東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由
釜石の子どもたちにみる防災教育(1)しっかり逃げる社会
大きな地震は周期的に起こってきたが、およそ100年間隔となるとその記憶を次の世代に引き継ぐことが難しいという問題が生じる。そこで、片田敏孝氏は東日本大震災の8年前から釜石で防災教育に取り組んできた。その結果、子どもたちは自発的に津波から逃げる動きを取ってくれたという。(全3話中第1話)
群馬大学名誉教授
釜石の子どもたちにみる防災教育(1)しっかり逃げる社会
大きな地震は周期的に起こってきたが、およそ100年間隔となるとその記憶を次の世代に引き継ぐことが難しいという問題が生じる。そこで、片田敏孝氏は東日本大震災の8年前から釜石で防災教育に取り組んできた。その結果、子どもたちは自発的に津波から逃げる動きを取ってくれたという。(全3話中第1話)
釜石の子どもたちにみる防災教育(2)避難3原則の徹底
東日本大震災で子どもたちは、片田敏孝氏が伝えた避難3原則を実践。そのおかげで、ハザードマップの想定を超える津波の被害から逃れることができた。避難3原則で片田氏が子どもたちに本当に教えたかったこととは何か。(全3話中第2話)
釜石の子どもたちにみる防災教育(3)「津波てんでんこ」
釜石での防災教育として子どもたちに行ったのは、津波の記念碑のところに連れていき、先人の気持ちに想いを馳せることだった。東北地方には「津波てんでんこ」という言葉がある。そこには悲しい過去の繰り返しから生まれた災害の教訓が込められている。(全3話中第3話)
日本の防災の課題(1)大規模災害の増加とインフラの弊害
近年、大規模な自然災害が増えている。しかし、災害時にはハザードマップが十分に活用されているとはいえない状況もあるという。それはなぜか。そこにはインフラ整備が進んだことによって生じた、日本の防災の課題があった。(全3話中第1話)
日本の防災の課題(2)行政サービスから行政サポートへ
ハザードマップが正しく活用されないという課題が見えたことで、日本の防災対策は見直しが迫られた。覚えておくべきは、いくら対策をしてもリスクはゼロにはならないということである。そのためには行政主導ではなく、住民が主体となって防災を行わなければならない、と片田敏孝氏は語る。(全3話中第2話)
日本の防災の課題(3)災害に主体的に向き合う社会
防災で重要なことは、住民の防災意識やその知識だけではなく、実際に逃げることができるようにすることである。災害時に大事な人のことを考えて行動した結果、助からなかったケースも多い。防災対策ではこのような人間の行動も踏まえなければならない。片田敏孝氏が唱えるのは、コミュニティの連帯の強さによって主体的に災害に向かい合う社会の構築である。(全3話中第3話)
行政との関係構造から考える防災(1)行政主導の限界
日本の防災の基本は、1961年に制定された災害対策基本法から始まった。インフラが整備されていくことで被害者数は大幅に減少したが、その一方で防災に関する住民の行政への依存が進んでいったともいえる。阪神淡路大震災は行政主導による防災の限界を露呈させていた。(全2話中第1話)
行政との関係構造から考える防災(2)コミュニティ再構築
阪神・淡路大震災以後も行政主導の防災は継続されていったが、東日本大震災は行政による防災の限界を示すものとなった。日本の防災は今、思想なき防災の混迷状態にある。今後、地域社会において目指すべきは行政と住民とが一緒になって防災に取り組むことである。(全2話中第2話)
海外の防災に学ぶ~アメリカとキューバの事例から~
日本の防災に課せられた最大の課題は、国民一人一人が災害に向かい合う主体性をどう取り戻していくのかということだ。これに対して、海外の防災はどうなっているのか。今回はアメリカ、キューバの防災を取り上げながら、日本の防災について考えてみたい。