徴だ。近年こうした特徴を踏まえて、リハビリテーションやアート、建築など多領域にアフォーダンスの考え方が広がっている。(全9話中第2話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(3)身体:知覚するシステム
生態心理学者ジェームズ・ギブソンは、身体のことを「知覚システム」と呼んでいる。ヒトは胎児の頃から独特の横揺らし運動を行っているが、それがあらゆる動きの原型となっているというのだ。振って揺らすことを「ダイナミック・タッチ」というが、これによって身体はさまざまな情報を知覚する。その際に重要なのが慣性モーメント、つまりある種の振りにくさである。それはどういうことなのか。(全9話中第3話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(4)水と空気にある情報
動物は空気や水といった媒質の中を移動でき、そのことで生じた情報の変化を知覚する。つまり、媒質には移動と知覚のアフォーダンスがあるということだ。われわれはそうした媒質に取り囲まれていて、その情報を探ったり、導かれたりしている。(全9話中第4話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(5)生態光学:視覚論-1
ギブソンはパイロットの視覚研究を通して、物の面(サーフェス)のきめと光があることで空気が視覚となることを発見した。さらに、その光は単なる放射光ではなくネットワークをつくる包囲光であると結論した。今回はギブソンの生態学的心理学の中核をなす視覚の理論、生態光学(エコロジカル・オプティックス)について、2話に分けて解説する。(全9話中第5話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(6)生態光学:視覚論-2
われわれの世界は、多数の面のレイアウトで構成されているが、実はその面の遮蔽のへりで起こる変化が視覚の重要な情報となっている。つまり、われわれは隠されたものを知りたいがために遮蔽を越えて移動するわけで、これが視覚の本質なのだとギブソンは説いた。ギブソンの生態学的心理学の中核をなす視覚の理論、生態光学(エコロジカル・オプティックス)について引き続き、解説する。(全9話中第6話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(7)面のレイアウトにある意味
われわれを取り囲む面のレイアウトは非常に多様である。乳児の行動を観察すると、床面や段差、あるいは壁際のレイアウトによって、さまざま動作を工夫していることが分かった。また、面のレイアウトにある物によっても、乳児は遊びながら多くのことを学んでいく。人はこうしたレイアウトにある秩序を感じ、自分で置き換えたりしながら成長していく。(全9話中第7話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(8)ダーウィンの心理学-1
『種の起源』で知られるダーウィンは、動植物に関する緻密な観察記録も多数残している。『植物の運動力』『ランの受精』など、いずれも豊富な図版を多用し、植物は外からの生態学的な情報を受けて、動きや形を生みだしていることを証明している。この点に、佐々木正人氏はギブソンの情報論との関連性を見いだしている。(全9話中第8話)
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(9)ダーウィンの心理学-2
ダーウィンは、冬になると木の葉を利用して穴ふさぎをするミミズの観察実験を行っている。その実験でも、また佐々木正人氏が行ったカブトムシの起き上がり方を観察する実験でも、動物の行為の意味は、周囲の物と1つのシステムになろうとするアフォーダンスを示していることが分かった。(全9話中第9話)