近年、なぜ異常気象の連鎖が起こっているのか
異常気象と気候変動・地球温暖化(1)異常気象の背景
異常気象の原因を理解するには、地球温暖化という長期的な気候変化の傾向と、年ごとの激しい気候変動との、両方を理解する必要がある。それは、この2つの影響が重なったときに異常気象が発生するからである。(全7話中第1話)
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
異常気象と気候変動・地球温暖化(1)異常気象の背景
異常気象の原因を理解するには、地球温暖化という長期的な気候変化の傾向と、年ごとの激しい気候変動との、両方を理解する必要がある。それは、この2つの影響が重なったときに異常気象が発生するからである。(全7話中第1話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(2)温室効果とは
地球温暖化を論じるには、まず温室効果について理解をしなければいけない。地球温暖化は温室効果の急速な強化によって引き起こされているからだ。では温室効果とはどのようなもので、温室効果ガスの人為的排出はどのくらい地球温暖化につながっているのだろうか。地球の気候システムをシミュレートする数値気候モデルによって、温暖化傾向とその原因を明らかにする。(全7話中第2話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(3)エアロゾルの影響
過去の気候を再現する、あるいは将来の気候を予測する際、「エアロゾル」と呼ばれる大気中の微粒子の効果が、再現・予測のばらつきを意味する不確実性をもたらすという。エアロゾルはどのようなメカニズムで、どのような影響を気候に与えるのだろうか。(全7話中第3話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(4)将来の気候シナリオ
地球温暖化がどのように進展するかは、人間社会がどの程度温室効果ガスの排出を抑制できるかに大きく依存する。そうした中での気候科学者の役割とは、いくつかの場合に分けた気候の将来シナリオを提示して、社会が選択を行うための材料を提示することにある。地球温暖化の進展とそれによる影響には、どのようなシナリオが予測されるのだろうか。(全7話中第4話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(5)温暖化増幅の過程
一度温暖化が進んでしまうと、温暖化を加速・増幅させるフィードバック過程が、気候システム内で次々と起こってしまう。このような悪循環は、氷雪の溶解による温暖化の加速と温暖化による温室効果ガスのさらなる増加という、2つのメカニズムに分けられる。それぞれどのように温暖化を加速させるのだろうか。(全7話中第5話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(6)極端な気候現象
地球温暖化は今後も進展していくが、それに伴って極端な気候現象が世界各地で起こると予測できる。近年の九州北部豪雨や日本に上陸する台風の強力化は、その一例として説明することができる。(全7話中第6話)
異常気象と気候変動・地球温暖化(7)長期的な気候変動
地球温暖化には加速期と減速期があり、これを生み出すような長期的な気候変動も、天候のベースを決めているといえる。そのような長期的な気候変動にはどのようなものがあるのか。また、日本にどのような影響を及ぼすのか。(全7話中第7話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(1)ジェット気流
極端な異常気象をもたらす大きな原因は、短期的な自然変動である。そのため、異常気象を理解するためには、自然変動自体を理解する必要がある。このうち、われわれの住む日本における異常気象のほとんどは、偏西風のジェット気流が蛇行することによって、引き起こされている。それは、どのようなメカニズムなのだろうか。(全6話中第1話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(2)停滞性Rossby波
偏西風ジェット気流の蛇行は、気候に対してどのように影響を与えるのだろうか。ジェット気流の持続的な蛇行は、「停滞性Rossby波」と呼ばれる大規模な大気の波動によって引き起こされるが、蛇行が生じるメカニズムや蛇行がもたらす具体的な気候への影響などさまざまな観点から、ジェット気流の蛇行がもたらす影響を読み解く。(全6話中第2話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(3)数値予報の原理
短期の天気予報に関して現在、用いられている数値予報という手法がある。この手法では、観測データを基にコンピューター上に大気を再現するため、現状の情報と物理法則にのっとった非常に正確な予報が可能になる。そのためこの数値予報は、決定論的な予報とも呼ばれている。(全6話中第3話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(4)アンサンブル予報
天気の数値予報には、数値大気モデルに伴う不確実性や複雑性に由来する、長期の予報を行えないという限界がある。そこで長期の天気予報に用いられるのが、確率論的な予報である。これは、「アンサンブル」と呼ばれるように、異なる誤差やモデルを利用して複数の予報を行い、それらを併用する天気予報である。(全6話中第4話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(5)エルニーニョ・ラニーニャ
長期の気候を予測する際には海洋の状態を織り込む必要があるが、このような海洋の変動においてもっとも大きいものが、エルニーニョ・ラニーニャ現象である。今回の講義では、このエルニーニョ・ラニーニャ現象が詳しく解説され、その影響を踏まえたアンサンブル予報の手法と実例が紹介される。(全6話中第5話)
異常気象と気候変動・地球温暖化2(6)役立つ天候予報へ
今回は、天候の在り方を決める3つの要因を再度整理した上で、アンサンブル予報が人々の社会における活動に対してどのような意義を持ち得るかが、解説される。それらの要因とはどのようなもので、さまざまな天気予報はどのようにわれわれと関わってくるのだろうか。(全6話中第6話)
異常気象を分析する(1)西日本豪雨の実態解明
2018年夏には、7月上旬の西日本豪雨や、それ以降から8月までの記録的な猛暑など、異常気象が連鎖的に発生した。今回の連続講義では、この相次ぐ異常気象の原因が解説される。今回は、西日本豪雨の実態と特徴を解明する。(全5話中第1話)
異常気象を分析する(2)西日本豪雨二つの要因
2018年の西日本豪雨はどのような原因によって発生したのか。今回の講義では、2つの原因から西日本豪雨が説明されるとともに、それをグローバルな気候の構造に位置づけて解説する。(全5話中第2話)
異常気象を分析する(3)異常高温とその原因
2018年の夏は、豪雨に加えて記録的な猛暑に襲われた夏でもあった。夏の期間全体で見れば、東日本で歴代1位、西日本で歴代2位の暑さであった。今回の講義では、この異常な猛暑の原因をジェット気流の蛇行と気候のグローバルな構造から解明する。(全5話中第3話)
異常気象を分析する(4)ジェット気流の蛇行
2018年の異常気象を引き起こした大きな要因の1つは、ジェット気流の蛇行であると考えられる。このジェット気流の蛇行は、どのように日本の異常気象を引き起こしたのか。そして、このジェット気流の蛇行それ自体は、どのようなメカニズムで起こったのだろうか。(全5話第4話)
異常気象を分析する(5)地球温暖化による影響
2018年夏の異常気象に対する分析の締めくくりは、地球温暖化による影響の考察である。温暖化傾向は、顕著な自然変動と相まって、極端な気候を異常気象へと激化させる。このような地球温暖化の傾向を踏まえるならば、異常気象に由来する災害に対して、われわれはどのように備えるべきなのだろうか。(全5話中第5話)