講義一覧
対談・反生命論(6)論争するから本を読み、勉強もする
『源氏物語』でも議論しているが、教養と家柄はどのような関係にあるのだろうか。また、かつてはあった「論争」の気風も、2000年を越えてからはなくなってしまった。論争があれば、論争に打ち勝つために本を読み、勉強をすることにもなるが、今は社会が論争を求めていない。そもそも学問や歴史は「命より大事なものがある」と考える人たちがつくってきたのだ。そうした人たちがいないのが現代で、もはやそれらを失った人類は滅びるしかない。滅びたあと、再び「反生命」を実行できる人たちが出てくれば、その人たちが「新しい人間」になる。(全7話中第6話)
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結びついたのか。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点
猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、私費で世界周遊した成果を日本に還元しようとしたのが原敬の真骨頂である。成功モデルのない時代に「自分で自分の絵図面を描く」という点では松下幸之助もまた同様である。最後に松下流「経営者の要諦」を解説し、本講義を締めくくる。(全3話中第3話)
対談・反生命論(5)「自分が大切」は下品な考え方
「自分が大事」「自分さえよければいい」というのは、下品な人間の考え方である。グリム童話などではずる賢いおじいさん、おばあさんが登場するが、そんな人たちばかりを目にする状況が、日本は70年以上続いている。ロシアなどでの革命においては、まだ社会や条件が厳しいうちから理想に燃えて立ち上がったのは、貴族層が多かった。逆にスターリンは、革命後に権力を握るが、貴族階層の人間ではないために権力と自己利用に陥ったのだ。それはヒトラーも同じである。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
今求められるリーダー像とは(2)M&Aと経営統合…松下幸之助
時代の転換期にある今求められるのは猛獣型リーダーで、その典型的な人物が世界に認められた経営者、松下幸之助である。不幸・不運の連続だったその人生の中、なぜ「経営の神様」と呼ばれるようになったのか。彼の人生、その足跡をたどりながら、今こそ学ぶべき真のリーダー像に迫る。(全3話中第2話)
対談・反生命論(4)エリートと神話
一番大事なのは、国のために命を捨てられるエリート層である。ただし、こういう人は1代では出てこない。エリート層の家が必要で、それには最低3代から5代はかかるという。因果応報と同じだが、現代人はこういう歴史的事実に耳を傾けない。その結果、人類は滅びる寸前になっている。かつて古代ローマ建国以来の元老院議員の家は、神話に出てくる神とつながる家系であった。だがその末期には、だんだんとパンとサーカスの政治が行なわれるようになり、滅びの道をひた走ったのだ。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
今求められるリーダー像とは(1)幕末転換期から学ぶ
日本の経済的地位は1990年以降低下し続け、2023年の一人当たり名目GDPは34位に転落している。企業のリーダーや政治家にとって重要なのは、今がどういう時代なのかを知ることであり、そのために幕末の転換期が参考になる。内外の国難に直面した時代、彼らがつくった仕組みと役に立つ人材の育成法とは。(全3話中第1話)
対談・反生命論(3)当たり前とは何か
自分の父や祖父母は、夜に就寝するときと病気のとき以外は、なんとなくゴロ寝することなどなかった。そのような当たり前の所作動作を出来ることが、当たり前の教育としてあった。なんでもかんでも、庶民の意見まで全部を聞いて決めれば良いというものではない。民衆が台頭する前の古代ローマは元老院がしっかりしていたが、帝政になり元老院が衰退すると、「パンとサーカス」の時代になり、最後はローマそのものが滅びてしまった。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
対談・反生命論(2)なぜ「才」より「魂」が重要か
平安時代の貴族は、普段は雅な生活に惑溺しているようでいても、いざ海賊など海外勢力の侵攻などがあった場合には、討伐に行く姿勢を崩さなかったために尊敬された。もし、「才」つまり勉強の力がどれほど優れていたとしても、頭がいいだけでは、いざというときは自分のことしか考えない人になってしまう。大事なのは誇り、つまり魂なのだ。だから、戦後の日本から真のエリート層を潰そうと、宮家や財閥を消滅させたアメリカ。結果として日本からエリート層はいなくなったのである。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
対談・反生命論(1)権威ではなく自分に従う
日本の画商に聞くと、日本人で純粋に自分が好きな絵を集めている人は、ほぼいないのだという。では、何で選んでいるかといえば、権威であったり、人の評価であったりである。言いたいことを言う。選びたいものを選ぶ。そういう人物や考え方が存在しない日本社会では、ついに本当の反骨精神をもった不良さえ見かけなくなった。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(8)小さな不幸と大きな安定
「国家は消滅しなければならない」とレーニンが『国家と革命』で述べた。本当にいい社会とは、国家のない社会なのだろうか。一方、日本の大問題は少子高齢化だが、国民が少なくても成り立つ社会を築けば問題は解決する。つまり「成長しない社会」である。江戸時代、日本の人口は3000万人ほどで続いたが、文化や学問は発展し、日本史上最大の平和の時代でもあった。小さな不幸はあったが、安定した社会を長く維持できたのだ。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(7)「家族が一番大切」の真価
ヒューマニズムより「自分の家族が一番大切」、このような心性を持つのは日本人だけになりつつあると執行氏は言う。日本は、政治機構が世界的に劣っているが民衆が歴史的な潜在意識を持っているので、まだ崩れずに済んでいる。もともと国家機構は不要で、縄文時代は小さな共同体、村社会だったから長く続いたのである。これは、たとえ隣りの村が不作で農作物がとれなくなっても助けない、つまり切り捨てることで生きられるということだ。それができない社会は滅びることになり、今の欧米はそちらに向かっている。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(6)日本は層が厚い国
ヨーロッパの頽廃が著しい。ヒューマニズムのせいだが、フランスやドイツの現状を知れば、日本はまだ捨てたものではないことに気づく。ただし、日本という国家は国家機構としてはヨーロッパやアメリカほど構築されていないかもしれないが、救いは縄文時代から培った潜在意識があることだ。その意味で日本は文化の層が厚い。縄文時代から基本的な言語である日本語も保たれている。しかも、いいかげんなので救われている面もある。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(5)欧米社会の堕落
現代の政治・社会を動かしている民主主義の考え方は、全面的にダメなのではない。しかし、下が上を選ぶ現在の選挙制度がある限り、多数派にしか正義はない。そうなると、エリートが生まれなくなるから、やがて国が滅びてしまう。日本では、戦後、占領軍が憲法を押しつけ、戦後改革が行なわれたから社会がダメになったという意見がある。だが、考えてみればヨーロッパはもっと酷い国になってしまっている。戦後レジームが日本をダメにしたのではなく、第二次世界大戦後に世界中がダメになっているのだ。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(4)縁の下の力持ち
明治時代は、本などで取り上げられる対象となるのは優れた人物であり、その歴史的業績だった。しかし、今は褒められ、評価されるのは、本来陰で行うものでわざわざアピールするものではなかったボランティアが対象になっている。これはおかしな話ではないか。強い者、優れた者を応援しないと、社会は衰退の一途をたどる。例えば、勉強なら、できる子が得する、エリートが認められる社会でなければならない。そうでなければ、やがて国が滅びることになるだろう。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(3)なぜニュース番組を見られないか
いま、テレビニュースを見ることができないと執行氏はいう。60分のニュース番組でも、ニュース報道の時間はごく少なくなっている。テレビ全体としても、クレームを恐れ、本当に優れた者、強い者を取り上げる番組が作れなくなっている。学校は勉強をしてはいけない場になり、会社は労働基準法で働くことを悪と見なしている。テレビでは毎日のように「人助けをしろ」と呼びかけている。こうした状態が続いた結果、冗談も言えない時代になってしまった。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(5)徳川斉昭の発想と阿部正弘の現実感覚
徳川(水戸)斉昭の発想は、まるで「昭和20年8月段階の大本営陸軍部、陸軍の参謀たちの作戦」のようだと山内氏は語る。一方、阿部正弘は決断までに時間はかかるけれど優れた現実感覚を持つ。相容れない両者についてどう考えたらいいのだろうか。幕府の中枢を担った彼らの政治家としての功罪を考える。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(2)「50点でいい」と思う勇気
人間にとって最も尊い思想は「人間はみんな平等」ではない。それよりも、「家族が一番大切」という価値観のほうが尊い。人間は神ではないから、最善のものなどあるわけがない。必ず欠点がある。だから、最善を狙わない。つまり、全ての子どもを愛するのではなく、自分の子どもを愛することが人間の出発点なのだ。大事なのは、最善を目指さず、「50点でいい」と思う勇気を持つこと。そうすれば自由に生きることもできる。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(4)政治家としての評価
「阿部正弘こそまさに理想的政治家」と評価する人もいるが、では阿部正弘は「中庸」の人といえるのか。開国の決意を胸に秘めながら、現実にはその大きなブレーキとなる徳川(水戸)斉昭を幕閣に招き入れた阿部正弘。その八方美人的な身の処し方からは、「郷原」の疑いも感じられるが、実際に何をなしたか政治的に分析していくと、現代にも通じる「狷者」としてのふるまいが浮かんでくるが…。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
価値と人間(1)現代の日本が忘れている価値
昨今の世界情勢を見渡すと、ヨーロッパもアメリカも日本もヒューマニズムの綺麗事で身動きが取れなくなっているように見えるのは、なぜだろうか。ローマ帝国時代の「最善のものが堕落した場合、最悪のものになる」ということわざが、その大きなヒントとなる。「弱い者を助けよ」という風潮があるが、今大切にすべきは、逆に「強い者を助ける」ことなのかもしれない。その視点から、明治日本の気概について見ていく。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
東京大学の新たな挑戦(5)産学協創と新しい財務運営
東京大学は量子コンピューティングの分野で、シカゴ大学とIBM、シカゴ大学とグーグルという2つのアライアンスにサインを行い、また日立製作所などと産学協創という組織間の連携を行っている。こうして最先端の技術分野の研究を行うためのネットワークがつくられているが、重要になるのはいかにリソース(資金)を準備するかである。東京大学は、自由度の高い独自資金を確保するため、新しい財務運営への取り組みを始めている。それはどんなことなのか。国からの補助金頼みから脱却するための方策とは。(全5話中5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(3)「中庸」と似て非なる「郷原」
江戸時代、多くの政治家や思想家が理想とした存在として「中庸(中行)を保つことができる人」を挙げている。中庸は人としてなかなか到達できない境地だが、それと一見似て非なるものが「郷原」である。他人の気に入るよう自分を抑える行為は一見美徳のようだが、実は「徳を盗む」とさえ呼ばれる卑劣さをはらんでいる。藤田東湖や吉田松陰も忠告し、現代政治でも他人事ではない「郷原」について、中庸との違いを中心に解説する。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
東京大学の新たな挑戦(4)大学間の交流と対話のチャネル
人材の交流を活発にすることと同時に、世界の大学とのグローバルな大学間交流を活発にすることも大切になる。東京大学は藤井総長のもとで大学間の行き来を積極的に行っていて、大学間連携がどんどん強化されているという。では具体的にどのような大学とどのような交流をしているのだろうか。その内容を見ていこう。(全5話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経営者の運と使命(3)自らの使命を見つける
自分はなぜ生まれてきたか。その答え、すなわち天命に出会うということが人生で一番幸せなことではないか。そう語る平林氏。そのためにはどう行動すればいいのか。そのヒントは「世の中は単純なのだ」という船井幸雄氏の言葉にある。どういう意味なのか。松下幸之助氏のエピソードなども参照しながら、人生において本当に重要な「使命」の見つけ方を考える。(全3話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(2)狂者と狷者
阿部正弘の使命は政治を安定化させることだったが、彼の行動は大奥や開明派を呼ばれた人たちとうまくふるまう、いわば「八方美人」的なもの。では阿部正弘の政治家としての本当の力量はどうなのか。問題が山積した中、亡くなった阿部正弘と指導者の本質について、少し視点を変え、モンテーニュの言葉や『論語』などをヒントに考えてみたい。キーワードは狂、狷、中庸(中行)である。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
東京大学の新たな挑戦(3)グローバル人材輩出に必要なこと
日本の優秀な人材が世界で活躍するためにはどうすればいいか。組織や個人がグローバルなネットワークを構築していれば、日本人のバリューはさらに上がると語る藤井氏。日本の大学はその基盤や価値をきちんと持っていると言う。(全5話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経営者の運と使命(2)天命と先祖がもたらす運
ツキの管理では「天命」と「先祖」への意識が重要になってくるが、そのことに平林氏が気づかされたのは60歳で第一線を退いた時だった。そこで始めたのが「富士山を世界遺産にする」ための活動である。いったいどういうことなのか。その具体的な経緯を語りながら、天命と先祖がもたらす運について考える。(全3話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(1)若き老中首座・阿部正弘の使命
阿部正弘は幕末の若き老中首座として、徳川家斉・徳川家慶・徳川家定の時代を支えた。黒船で泰平を揺るがしたペリーが再来し、日米和親条約が結ばれ、鎖国政策は終わりを告げる。近代日本への舵取りを果たしたと評価される阿部正弘について、われわれはどれだけのことを知っているだろうか。今回は江戸後期の政治家として水野忠邦から阿部正弘、井伊直弼へと至る歴史の流れを俯瞰しながら、幕末の動乱期に阿部正弘が担った使命に迫る。(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
東京大学の新たな挑戦(2)グローバルネットワークの構築へ
東京大学の新たなカレッジのコンセプトの1つは、いかにグローバルに開かれたものにするかという点だ。過去のフランスでの経験などから、グローバルに開かれた環境で研究することの重要性を語る藤井氏。今回は人材育成において、いかにグローバルネットワークが大切であるかを解説する。(全5話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経営者の運と使命(1)「ツキの管理」とは何か
企業経営のような不確実性の高い営みは、しばしば「運」の要素を用いてその成否が語られる。一般的には、コントロールできないと思われている「運」だが、(株)船井財産コンサルタンツなどを設立した経営者・平林良仁氏によれば、一流の経営者はその「運」さえも管理しているのだ。経営コンサルティング会社である(株)船井総合研究所の創業者・船井幸雄氏との出会いから始まった「ツキの管理」について、その後の人生を方向づけたエピソードなども交えながらその一端を紹介する。(全3話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
東京大学の新たな挑戦(1)新しいカレッジの構想
近年、日本は海外へ留学する学生だけでなく、海外からの留学生も減っているという。それは、日本の大学で学ぶためには日本語をマスターしなければならず、そのことが大きな壁となっているのだ。そこで東大では、そうした留学生のハードルを取り除き、さらに日本の学生が海外へ出る足掛かりとなるような新しいカレッジを構想しており、そこで彼らのインタラクション(相互作用)に期待しているのだ。そのカレッジのコンセプトは大きく2つあるという。その具体的な内容とは。(全5話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済と社会の本質を見抜く(6)公的機関の人材確保
官僚を志望する優秀な学生の減少が取り沙汰されているが、日本銀行にも優秀な人材がなかなか集まらなくなっているという。それは、若くて優秀な人材が民間企業に流れてしまうからだが、ではパブリックセクター(公的機関)としてどうするべきなのか。鍵となるのは、現行の評価体系の見直しにあるようだ。講義後半では、現在の為替レートの見方を、為替を動かす要因に焦点を当てて解説する。(全6話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済と社会の本質を見抜く(5)MBAをアメリカで取得する意義
経済政策や企業経営に携わる人間にとって、いまや欠かせない学位となっているのが「MBA(経営学修士)」だ。日本国内でも取得可能な学位だが、アメリカの一流大学でのMBA取得にはとくに重要な意義があるようだ。AIなどの技術革新が進む現代社会でなお必要とされる人間の能力と照らし合わせ、その意義を具体的に解説していく。(全6話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済と社会の本質を見抜く(3)スピード感のある意思決定
経済政策を考えるうえでは、国という単位にとらわれず、地域ごとの特性を見ていく視座が必要だ。それを可能にする細かなデータは、近年の研究や技術の発達で集まるようになっている。AI開発も著しい進展を見せる現代社会において、いかにそれらの技術やデータを活用し意思決定していくべきかを解説する。(全6話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済と社会の本質を見抜く(2)マクロ政策に対するミクロ的視座
続いて考えるのは、それぞれの社会の「違い」がどのように影響するのか、ということである。欧米と日本では、労働市場の構造からして異なる経済を持っており、それが金融政策にも影響を与えている。そもそも「日本」や「アメリカ」といった国単位で政策を考えることは適切なのだろうか。地域ごとに細かなエビデンスを集めることが可能な現代において、必要となるマクロ政策に対するミクロ的視座について解説する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済と社会の本質を見抜く(1)世界的インフレと労働市場の影響
現在の経済、そして社会の本質を、どのように見抜いていけばいいのだろうか。最初に考えるのは、インフレについてである。可能性は低いが、インフレが激化する「ハイパー・インフレーション」が起こると、いったい社会はどうなるのか。また、コロナ以降、インフレを抑えようと思っても抑えにくくなっているアメリカと、インフレにしようと思ってもなかなかインフレにならなかった日本は真逆の経済状況になっているが、その理由は何か。着目すべきは労働市場で、そこから欧米と日本の違いが見えてくる。(全6話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(4)斉昭と水戸藩、その個性と宿命的矛盾
なぜ水戸藩主・徳川斉昭は大奥からもっとも拒否されたのか。一般的には優れた政治家として知られる斉昭には見逃せない致命的な欠陥があり、最終的に幕府政治から外されることになる。それは彼の側近である藤田東湖が心配していた点でもあるが、実は水戸藩自体が非常に個性的で、それがゆえに宿命的に矛盾する構造を抱えていたのだ。(全4話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(3)家慶と斉昭の歪な関係性
優秀な政治家だと思われた水戸の徳川斉昭を、徳川家慶は幕府から外す決断をする。厳しい倹約政策を行いすぎた斉昭に圧力がかかったわけだが、斉昭が引退を迫られたのはそれだけが理由ではなかった。家慶と斉昭の間にどのような軋轢があったのだろうか。一方で家慶は、斉昭の子・慶喜を重宝することになるのだが、やがてこれが家慶の子・家定にも影響をもたすことになるのだった。(全4話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(2)家慶が比較された徳川斉昭の実像
12代将軍・徳川家慶にとって常に意識せざるを得ない存在、それは水戸藩主の徳川斉昭だった。斉昭は非常にスケールの大きな政治家で、ビジョンや理想を描き、実際に北海道開拓に乗り出すなどを行った。だが、斉昭はこのような良い面ばかりではなかったと山内氏は語る。一見優れた政治家に見える斉昭の実像とは――。(全4話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(1)12代将軍・徳川家慶とはいかなる人物か
「平凡な将軍だ」と揶揄される徳川第12代将軍・家慶(いえよし)だが、実際にどのような人物だったのか。徳川家慶が将軍職に就いた頃、国内では飢饉の問題などがあり、日本近郊には外国船が出没し、また中国・清朝ではアヘン戦争が勃発するなど、日本は「内憂外患」という非常に危うい状況にあった。さらに、将軍・家慶には常に自身の地位を脅かす2人の存在があった。それはいったい誰なのか。家慶の実像について、当時の国内外の情勢と合わせて解説する。(全4話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(4)「一致団結」とリーダーの役割
「統帥綱領」と『孫子』を読むと、戦争がはじまったときのリーダーや政治の役割など、重要事項がいくつも書かれてある。その中で大変重要なポイントが「一致団結」であると田口氏は言う。それを踏まえると、ウクライナ侵攻におけるロシアのやり方、その拙さが問題点として一層浮かび上がる。日本は大丈夫か。実はかつて日本には一致団結しやすい素地があった。(全4話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(3)緒戦の重要性
「統帥綱領」を読み解きながら戦争遂行における要諦を見ていく。ここでは戦争において、何より緒戦が重要だと書かれており、実は『孫子』でも同様のことが説かれている。そして「統帥綱領」と『孫子』の内容を読み解いていくと、今回の戦争におけるロシアの見通しの甘さが見えてくる。(全4話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(2)「七計」と日本の態度
戦争の勝敗を決めるものは何か。『孫子』にそれは「七計(七つの基準)」として明確に書かれている。その基準に照らし合わせると、なぜロシアがウクライナ侵攻を始めたのかという背景が見えてくる。そして、この問題に対して日本が取るべき態度を提示する。(全4話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
孫子と統帥綱領でウクライナ侵略を読む(1)孫子の兵法と「info war」
中国春秋戦国時代で生まれ、今なお多くの人に読まれ続ける兵法書『孫子』。また、大日本帝国陸軍が作戦を立案するために策定した手引書である『統帥綱領』。これらは、現在のロシア・ウクライナ間の戦争を見る際にも、多くの視座を与えてくれる。まずは『孫子』を見ながら、ロシアの現状、さらに日本の抱えるリスクについて解説する。(全4話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(2)非攻の実践のために
墨子は「兼愛」や「非攻」を説くだけでなく、実践する方法にも優れていた。先端的な科学技術を駆使し、攻撃側がひるむほどの防衛策の徹底を実践したのである。また、人材育成や資源の有限性に向かうため、「尚賢論」「節用論」も展開している。混乱する世界の中での「非戦」はこうあるべきだろう。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
古代中国で500年以上続いた春秋戦国時代には、さまざまな思想や軍略を掲げる思想家も群雄割拠した。その中で儒家とともに群を抜いていたのが「非戦・非攻」を主張した墨家である。秦の始皇帝以来、歴史の影に隠れていた『墨子』の記述から、現在の国家防衛を考えるためのヒントを探してみよう。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(9)人間は家畜に向かっている
カトリック信者だったミゲール・デ・ウナムーノは、「人間とは、愛のために一生苦悩して生きるか、それとも魂の苦悩を全部捨てて幸福になるか、どちらかしかない」と書いた。しかし、今を生きる人間の多くが、苦悩を捨てて、「幸福」だけを取って生きていないか。これは人間ではなく、家畜に向かっているのと同じである。有名な洋画家・林武の父は国学者で、明治以降、国語運動に命懸けで取り組み、貧しいまま一生を終えた。このような父がいたから、林武も立派な画家になった。このような魅力ある人は、少し前の日本にはザラにいた。今の世の「家畜」のような人間に魅力などあるはずがない。(全9話中第9話)
憂国の芸術(8)西郷隆盛と山岡鉄舟の「友達の書」
「憂国の芸術」には西郷隆盛と山岡鉄舟の書もある。今回紹介する西郷隆盛の書は、執行草舟が「友達の書」と名づけたもの。政府の特使として西南戦争を止めに来た山岡鉄舟に送ったものである。死を決して薄墨で書かれ、これを見て山岡は説得を諦めたという。一方、今回紹介する山岡鉄舟の書は雄大に「龍」と書かれたもの。「明治維新をやった日本人の真心が一番入っている書は、芸術的に間違いなく山岡鉄舟」だと執行は語る。大事なのは優れたものに親しむことで、これは人間とのつきあいでも同じである。(全9話中第8話)
憂国の芸術(7)ウナムーノの『ベラスケスのキリスト』
芸術作品にほれ込んで、素晴らしい体験をした一人にスペインの哲学者ミゲール・デ・ウナムーノがいる。彼はベラスケスの描いた「十字架上のキリスト」の絵が好きで、プラド美術館でいつもキリスト像と対面しているうちに、キリストと対話する体験をしたのである。その神秘体験を余すところなく描ききったのが、『ベラスケスのキリスト』という長篇詩である。この詩は、スペイン語で書かれているうえ霊的体験をもとにした詩なので日本では翻訳できる人がいなかった。この傑作を、いかに執行草舟が監訳し、『ベラスケスのキリスト』(法政大学出版局)として出版することになったのか。(全9話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(6)泥水を描いて「蓮の花」になる
洋画家 戸嶋靖昌は「優れた芸術は、汚い色が綺麗な色になる」と言った。同じことはコシノジュンコ氏の絵にも言える。まさに泥水を描いているように見えて「蓮の花」が現われてくるのが、真の芸術家なのである。ところで、芸術作品に「恋」をした偉人がいる。有名な江戸期の国学者・本居宣長である。本居宣長が『古事記』や『源氏物語』を解釈してくれたおかげで、明治期以降のわれわれもそれらを読み解くことができるのだが、その本居宣長は、今、正式に「国文学者」としては認められていない。それは本居宣長が「偏っている」と評価されているからである。だが本居宣長は、偏るほどに「恋をした」からこそ、偉業を成し遂げることができたのだ。(全9話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家重、家治、家斉編(5)家斉の時代と老中の存在
徳川の治世は、優秀な老中によって支えられていた。第10代将軍・徳川家治が死去し、天明7年(1787年)に第11代・家斉が就任すると、松平定信が老中に就任して、寛政の改革が始まるが、松平定信は寛政5年(1793年)に失脚。その後、松平信明、戸田氏教、水野忠成らが、50年に及んだ家斉の時代を支えていく。(全5話中5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(5)一流であり続けることのすごさ
「現世的に成功するかどうかは、親や先祖で決まる」と考えれば、成功しなくても気にする必要はなくなる。自分とは関係ないことだからだ。コシノジュンコ氏がすごいのは、19歳で賞を獲って以降、80歳を超えても一流を維持していることである。若くして成功すると、ふつうは10年持たない。途中で道を踏み間違えないのは、やはり「人徳」としか言いようがない。これも、「親の人徳」を受け継いでいる部分が大きいのであろう。コシノ氏が描く絵はたとえ憎らしく描かれた顔であっても、ミューズ(女神)に見える。それは彼女の心が美しいからである。心が美しい人が描く絵は、汚いものを描いても価値のあるものに変わる。(全9話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(4)田沼意次の重商政策と不運
10代将軍・徳川家治に仕えた田沼意次は、重商政策と開国政策を進めるなど時代の変化を捉えた斬新で革新的な頭脳の持ち主だった。にもかかわらず、彼の評価はあまり良いとはいえない。それは優秀なビジョンをもちながらも、タイミングに恵まれなかったからだった。その象徴的な出来事が印旛沼の干拓事業で起こっている。(全5話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(4)現世的成功をもたらす「徳」の根源
コシノジュンコ氏は戦後の焼け野原だった大阪から出てきた。日本が豊かになると、彼女のような強い個性の作家は出なくなった。強い個性は枯渇感がなければ出てこないのだ。ところで、コシノジュンコ氏はとても温かくて親切で、現世的にも成功者だが、洋画家・戸嶋靖昌(執行草舟コレクション所蔵作家)は現世的には無一文で死んだ。現世で成功できるかできないかを分けるのは、本人よりも親や先祖の違いであろう。コシノ氏はお母さんから「徳」を受け継いで成功した。執行草舟の母も徳のある人であった。(全9話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(3)家重・家治と田沼意次の関係
10代将軍・徳川家治の時代に活躍したのが田沼意次であり、さまざまな改革が行われた。なぜ家治は、三河由来の名門大名ではない田沼意次を抜擢したのか。あるいは、なぜ田沼意次が家治の信頼を得られたのか。その背景に迫る。(全5話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(3)コシノジュンコの魂と芸術
一番新しい執行草舟コレクション収蔵作品は、ファッションデザイナーのコシノジュンコ氏の絵である。彼女と話すと、日本人の燃える魂を感じる。そして、コシノ氏の母も、とても素晴らしい。生活そのものが芸術になっているような人であった。そんなコシノジュンコ氏の絵画作品には、彼女自身や彼女の母の「日本的な歴史に根差した真の反骨精神」が描かれているように感じる。それゆえ、彼女の絵のシリーズ全体を執行草舟は「ミューズ・ブラッキー(黒の女神)」と呼んでいる。(全9話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(2)将軍家のシステムと徳川吉宗の巧み
ハンディキャップを持つ兄・徳川家重と、有能であった弟・田安宗武。当然、周囲からは宗武を次期将軍にと推す声があった。父・徳川吉宗はそれをどのように考え、「次の将軍は家重に」という流れを作っていったのか。そのバックグラウンドとしてあったのは将軍家のシステムと、2つの吉宗を演じた父の巧みさだった。(全5話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(2)ベートーヴェン第5交響曲と内村鑑三全集
執行草舟は、ベートーヴェンの交響曲第5番も小学5年から毎日欠かさずに聞き続けた。すると、ベートーヴェンが音符として打ち込んだ言葉の意味が、全部分かるようになった。内村鑑三も好きで、小学生のときから読んでいた。30歳の頃に全40巻の全集が刊行され、これを毎月読みながら、自分自身の思想の根幹となった「絶対負の思想」を構築した。「自分にわからないはずがない」という決意を支えたのは、山本常朝が『葉隠』に書いた「同じ人間が、誰に劣り申すべきや」という言葉への信頼であった。(全9話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府~家重、家治、家斉編(1)徳川吉宗の後継問題
8代将軍・徳川吉宗は長男の家重を後継に指名した。しかし家重は、生まれながらに言語障害を持っており、さらに弟の宗武のほうが優秀だといわれていた。にもかかわらず、なぜ吉宗は家重を後継としたのだろうか。(全5話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
憂国の芸術(1)芸術作品こそが心を動かす
執行草舟が、自身の芸術コレクションの中から、コシノジュンコ氏の作品などを紹介するシリーズ。執行草舟は、芸術として優れているのに加え、魂の燃焼に命をかけて生きた人たちの作品を「憂国の芸術」と名づけて集めている。その大きなきっかけは、『万葉集』を自分なりに愛読しているうちに、奈良時代の人たちの顔や姿、生活まで脳裏に浮かぶようになった経験をしたからである。日本の文化が落ちるところまで落ちたとき、後世の人間に「憂国の芸術」を見てもらい、過去に魂が立派だった人たちがいたことを想起してほしいと思ってのことであった。(全9話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩(2)藩主の器量と大奥の力
なぜ徳川吉宗が8代将軍となったのか。それは御三家の紀州徳川家と尾張徳川家の違い、ひいては藩主である吉宗と継友の器の違いにあった。さらには将軍決定に大きな影響力を及ぼす「大奥」「付家老」への対応方法にも迫る。(全2話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と御三家――紀州藩と尾張藩(1)尾張徳川家が選ばれなかった理由
徳川秀忠から続く系譜が7代家継で切れたのち、御三家の中から紀州徳川家の吉宗が8代将軍に迎えられた。なぜ御三家筆頭だった尾張徳川家ではなく、紀州徳川家から選ばれたのか。尾張が避けられた要因に迫る。(全2話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(5)天下泰平と「武士の忠義」
8代将軍・徳川吉宗の時代、「法の支配」が行き届いていた天下泰平の世の中であった一方で、赤穂浪士の仇討ちに代表される「武士の忠義」も存在していた。武士とはいったい何か。どのように「法の支配」と折り合いをつけていたのか。吉宗のブレーンだった荻生徂徠、柳沢吉保の話も交えて解説する。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(4)「法の支配」が行き届いていた時代
「庶民感覚」を身につけていた8代将軍・徳川吉宗。浅草の近辺、隅田川の繁栄や花の風情など、現在につながる庶民の楽しみをつくったのも吉宗といえるだろう。加えて、御触書寛保集成と公事方御定書が編纂されるなど、「法の支配」が行き届いていたのも吉宗の時代だった。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
財務省の課題と役割を問う(2)財政危機がいかに起きるか
社会保障費の増加と新型コロナウイルスの影響により、日本の財政はこれまでにないほど拡大・悪化している。「MMT(現代貨幣理論)」が賛否を巻き起こす中、財政赤字の日本がこのまま国債に頼って借金ありきで突き進んでいった場合、一体何が起こるのか。これからの日本財政のあり方について考える。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(3)吉宗神話が生まれた背景
8代将軍・徳川吉宗は、「下から目線」、つまり庶民からとても評判のいい人間であった。その理由は、まさに吉宗が庶民感覚のわかる人間だったからである。吉宗が江戸各地に庶民たちのために行った施策と、その思いに迫る。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
財務省の課題と役割を問う(1)なぜ「悪代官」役が必要か
1989年に消費税が導入されてから約30年が経った。段階的に引き上げられ、2019年に10パーセントになった。その道のりは決して容易ではなかった。それをすれば「悪代官」といわれる増税だが、なぜ財務省はそれをあえて担ってきたのか。また、高齢化の進展に伴い、財政支出における社会保障費の割合が増加している。人口構造の変化はある程度予測が可能なものであるにもかかわらず、なぜそうした事態が起こってしまったのか。その要因の一つに、日本独自の霞が関文化の衰退があるのではないか。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(2)統治経験と大奥
8代将軍・徳川吉宗には若い頃、立派な領主としての統治経験があった。一方、非常に好奇心旺盛で、生活感覚も持ち合わせていた。そんな吉宗は大奥でも非常に評判が良かったという。影響を与えたのは母親である浄円院だろうと山内昌之氏は語る。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(1)庶民感覚と自己管理
なぜ江戸時代は約270年もの間続いたのか。それは「江戸時代が庶民たちにとって幸せなものだったからだ」と山内昌之氏は言う。そして8代将軍・徳川吉宗の時代に焦点を当てると、吉宗が将軍としてとても特異な人物であったことが見えてくる。その知られざる吉宗の一面とは?(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
米国史から日本が学ぶべきもの(5)人間力と知恵
大国アメリカを本当に理解するためには、アメリカの持つ多様な側面に目を向けなければいけない。そこでポイントになるのは人脈の構築であり、そのために重要なのは人間力と知恵である。アクセサリーとしての学問ではいけない。ではどうすればいいのか。歴史の中からそのヒントを読み取っていく。(全5話中第5話)
米国史から日本が学ぶべきもの(4)アメリカの「もう一つの顔」
第一次世界大戦後、ウィルソンに代わって政権を担ったのは共和党のウォレン・ハーディングであった。「常態への復帰」を掲げて、民主党のコックスに大差をつけて当選した彼の政策には、トランプ政権との類似性が多く見られる。それはどのようなことか。(全5話中第4話)
米国史から日本が学ぶべきもの(3)産業革命と帝国主義の始まり
南北戦争後のアメリカは、移民労働力を基盤に世界有数の工業国へと変貌する。この飛躍的な発展を可能にしたのは、アメリカ大陸の東部と西部を結ぶ大陸横断鉄道の開通であった。19世紀以降のアメリカは帝国主義段階へと入り、その領土を海外へと拡げていく。(全5話中第3話)
米国史から日本が学ぶべきもの(2)アメリカの起源と南北戦争
イギリスの北米植民地であったプリマスとジェームズタウン。その後、一気に13州にまで領地を拡大し、アメリカ独立運動へと発展する。しかし、領土拡大につれて、基幹産業や連邦制のあり方の違いから南北の対立が激化し、ついに南北戦争が勃発する。これを機にアメリカは次の時代に入っていくことになる。(全5話中第2話)
米国史から日本が学ぶべきもの(1)アメリカ社会の複雑性
1960年の「日米安保条約」の締結により、アメリカは日本で唯一の同盟国となった。しかし、われわれは本当にアメリカを理解しているといえるのか。戦前日本の3人の知米家と当時のアメリカ大統領の特徴から、アメリカ社会が持つ複雑性とその歴史を読み解いていく。(全5話中第1話)
脱人間論(11)理想、歴史、数量化
20世紀以降、「ヒューマニズム」の名のもと、世界中でエリート教育をしなくなった。だが昆虫ですら、エリートがいなくなれば、その種は滅びる。人類が築き上げてきた諸文明にも、エリート製造システムが機能していた。歴史家のトインビーは国が滅びる3つの要因として、民族が「理想を失ったとき」「歴史を失ったとき」「物事を数量で見るようになったとき」を挙げている。中でも大事な理想とは人間で言えば「初心」である。初心を忘れなければ学校であれ結婚であれ、充実したものになる。「魂」も大事だ。現代では「魂」を持ちつづけると落ちこぼれる可能性もあるが、しかし、それでも捨てないでほしい。「魂」を捨てなければ、最終的に価値のあるいい人生を送れる。(全11話中第11話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(10)エリートをつくれなくなったら滅びるのみ
1968年のパリでの学生運動の時代から、世の中が変わりだした。魂より肉体を大事と思うようになり、この流れはもう止まらない。今回のコロナ禍でさらに加速し、ホモサピエンスはいよいよ滅びるときに近づいている。過去の文明を見ると、ダメになり始めた後で救われた文明には、かならずエリート集団がいた。イギリスが一番発達したヴィクトリア朝にも、ジェントルマンと呼ばれるエリートが2万人いた。だが、現代ではエリートの養成自体がタブーになっている。その結果、移民も止められず、いまや移民の家族を養うために、もともとその国にいた人々が税金を納める構造になっている。これではデモが起きるのも当然で、そのストレスはもう頂点に達している。(全11話中第10話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(9)ちょっとした幸福が欲しくて破滅を招く
自分の人生を体当たりで生きていれば、死ぬときもジタバタしない。死を宣告されて慌てるのは、何も考えない人生を送った人である。人口についての考え方も、日本ではおかしくなっている。子どもの数が減って「国の活力がなくなる」と憂いているが、活力で大事なのは日本人の魂である。魂が賦活すれば人口が4000万人になっても、どうということはない。逆を行っているのがヨーロッパで、自分たちが楽をするため、移民を大勢受け入れた結果、フランスの南部では公立学校でフランス語を教えられなくなっているほどだ。だが、こんなことを言えば、今の世の中では抹殺される。人間的であるには人間をやめて「超人間」になるしかない。そうすれば自由に発言でき、それを後世に伝えることもできる。(全11話中第9話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(8)「犬死にでいい」の覚悟
人から嫌われてもいいと思って生きてきたが、20代で恋愛をし、好きな女性ができたときは苦しかった。相手に好かれたくて仕方なかったが、それでも自分を曲げることはしなかった。そのため、ふられてしまい、「忍ばされる恋」になったが、曲げなかったことを今は誇りに思っている。孫が生まれた今、孫を死ぬほどかわいいと思う。だが、孫のために自分を変えるつもりはない。これは死生観が定まっているからでもある。死に方が決まっていれば、生き方も決まる。自分の「志」を守れるなら、自分の人生に満足も納得もしなくてもいい。『葉隠』にあるように「犬死にでいい」という覚悟で生きることが大切だ。(全11話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(7)なぜ成功や幸福を捨てねばならないのか
三崎船舶時代に出会った悪漢政との出会いは、人生最大の幸運だった。日本一の船頭で、強烈な魂を持っていた。学歴はないが頭が抜群に切れ、膨大な取引データもすべて記憶していたほど。こういう人が50年前までの日本にはいて、日本を支えていた。だから当時はまだ希望を持てたが、今、悪漢政のような魂を持つ日本人はいない。魂を失うのは、悪魔が撒く「幸福」「成功」「社会保障」といった、おいしい餌に釣られるから。魂を賦活させるには、みんなが喜んだり、楽しいと思うものを捨てる必要があるのだ。(全11話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(6)相手の「魂」がわからなければダメ
危機の状況下で物事を解決するには、必ず痛みが伴う。どこを我慢するかが大事なのに、それが決められないから適切な対応ができない。戦争も、西側諸国では、1人でも死ぬ可能性があれば、できなくなっている。そんなことでは、今後世界の軍事は、北朝鮮と中国が制するだろう。危険が伴うのは天然資源の確保も同じで、昔から命知らずの人間がその仕事を担っていた。マグロも昔の日本人は命懸けで漁に出て捕っていたが、今はお金で買うだけになっている。しかも命懸けで捕ってきた人への感謝を忘れているのが、現在の日本である。(全11話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(5)愛のために、自分の体をなげうつのが人類
肉体よりも魂を重んじる人は、現代では落ちこぼれになってしまう。だが、魂のために肉体をいかに犠牲にするかを考えてきたのが、人間である。その代表が武士道や騎士道だといえよう。武士道や騎士道のみならず、魂のために肉体を犠牲にすることを尊ぶのが、世界中の人類に共通する思想だったのだ。家庭の秩序を守る父親も重要で、厳格な父親がいるから母親の赦しも生きてくる。キリスト教も、厳しい「神の言葉」があって初めて、「赦しも必要」というイエスの言葉が生きてくるのである。だが、その「当たり前」のことが否定され、弱者がむしろ貴族化しているのが現代である。(全11話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(4)人類は「戻る」ためのホックさえ失った
宇宙には神の摂理があるが、それを捨てた始まりがルネサンスの人間中心主義で、その行き着く先が20世紀の物質文明である。信仰心を失いながらも「信仰心は大事だ」と思い、葛藤(かっとう)していたのがヴィクトリア朝のイギリスで、その呻吟(しんぎん)と葛藤がヨーロッパ最大の文明を築いた。その後、人類は消費文明に向かい、もう戻ることはできないところに至っている。ドイツの哲学者、エルンスト・ブロッホは『希望の原理』という書物の最後で「希望はない」と述べ、「これから人類は、創世記をつくらなければならない」と喝破したのだった。(全11話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(3)なぜ大宗教家たちは「愛」を語るのか
「愛」を認識する力を持っていることが、人間が他の動物と違うところであり、世界中の宗教家が語っているのも「愛を認識せよ」ということである。宇宙のシステムは、寿命がきた星が爆発して星雲となり、やがてそこからまた新しい星が生まれてくる「無限循環」の姿である。その「無償の愛の循環」を認識し、それを地上において展開していく役割を担っているのが人間なのだ。そして、その「無限の愛の循環」を昔の人は「神」だと言ったのである。かつて、人は「神の命令」「神の言葉」に忠実たらんと欲した。だからこそ、そのついでにヒューマニズムがあることも意味があった。だが、すでに神が死んでいるのに、ヒューマニズムだけ残っているのが現代の問題なのだ。(全11話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(2)「水平社会」の間違い
「働かざる者食うべからず」は人類の鉄則なのに、今はヒューマニズムによって、それが通じなくなっている。「肉体が大事」というなら、動物と変わらない。人間が動物と違うのは、愛のために肉体を犠牲にできるところ。親孝行もその一つで、今の自分があるのは育ててくれた人がいるからだから、その「恩」を忘れてはいけない。動物のなかで、人間だけが大人から愛情をかけられなければ成長できない。それは「恩」や「愛」を学ぶためなのだ。ただし「人間中心」で考えるのが当たり前の現代では、こうした考えは通じない。だからまともになろうと思えば、もう人間をやめるしかない。(全11話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
脱人間論(1)絶望の中からしか、人類は立ち直れない
今は乱世ですらない。これまでの文明史において、乱世とは、贅沢になり驕った民族を、質実剛健で精悍な民族が打ち負かし、取って替わる時代のことであった。だが、今の人類には取って替わるものがなく、これは人類が滅びることを意味する。希望のない話だが、そもそも希望があるからよくない。希望があるから「何とかなる」と原発をつくり、あらゆる消費文明をやめずにきた。紙幣の乱発も同じで、あり得ない経済成長を信じて「大丈夫」と言っている。実際は「大丈夫」なはずなどないのだ。まずは、そこを認識しなければならない。(全11話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(7)命を投げ捨てる覚悟はあるか
偉大な民主主義国家だった時代のアメリカは、「国のために何ができるかを考えろ」と言ったケネディが当選できた。今の日本に、それを言える政治家がいるのか。王岐山が、日本の若手政治家たちに三島由紀夫や太宰治のことを聞いたら、誰もまともに答えられなかったという。日本人は、なぜここまで劣化してしまったのか。国を立て直せるのは、若いときから国の将来を憂い、命を捨てる覚悟で努力してきた人だけである。幕末維新の英傑たちも、あるいは昭和期までの政治家や実業家も、国家のために命をなげうつ覚悟を持っていた。だが今は、本当に国を憂いている人は偉くなれない社会である。教養がなく面白みのない人だけが出世している。こんな社会がダメになるのを防ぐ方法はない。考えるべきは、落ちたあと、どう立ち直るかである。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(6)作品の中に生きつづける魂
価値のあるものを残しておけば、何百年経とうが、才能のある人がその魂を受け取ってくれる。そう思って魂の芸術を集めている。優れた芸術には、作者自身の人となりがすべて入っている。だから『万葉集』を読めば当時の人と会話もできる。この考えは一種の高慢だが、高慢は気概でもある。気概にはいい面もあれば悪い面もある。いいところ取りをしたい戦後は、この気概を潰してしまった。自分が国家のために何ができるのか。愛する人のために何ができるのか。好きな芸術家のために何ができるのか。それを考えるのが人生なのだ。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(5)天皇の人間宣言と三島由紀夫
三島由紀夫は、戦後、マッカーサーの命令で出された昭和天皇の「人間宣言」を嘆いた。そして自らの作品『英霊の聲』で「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまいし」という叫びを奔出させた。しかし、「なぜ、人間なんかになってしまったのだ」という慨嘆は、あらゆる人にとって正しいことなのである。スペインの哲学者ウナムーノも「人間以上のものになろうと必死に生きて初めて、人間程度のものにしかなれない」と語った。何事も過剰にできる力がないと、ちょうどいい量はできない。今「憂国の芸術」と名付け、芸術のために死んでいった人たちの作品を集めている。過剰な思いで、魂の葛藤をした作家の作品だけが、将来の日本人の心に訴えかけるからである。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(4)そして芸術のみが残った
コロナ禍で世界中が右往左往しているのも、信仰を失った結果である。天皇への尊崇の心があれば、総理大臣も国民に、病気の根絶か経済の建て直しかという選択を迫ることができた。物事をやるには必ず痛みを伴うのに、それを「我慢しろ」と言える人がいなくなってしまった。ここまで来ると、日本人の中に天皇への信仰が復活することはない。日本人の魂を復活させられるのは、もはや芸術しかない。芸術には「自分の人生を捧げよう」と思わせる力が、唯一残っている。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(3)崇高なるものの重要性
19世紀までのヨーロッパ人には神への信仰があった。日本は神の代わりに天皇への尊崇心があった。「日本人の心のふるさと」は田園風景や里山などではなく「天皇」だったのだ。それを失ったから日本人はダメになった。崇高な存在がいないと偉大な社会はできない。人間と動物の違いは自分以外のものに自分の命を捧げられることだが、現代人はそれを失っている。しかも今や、人間はもう中世人が神を信仰したように、何かを信じることはできなくなっているのである。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(2)天皇に対する「畏怖」
執行草舟が子どもだった頃、深く感銘を覚えたのは。当時の日本人たちの「天皇に対する心」であった。共産党員でも西洋かぶれの人でも、天皇の名前を聞けば直立不動になった。天皇に対する尊崇が、日本人の良さを作っていたのである。哲学者の森有正が、サルトルやカミュらとフランス語で対等に議論を交わせたのも、自分の中に「天皇」という根っこがあったからではなかったか。だが今、天皇にそうした思いを抱く日本人はいなくなってしまった。もちろん天皇を「好き」ではあっても、「本当に愛している」と言えるか。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「壁」ありてこそ(1)作家との対話が当たり前だった時代
執行草舟が、三島由紀夫との対話などを紹介しつつ、日本における天皇の意味、芸術の意味、西洋と日本の狭間で揺れ動く葛藤の意味などについて語るシリーズ。第1話では、三島由紀夫と16歳から19歳までに7回会って文学論議をした話から、なぜ当時は、真に教養のある立派な人たちがいたかを説き起こす。執行草舟が注目するのは、当時のインテリたちが直面していた、「西洋的な科学技術や教養」と「日本人の魂」との板挟みの葛藤である。江戸期に武士の教育を受けて育った人々は、日露戦争の頃を境に、第一線からどんどんいなくなるが、その次に出てきたエリート層が抱えていたのがその「葛藤」だった。この葛藤があればこそ、立派な見識を磨きえたのではないか。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家康編(5)将軍の教養と政治への影響力
政治家にとっての教養の意義は、それを統治に生かすことにある。徳川家康・綱吉・吉宗という高い教養を有する三人の将軍はそれぞれ教養を、政治においてどのように生かしたのか、あるいはそれがどう政治に影響を与えたのか。また、綱吉と吉宗の政治においては女性(母)の影響力という観点からもその内実を見ていきたい。(全5話中5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(8)「平和の代償」について考えよ
周囲に忖度や右顧左眄(うこさべん)することなく、自らの信念を貫き「一人でもやる」ことが重要である。それをできる人が、今の日本に、どれだけいるだろうか。一方、歴史は、ときに興味深い事実を教えてくれる。たとえば、厳格な身分制度で縛られ、「生かさぬように殺さぬように」という年貢の取り立てなどで抑えつけられた江戸時代は、300年近くの平和を実現し、身分制度などを明治維新で解き放って以降の近代日本は10年ごとに戦争をするようになったことだ。ここに大きな文明的示唆がある。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家康編(4)人材登用のうまさ
太原雪斎や安国寺恵瓊といった禅僧が当時、最大の知識人として外交政策を仕切っていた戦国時代。徳川家康は、そういった政治的ブレーンとして天海や崇伝などの僧侶、儒学者の林羅山を登用する一方、ウィリアム・アダムスやヤン・ヨーステンなどの外国人、商人の茶屋四郎次郎も積極的に活用する。そのことから、家康の「人材登用のうまさ」をうかがい知ることができる。(全5話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(7)「消毒社会」は免疫力を失う
昔の日本の子供たちは、たとえ破傷風のリスクがあろうと、恐れずに泥んこ遊びをしていた。また、現在、コロナ対策のために、どこもかしこも消毒をしているが、これが続いたら「免疫力」が落ちて、大変なことになりはしないか。「雑菌」「苦悩」「嫌なこと」にも有用価値があるのだ。人間の組織にしても、「嫌なことのない組織」などつくれるはずがない。それを甘受する生き方を貫くことが大切なのである。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家康編(3)写本と文化の維持
徳川家康は非常に実務的な政治家だという印象が強いが、実は文化という面でもその維持に貢献した人物であった。それは家康が重要な書物を写本させたところにも表れている。それが今でも「蓬左文庫」「南葵(なんき)文庫」などとして残っている。(全5話中3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(6)親の「本当の愛」とは何か
ひと昔前の家庭には、強くて怖い親父と慈愛深い大甘の母親がいた。子供、とくに息子は、父を壁とし、母を盾とすることで自らの自我を確立し、成長の糧としていった。また、両親だけでなく、祖母や祖父にも、善悪のけじめを子供に教えるための覚悟があった。なおかつ親は、「軽蔑できない存在」であることが重要であった。このような親の「厳しさ」や「真の愛情」は子供にとっての「毒物」でもあるのだが、それだからこそ子供は自己成長を果たしていけるのである。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家康編(2)海外への認識と基礎教養
江戸幕府には外国との窓口として、対馬口、長崎口、琉球口のほかに松前口があった。松前口は弘前などを中心とする陸奥国にあり、そこから広がる北方地域を松前藩として幕藩体制に組み込んでいった。このことは、徳川家康が海外への認識をしっかりと持っていたことを表わしている。そうした教養を家康はなぜ身に付けることができたのか。そこには苦しい人質時代の幸運な出会いがあった。(全5話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(5)信じるものに殉じる覚悟
「そうすれば、結果的に成功するのですね」。このような「成功」や「評価」という結果から逆算する考え方は、間違っている。キリスト教も、本来は「聖書のために死ぬ」というのが基本であった。もちろん、結果として成功することはある。しかし、それは「成功しなくていい」と思っているから起きた結果なのである。「自分が信じるものに殉じる」ことが幸福なのだと考える――これは、かつてカストロやゲバラも持っていた精神だった。だから、あのような生き方には魅力がある。「自分が信じるものに殉じる」という精神を持てばこそ、誰かを恨むような思いも起こらないのだ。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~家康編(1)なぜ徳川家康は日本統一に成功したのか
徳川家康は日本という国を一つにまとめ、平和国家をつくりあげるという、現在の日本にもつながるような大きな役割を果たした。家康はなぜこのような偉業を達成できたのか。また、家康にあり、織田信長や豊臣秀吉になかったものとは何なのか。(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(4)不合理との戦いに勝ち抜く
逆境や不遇のときにどう生きたかが、その人の真価になっていく。目の前の不合理を食うことで、偉大さが身につくのである。たとえば本を1冊書き上げ、出版していく作業は不合理との戦いであり、それに勝ち抜く1つの方法である。一方、ただブログに好きなことを書くだけでは、自己成長は望めない。われわれは妥協せずに戦い、自己の信念を貫いて、愛を全うすべきなのである(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(3)「嫌なことの自己化」をする
「毒を食らう」ことを全うするうえで大切なのは「ただ1人で生き、ただ1人で死ぬ」ことだという。その覚悟があるからこそ、自分が信じる生き方を貫き通せるのである。信仰ある者にとって「ただ1人」とはいっても常に自分と神(宇宙の根源)との対話が成立する。それができれば、人の評価は気にならず、幸か不幸かも問わない生き方ができるようになる。ただし、問題はその後である(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(2)なぜ宇宙の本質が「愛」なのか
キリスト教にも仏教にも「すべてを捨てよ」と説く厳しさがあった。なぜなら、本当の愛とは、どんな危険にあっても、自らを顧みず、危険を冒して自分のなかの犠牲的精神を発揮することにあるからである。すべての星も、自らの寿命が尽きると、爆発し、死すことによって自分の材料を宇宙空間にばらまき、新しい星の材料を準備する。その自己犠牲こそが宇宙の法則であり、「愛」の本質なのである。そして、その法則を、キリストや釈迦は看破していたのである。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
毒を食らえ(1)コロナ時代の無毒化を憂う
「毒を食らえ」とは何か。それは、自分にとって「嫌なもの」「つらいもの」「厳しいもの」を、自らのなかに取り入れて、成長していくことである。ミケランジェロは「私は普通の人間が死ぬであろうほどの毒物を食べることによって、それを自分の糧としてきた人間である」と語ったという。また、乃木希典は息子がニンジン嫌いだとわかると、ニンジンだけを食べさせて克服させたという。むしろ「毒抜き」をすると、身体も精神も弱ってしまうのである。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
財政再建のために何が必要か(2)ジェネラリストの育成
財政再建に向けての課題として、マクロとミクロ、金融経済と実体経済のつながりや経済全体を見ることのできるエコノミストの不在がある。企業がこの数十年、さまざまな改革に取り組んできたのに対して、省庁は縦割り構造から脱していないのも問題だ。こうした日本の課題を解決していくためにはどうすればいいか。ジェネラリストをどう育成するかという点が鍵になりそうだ。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
財政再建のために何が必要か(1)危機感を共有する
日本の財政は長年危機的状況のまま、再建への確かな手がかりをつかめずにいる。柳川範之氏は、ただ「危ない、大変だ」と思うのではなく、危機を具体的にイメージすることが重要だと言う。危機的状況とはどんな状態のことか。どんな負担が生じるのか。危機感を共有するためには、現在の状況と、将来可能性のある危機的状況を比較することが肝要だ。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
答えなき時代、「目利き」と失敗に学ぶ(2)起業と副業のススメ
真剣にリスクテイクすれば、たとえ失敗してもその経験から学べるものがある。重要なのはその失敗の経験をどう生かすかということだ。そのために学生にとっては起業することがいい訓練になり、社会人なら副業にチャレンジなどしてその経験を積むべきだろう。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
答えなき時代、「目利き」と失敗に学ぶ(1)なぜ日本の成長力は減退したのか
かつてはどこかの成功事例をあてはめれば答えが見つかりやすい時代だったが、今は通用しない。そんな答えなき時代に必要なのは「目利き」の存在ではないだろうか。日本は皆の合意といった民主的意思決定を重要視してきたが、一方で答えがない中、何がより答えに近いのか、何が本来、力を入れるべきところなのかということは、目利きの判断力も活用すべきである。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「Go To トラベル」キャンペーンの意味を考える(2)EBPMと目的の明確化
政策においてエビデンスに基づいて検証をきちんと行い、データを活用して次のステップに生かしていくことが重要だと柳川範之氏は説く。ただし、そこで課題となるのは、政策の目的である。企業経営とは異なり、政策の場合、目的が複数で複雑になる傾向にある。そこをどう考えて進めていくか。今回の「Go To トラベル」キャンペーンはそのための事例として生かしたい。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
「Go To トラベル」キャンペーンの意味を考える(1)コロナ禍での政策の難しさ
「Go To トラベル」キャンペーンという政策にはどんな背景があったのか。また、その政策にはどんな議論が必要だったのか。今回のコロナのような難しい問題になればなるほど、それぞれのメリット、デメリットが複雑に交差し、白か黒かといった二極論では議論できない。しかし、マスコミを見ていても、議論がそうした結論だけに集中してしまう傾向にある。ではどう考えればいいのか。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(7)「人間大事」と昭和の経営者
平成不況や家電メーカーの不振を生んだのは、昭和まで続いた日本的経営の考えが軽視され、MBA流儀の成果主義に取って代わられたからだと江口氏は言う。令和の時代を迎えた今こそ、松下幸之助流の「人間大事」経営に、新たな注目が集まりそうだ。(全7話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(6)「それもまたよし」には続きがある
松下幸之助の名言として、よく引用されるのが「鳴かぬなら それもまたよし ホトトギス」の句だ。戦国三英傑の違いを表した故事に、さらに別の可能性を開いた言葉として着目される。しかし、その真意は、一般に考えられるよりも奥深い。(全7話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(7)日本人としての生き方を見つめ直す
コロナショックに見舞われたわれわれは、社会の中で重要なものを再度見定めて、毎日の暮らしを意識しながら生きていく必要がある。そこで重要なのは、西洋と東洋の違いを認識し、日本を通り越して世界のために生きることを人生の目標に掲げた佐久間象山のように、「これから自分の人生は日本、そして世界のお世話係だ」という姿勢で生きていくということだ。それが日本人的な生き方であるとして、講義を締めくくった。(全7話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(5)行即道場と日本流経営
松下幸之助は少年時代に大阪の船場に丁稚奉公に出ているが、松下幸之助と船場商人はどこが違うのか。幸之助の面白いところは、「私」が基本的な考え方である船場で学びながら、「公」という考え方を自分の中に持ち込んだことだ。そうして日本流経営の真髄に目覚めた幸之助には、仕事は単なる金儲けではなく、自分を高める場所という「行即道場」の考え方があった。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(6)日本は「命の思想」の国
東洋思想の根幹には、「命」というコンセンサスがある。日本には「草木国土悉皆成仏」という言葉があるが、ことごとくみな仏、つまり命のことで、粗略にあつかうことは命を奪うことに等しいと田口氏は説く。道元のいうように、一つひとつのことに真心を込めて取り組むことが日本人の強みであり、西洋発祥のものに対して、日本流に命を吹きかけてやることが、東洋と西洋の知の融合だという。(全7話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(4)人を育てる
自分が正しいと思えば、相手が社長だろうが誰だろうが、かまわず率直に意見する。そのような人を可愛がり、育てることも、名伯楽として「上に立つ者」の度量といえるのではないだろうか。松下幸之助は人材を見つけると、たとえやんちゃな面があっても、根気をもって育てていくところがあった。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(5)東洋と西洋の知の融合
2020年現在、新型コロナウイルスへの対応に各国は追われているが、自国ファーストを唱える国の対応も問題となっている。こうした転換期の在り方として求められるのは、東洋と西洋の知の融合である。西洋の考え方に、人を立て生かしてあげることで初めて自分が生きてくるという東洋の考え方を融合させることが重要だ。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(3)「腹中有書」で実践する
「気づきの教育」を得意とした松下幸之助により、悩みながら成長していった江口氏。自分で気づいたことは忘れないという「腹中有書」を積み重ねる中、彼は30代半ばでPHPの経営当事者に抜擢される。できるのは「幸之助の真似」だけだった。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(4)飛躍するチャンスをつくる
人々は非常に多様であり、個々人に特有の素晴らしい部分がある。その素晴らしい部分を見つけ出し引き出す「機会産業」にこれから注力していく必要があると田口佳史氏は指摘する。日本には非常に豊かな文化があり、それらを生かして世界中の人々にチャンスを与え、可能性を伸ばしていく取り組みに着手していく必要がある。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(2)気づかせる教育
『人間を考える―新しい人間観の提唱―』という本の編集という大役の最中に、江口氏は別の任務を松下幸之助自身から仰せつかる。旧著の改訂版作りに取り組めというのである。1週間から10日ほど徹夜の作業が続く中、江口氏が手にしたものは何だったのだろうか。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(3)「世界の世話係」になれ
経済成長を求める動きは、伝統や歴史によって支えられたわれわれの生活を破壊しつつあり、その一つの例が新型コロナウイルスの騒動でもあると田口佳史氏は指摘する。さらに、経済優先、自国第一主義という陽の側面のみを追求する姿勢は、大国のトップに表れている。昔から他人の世話をするという考えを共有してきた日本は、世界に先駆けてその重要性を提唱していくべきである。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
松下幸之助と人間大事の経営(1)『人間を考える』制作の舞台裏
経営者として一時代を築いた松下幸之助の言葉は、現在もさまざまな場面で引用される。なかでも一番の集大成として彼自身自負したのが『人間を考える―新しい人間観の提唱―』という著書だ。側近としてその編集に携わった江口克彦氏の話を聞いていく。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(7)自分の宿命を知ることが人生の喜び
「自分の宿命がわかることが人生の本当の喜び」という言葉があるが、これは「わきまえがある」ということでもある。貧しさも受け入れれば、貧しいなりの幸せがある。自分の出身、自分の基礎能力などといった「宿命」を受け入れ、愛することが大切なのである。また、上に立つ人間が立派になりうるかどうかは、偉大な宗教や思想が国にあるかどうかに左右される。たとえばトラファルガーの海戦で活躍した名将ネルソンは、自分は海軍軍人として「国家のために命を捨てる」と子どものときから覚悟を固めていたからこそ、破天荒で自由に生きられたのである。(全7話中第7話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(2)陰と陽のバランス
一つの選択を追求する西洋思想とは異なり、東洋思想では陰陽のバランスを重視する。経済成長という陽の側面の追求だけではバランスを失するため、人々の心の満足という陰の側面も同時に追求することが重要である。そこで田口佳史氏は、企業経営者や行政の担い手である政治家などリーダーに対し、これまでの考え方を改革する必要性を説く。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(6)「わきまえ」があることの大切さ
昔の人はみんな死生観を持っていた。「家族に囲まれて、畳の上で死にたい」「夫婦そろって同じ墓に入る」というのも一つの立派な死生観で、この死生観が、人生の最後で振り返ったときに「まあ、良かったんじゃないか」と思える基盤となっている部分も大きかった。今は「幸福にならなければ」「成功しなければ」という、強欲で「はしたない夢」を追うから、人生がつらくなる。「人生は不条理で当たり前」と思えば、わきまえも出る。わきまえがあり、「身の丈」がわかっていれば、その人なりのいい人生を送れるようになる。(全7話中第6話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(1)身体思考と天意
2020年に全世界を襲った新型コロナウィルスは、現代を生きるわれわれに転換を迫っていると田口佳史氏は語る。東洋思想に基づいて転換の必要性を語る田口氏は、頭での理解だけではなく、全身で理解する「身体思考」の重要性を強調する。この深刻な状況下でわれわれに求められているものは何か。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(5)魂は永遠で、肉体は借り物に過ぎない
武士道も仏教も禅も、すべては「無常」の哲学を表したものである。般若心経も「人間は死ぬ存在で、もともと何もない」という死生観を語っている。信者が次々に磔(はりつけ)になった原始キリスト教も、「死を思え=メメント・モリ」が中心思想だった。だが、死んでも魂は永遠であり、肉体が朽ちても魂は永遠に生き続ける。魂を鍛えるために人間は生まれ、そして死んでいく。武士道も多くの宗教も、そう考えてきた。そう考えれば肉体に固執せず、体当たりして生きる生き方もできる。(全7話中第5話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(4)政治家は自国の伝統的哲学に立脚せよ
政治家は、新型コロナ対策と称して、全国民に1人10万円お金をばら撒いた。だがこれは、悪い仲間を募るときに皆にお金を渡すのと同じ。要は、国民全員を共犯者にしたいのである。「お前たちももらっただろう」といって、最終的に政治家に責任が来ないようにしたいのだ。こうした政治になるのは、日本の政治家に哲学がないからである。政治家は、自分の国の伝統に則った哲学を身につけ、自分の国の古い言葉を発しなければいけない。フランス革命期にずる賢く生き残った政治家ジョセフ・フーシェも、その心の中にはキリスト教の「まこと」があったのである。(全7話中第4話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(6)日本の役割
ウイルスの抑え込みと経済活動の制限は深刻なジレンマとなっており、新興国では大きなダメージを負っている。こうして起こる悪循環を抑えるためにも国際協力や強い国のリーダーシップが必要となるが、アメリカにその役目は期待できない。では世界のイニシアティブを取るのは中国なのか。また、そうした中で日本が担うべき役割とは何か。(全6話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(3)すべての悪は弱さから来る
国民にこれだけ自粛を強いれば、コロナが収束しても日本人の生活は元に戻らない。テレワークの普及で働き方も変わるが、これについても政治家や官僚が何を考えているか見えて来ない。あらゆることでこれまでの流れをぶち壊した以上は、二度と元には戻らない。しかし政治家たちは、大きな変化にオロオロしているだけ。これは、水際対策を決断できなかった自分たちの失敗から逃げているから、また、死を覚悟して事に当たっていないからだ。フランス革命の革命家・ロベスピエールも、死ぬ覚悟で立ち上がった。また、民主主義の最初の思想家ルソーも「すべての悪は弱さから来る」と言った。まさに今の状況を言い当てている。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(5)デカップリング問題
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、世界中で特にアジア人への差別や排他的な論調が深まっている。そうした中、注意しなければいけないのはデカップリング問題だ。米中によるハイテク覇権争いが繰り広げられているが、今はそんなことをしている場合ではない。そうした動きを乗り越えて、世界の国々が国際協力に取り組んでいかなければならない。(全6話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(4)リーダーの役割
国家が危機のときのリーダーの役割、その行動が今、問われている。重要となるのは、情報を適切に集約し、タイムリーにメッセージを伝えることである。そこで考えなければいけないのは、国家は何のために存在するのかということだ。最も大事なのは、国民の自由と安全を守ることである。(全6話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(2)腹を切る覚悟で断行せよ
新型コロナウイルスを水際で止められなかったのは、政治家が、批判されて「腹を切る」羽目になることを怖がったからである。「伝染病を食い止めるのが俺の死に場所」と政治家が覚悟し、強権を発動すれば今のような事態にならなかった。今、まず政治家に求められるのは失敗を認めて責任を取る覚悟を固めること。そして、経済を止めず、全国民に10万円を配るより、12兆円を医療に投ずることである。国家権力は、そのような断行ができるはずである。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(3)政治のメッセージ
危機のときには、政府のトップがどのようなメッセージを国民に発していくのかが非常に大事である。それは、いくら給付するかというような枝葉末節の話ではない。そこで注目したいのはドイツのメルケル首相がメッセージで訴えたことだ。そうした政治のメッセージが今、日本でも求められている。(全6話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(2)アジア諸国の対応
過去に類を見ないウイルスの蔓延に対して、アジア諸国、特に台湾がうまく対応して抑え込みを進めることができたのはどうしてなのか。それにはITインフラの整備状況や隣国との関係、政治体制の違いなどが関係している。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
伝染病と死生観(1)逃げ惑う現代人
執行草舟が新型コロナウイルスの流行を背景に、死生観について語るシリーズ講義。これまで人類はペストという国民の3分の2が死ぬような伝染病にも立ち向かい、乗り越えてきた。だが今や人類は、まるで腰抜けのように伝染病に右往左往している。新型コロナウイルス対策で行われている「人と話すな」「近づくな」は、人類が築いてきた文明や社会を総崩壊させる。求められるのは病気という不条理を受け入れることで、それには「死」を前提に考えることが必要である。(全7話中第1話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
世界の新型コロナ対応を俯瞰する(1)中国の対応
中国の新型コロナウイルスへの対応は、初動に失敗したが、その後、本当にうまくいっているのか。これについては、SARSでの教訓の活用や、プロパガンダへの利用、サプライチェーンの問題など、多面的な評価から判断する必要がある。特に考えなければいけないのは潜在的感染者の存在である。(全6話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
民主主義の根源とは(6)絶対者なき民主主義は手前味噌
民主主義という制度を作り出した最初の1人である古代ギリシャの政治家・ソロンは、「我々は人間なのだから、人間のことを思わなければいけないと言う人たちに従ってはならない」という言葉を残したと言われる。自分たちで自分たちのために政治を行ったら「手前味噌」で際限がなくなってしまうのだ。かつて、ヒューマニズムや民主主義は「神中心の考え方」や「絶対王政」に対抗するものだったが、絶対者や王がいなくなった世界で、民主主義はまさに「烏合の衆による、自分たちのご都合主義」になってしまった。餌にありつこうとばかり考える人たちには、決して民主主義はわからないのだ。(全6話中第6話)
民主主義の根源とは(5)大切なものを命懸けで守る覚悟
武士道も騎士道も、大切なものを守るために成立した武力であった。そして民主主義も、民主主義のために命を懸ける人がいないと成立しない。だが、今の人間は「命が一番大事」になってしまった。日本人もそうだが、救いは日本人の中に道徳心が残っていること。日本人の中で武士道的なものが甦ってくれば、民主主義も機能し、日本の復活も可能になるかもしれない。自由な発言をしやすい独立企業家は、本来、命懸けの行動もしやすい。しかし、残念ながら今の商売は金儲けだけに流れてしまっている。(全6話中第5話)
民主主義の根源とは(4)傲慢さが民主主義を破壊する
日露戦争と昭和の戦争とでは、科学性や知性の基盤がまったく違う。そうなってしまったのは、日本人が謙虚さを失ったからであった。議会制民主主義の最盛期を築き上げた19世紀の大英帝国も、貴族であれ庶民であれ、誰もが負い目を持ち、幸福ではなかった。だが、それが議会制民主主義をうまく機能させることにつながったのである。イギリスの国力が衰えたのは大衆民主主義が行き過ぎ、さらにはキリスト教も失った結果である。(全6話中第4話)
民主主義の根源とは(3)命懸けの2万人がいたからこそ
良心を失ったら、民主主義は情熱のない無分別なものになってしまう。19世紀のイギリスで民主主義がうまく機能したのは、自分の思想に命を懸けられる2万人のジェントルマンがいたからだ。そして、同様に日本には自分の思想に命を懸ける2万人の武士がいた。19世紀の大英帝国と対等な条約を結んだ国は、世界でも日本だけだったが、これは英国の騎士道を貫くジェントルマンが日本の武士道を深く信頼していたからなのだ。だが、第一次世界大戦で漁夫の利を得たことで、日本人は傲慢になってしまった。これがその後の日本をおかしくした。(全7話中第3話)
民主主義の根源とは(2)人間が神になった社会の危険性
よく知られているようにアメリカ合衆国を生んだのはプロテスタント信仰だった。神の代理人たる教会から免罪符をもらえるカトリックと違い、プロテスタントは一人ひとりが神と対面する。そしてプロテスタントと同様の良心を持つのが武士道であった。このような道徳的基盤がある社会では民主主義は機能する。だが、最近の欧米人は良心を失い、その結果、民主主義の餌ばかり貪り食う人々ばかりになり、大衆迎合の民主主義になってしまった。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
民主主義の根源とは(1)民主主義は宗教から起こった
執行草舟が民主主義の根源に迫る、全6話シリーズ。世界中が民主主義となった現代では、「民主主義を知ること」は人生をよく生きるうえで必要不可欠である。今の日本人は民主主義を「甘え」に使ってしまっているが、本来は「自分たちが主体的に生きるため」に使うべきものなのである。それはなぜかといえば、民主主義はもともと宗教から出てきたものだからである。神を認めつつ、「少し」は神から自由になってもいいという考えから生まれたものが民主主義なのだと理解することが、まず大切なのである。(全6話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
国際秩序の変容~危機の予兆(1)「危機の20年」の再来か
今、国際秩序は変容の時代に入っている。第二次世界大戦の反省から、戦後「復讐のサイクル」をつくらないための国際的な信頼関係と和解が築き上げられてきた。しかし2010年代に入ってから、以前の信頼関係を切り崩す戦略を取る国々が増えたことで、国際秩序が大きく揺らいでいる。これは、ヴェルサイユ講話条約締結から第二次世界大戦勃発に至る「危機の20年」の再来なのか。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(1)ビーム社買収の裏側
サントリーは、スピリッツ事業で自身よりも大きなビーム社を、約1兆6,000億円で買収した。だが、数々の日本企業が海外企業買収で手痛い失敗を重ねている。実際にサントリーもいくつもの壁に直面することになった。とりわけビーム社の経営層がマネジメントをがっちりと握り、サントリー側の意思が十分に反映できない恐れがあったことは、これまで名だたる日本企業が直面した問題とも共通していた。サントリーの社長に就任したばかりの新浪剛史氏も、最初に手痛い先制パンチを浴びていたのだ――。はたして、なぜサントリーはビーム社の買収を決断したのか。そして、いかに壁を乗り越えて買収を成功に導いたのか。新浪剛史氏にその内実を聞く。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(1)崩壊した哲学、宗教、国家
世界で一番頭が良いと言われているマルクス・ガブリエルの考え方は、間違っているのか。また、我々の宗教への理解は間違っているのか。人間と哲学、宗教、国家との歴史的な関わりを紐解きながら「崩壊した哲学、宗教、国家」の真の意味に迫る。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(1)藤原不比等の時代
公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、逆境を克服する胆力を持ったリーダー像について語る、講演シリーズ第1回。現在の日本が置かれた状況を考える際、藤原不比等の時代こそもっと注目されるに値すると神藏氏は主張する。不比等は唐に対して、独立国家日本を構想した。(全8話中第1話)
国際秩序の変容~危機の予兆(2)地経学化する地政学
戦間期と現在では、関税率の上昇が類似している。戦間期はこれにより世界が保護主義に傾いた。さらに、当時はラジオが大きな役割を果たしたが、現在ではインターネット等のデジタル化により、情報操作や金融情報のコントロールによる経済制裁が容易になってきている。そこで“経済相互依存の武器化”という表現を使い、こうした事態を「地政学はますます地経学化してきている」と船橋洋一氏は語る。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(2)成果を生む改革
約1兆6,000億円でスピリッツ事業の大手・ビーム社を買収したサントリー。だが、よく知られているように、ビーム社を買収後、先頭に立って統合を推し進めた新浪剛史氏は、サントリー出身でないばかりか、出身業界も違う。会社の統合、とくに海外の会社との統合においては、お互いの社風・文化の摺り合わせが必須だが、生え抜きではない新浪氏はいかに臨んだのだろうか。お互いの価値を足して、最大のプラスを生むために、いかなる工夫をしていったのだろうか。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(2)文明と原始キリスト教
人類は今の文明の崩壊を迎えようとしている。松下幸之助はこのことをPHP理念の中で予言していた。では、なぜ崩壊してしまうのか。また、そもそも文明を創った正体とは何であったのか。ギリシャの哲学者であるソロンの言葉や原始キリスト教の思想を紹介しながら、文明のあるべき姿に迫る(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(2)習近平の野心
公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、中国を超大国化させつつある習近平の野心について解説する。習近平について、中国共産党史上、最弱の皇帝であるという世評まであったが、全く的外れだった。むしろ彼は自らの野心を内に秘めて、権力闘争を勝ち上がっていったのだ。(全8話中第2話)
国際秩序の変容~危機の予兆(3)中国の技術革新とトゥキュディデスの罠
中国の社会体制は、企業が政府や軍と強く結びついているため、新しい技術や情報の相互利用も容易になっている。日本は今後、こうした動きに対抗できるようなインテリジェンス機能と最新技術の活用を進めていく必要がある。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(3)欧米流経営との激突
サントリーによるビーム社の買収にあたり、ビーム社の経営陣は、「ビーム社の経営は自分たちに任されている。全部、自分たちがやる」と強力に主張した。これまでの日本企業なら、そのまま押し切られてしまったかもしれない。アメリカのエグゼクティブは、「大型案件の場合、日本の企業は買ったらどうせ手放すから、そこでそれを転売するのが基本だ。日本の会社は大変おいしい獲物だ」とさえ考えているという。だが、新浪剛史氏は主張すべきを主張し、サントリーペースでの統合を成功させた。その裏でどのようなことが行われていたのか。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(3)崇高さと人間とは何か
松下幸之助が求めたものは「崇高さ」であり、「崇高さ」の一番分かりやすい例は原始キリスト教だと執行先生は指摘する。原始キリスト教は、「自分の命よりも大切なものがある」という考え方が根本にある。では、自分の命以外に何を大切にしたのか。間違った方向に進んでいる現在のキリスト教と原始キリスト教の違いをもとに、宗教の本来的な意味について語る。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(3)中国の台頭と財政危機
日本を取り巻く困難な状況は2つあると、公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏は指摘する。まずは中国が日本のGDPの約3倍という超大国になりつつあるということだ。朝鮮半島の混乱がそこに加わって、厳しい国際環境が生じている。他方、日本国内でも財政赤字が深刻化している。(全8話中第3話)
国際秩序の変容~危機の予兆(4)イギリスの悲劇性とリーダーシップ
トランプ現象などを見ると、リーダーシップの質を維持する仕組みが世界中で壊れてきているように感じられる。注目すべきはイギリスで、しっかりと統治されていた国がなぜBREXITに向かって突っ走っているのか。その悲劇性について考えたい。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(4)「人の力」の重要性
新浪剛史氏がビーム社との統合を的確に進めることができた背景には、「頼れる人脈」があったことが大きかった。人脈は、新浪氏がハーバード経営大学院に留学していた折の友人から、サントリーがビーム社を買収した後にアプローチした専門家まで多岐にわたった。経営文化が違う会社を統合するからこそ、現地国や現場を熟知した人びとの親身の助言や助力が、何より有効なものとなるのである。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(4)偉大すぎた松下幸之助
偉大になりすぎた松下幸之助は、国家の看板になり、「良い人」としてしか振舞うことができなかった。一方で、「崇高」を求めた彼は、孤独でもあった。そのことは、松下幸之助と魂で触れ合うことができる執行先生にはよくわかる。「良い人」とはどのような人なのか、なぜ魂で触れ合うことができるのかについて執行先生が語る。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(4)松下幸之助の怒り
「君らは辛酸をなめていない、猫に小判だ」。これは85才の松下幸之助が、松下政経塾1期生に投げ掛けた言葉である。政経塾の塾生だった公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、松下の原点について解説する。戦後に味わった苦境の時代が、哲学者・思想家である松下幸之助をつくった。(全8話中第4話)
国際秩序の変容~危機の予兆(5)ナショナリズムと日韓関係
世界の分断を克服する手立てとして、ナショナリズムは有効だろうか。韓国の場合、日本に強硬な立場を取ることで、国内の支持率上昇に成功してきた。しかし、中国の台頭を考えれば、日韓はナショナリズムでつぶしあわず、大局的な戦略によって関係を構築していくべきである。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(5)企業文化を生かす
サントリー出身でない新浪剛史氏だからこそ、サントリーの良い面が見えたという。そのような経験をもとに、さらに社内のコミュニケーションをスムーズにすべく、新浪氏自ら胸襟を開いて、さまざまなことを試みていった。また、現在のサントリーの状況を社員たちに伝えるための努力も重ねている。そのような新浪氏を支えたのは、佐治信忠会長から示された「悠々として急げ」という言葉だという。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(5)不良性とコンプレックス
「不良性」とは悪い意味だけではない。また、今の時代の金髪でロックンローラーはなぜ不良とは言わないのか。時代によって変わるそれぞれの価値観について、19世紀のヴィクトリア朝と明治の日本について考察を加えながら解説する。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(5)リー・クアンユー
松下幸之助の政治ビジョンは、突き詰めれば「無税国家」「新国土創生論」「政治の生産性の向上」の3つである。公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏によれば、これらをリー・クアンユーは実践してみせたという。マレーシアから追放され、苦難を経験した彼は、いかにしてシンガポールを発展させたのか。(全8話中第5話)
国際秩序の変容~危機の予兆(6)パワーとモラリティ
香港の民主化問題は、ますます深刻化しており、中国や台湾が関与することで、長期化が予想される。こうした、世界中で生じている危機の性質を考える際には、パワーとモラリティのバランスによって成立する、国際秩序の仕組みを理解する必要がある。(全7話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
戦争の常識を覆すハイブリッド戦争にどう立ち向かうか
昨今、戦争は新しい時代に突入した。2014年のロシアによるウクライナ侵攻では、サイバー攻撃によっていつのまにか始まり、気づいた時にはウクライナ軍はすでに無力化されていた。こうした新しい「ハイブリッド戦争」に対処するために、日本社会は防衛省や自衛隊を中心として、これまでとは異なる対策を講じなければならない。
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(6)私の来歴と経営者修行
三菱商事に入社し、若き日から頭角を現して、43歳でローソンの社長に就任した新浪剛史氏。「丸の内にいるのは窮屈だった」と語る新浪氏は、いかなる道を歩み、どのような出会いを重ねて、現在に至ったのだろうか。また、ローソンの経営を手がける大きなきっかけとなった中内功氏との出会いから学んだこととは? 自身の来歴と経営者修行を聞く。(全7話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(6)経済破綻とこれからの日本
ほとんど褒められたことがなかった執行先生では褒められることが多くなってきている。それは、時代が追いつきつつあると同時に世界が破綻へと向かっていることの証でもある。また、日本は緩やかに鎖国をしていくべきだと執行先生は主張するが、なぜなのか。世界と日本を比較しながら、これからの日本人のあるべき姿に迫る。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(6)鄧小平の執念
現在、日本は中国に経済分野で大きく水を空けられている。中国の経済発展の基礎をつくったのは鄧小平である。鄧小平とはどのような政治家だったのか、公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が解説する。鄧小平の強みは、執念と粘り強さにこそあった。(全8話中第6話)
国際秩序の変容~危機の予兆(7)戦後日本の発展とこれから
戦後日本の発展は、人口ボーナスに加え国際秩序がプラスに働いたことで実現したが、現在は人口減少と経済成長率の低下などの問題が起こっている。また、現代の民主主義は資本主義の成長があってのもので、それがなければ、嫉妬の政治になっていくと船橋洋一氏は言う。日本はこうした状況を深刻に受け止める必要があるだろう。(全7話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
自衛隊改革~使える組織へ(1)「成功体験」や「伝統」を見直せ
変わりゆく時代状況において、自衛隊も変革が求められている。しかしながら伝統的な組織運営から「使える自衛隊」に変えていくには、地道な説得と自己改革が必要である。アメリカとの比較から分かったのは、国防や安全保障についての国民の関心と自衛隊への尊敬、そして彼らの働きにふさわしい処遇の重要性である。(全4話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術(7)経営者に必要なもの
いま日本企業も積極的に世界に乗り出し、海外の企業と国境を越えた統合を行うことも多くなった。欧米流の経営手法との摩擦が起きることもしばしばだ。日本企業の経営も、大きく変貌を遂げている。この状況は、「私は外資にいたことがない」と語る新浪剛史氏の目に、どのように映るのか。また、リーダーのあるべき姿、磨くべきリベラルアーツ、持つべき人脈とはどのようなものか。(全7話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
崇高と松下幸之助(7)自由度と幸福
執行先生は「商売を何のために始めるのか」について深く考え、その志を実現させるために商売を行うべきだと指摘する。松下幸之助も執行先生と同じように高い志があったが、松下幸之助の場合、商売が大きくなりすぎたため、「自由度を失う」という結果を招いてしまった。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(7)気骨の官僚・香川俊介
日本の政府債務残高は、GDP比で240パーセントに達しようとしている。国家破綻を食い止めるため、消費増税に向けて総理と官邸に戦いを挑んだ官僚がいた。財務官僚・香川俊介氏である。生涯の友人である公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、彼の気骨ぶりを語る。(全8話中第7話)
崇高と松下幸之助(8)現代人と執行草舟
現代人の脳は、既にAIよりも劣っているかもしれないと執行先生は指摘する。また、そのような現代人に必要なものは、武士道精神であり、「不幸になる」ことが大切だと語る。その本当の意味と、武士道精神を貫いている執行先生の生い立ちとはどのようなものだったのかについて紐解く。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
逆境の克服とリーダーの胆力(8)2つのマインドの両立
松下政経塾を立ち上げた松下幸之助の原点にあったのは、国家経営を誤れば全員が不幸になるという考えだった。公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏がシリーズレクチャーの最後に、リーダーにとって重要な2つのマインドについて語る。(全8話中第8話)
人間的魅力とは何か(1)魅力ある人がなぜ消えたか
人間が何かを成し遂げる上で最も重要で本質的なのは、勇気である。それを教えてくれた小林秀雄を中心に、1980年代頃の知識人はみな魅力があった。知識人のみならず、正直に生き、仕事に命を懸ける市井の人々も、皆、魅力的だった。だが、今やそのように魅力的な人にはなかなか出会えない。文学も哲学も思想もなく、ましてや武士道などお呼びではない人々ばかりになってしまった。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
自衛隊改革~使える組織へ(4)日本の防衛装備の課題
日本の防衛装備の課題は、高騰する開発コストに対処することである。そこで、そのための開発を他国との協働で行い、他国も使ってくれるものを作っていくことが必要となるだろう。また、大学などでこれまで消極的であった防衛や安全保障についての研究に積極的に協力していくことも求められる。(全4話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(2)世間話がおもしろい人の魅力
村松剛は身内や家族をとても大切にしていた人で、だからこそ、その世間話は絶品におもしろく、新鮮だった。女性も、昔はとても強い存在だった。いずれも、きれいごとをいわず、本音で生きていたからである。本音で生きることも、勇気の一つなのである。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(3)日本人は、今や我利我利亡者だ
今、日本人は「幸福病」になってしまった。どこまでも経済成長したい、成功したいという欲望ばかりで生きているように見える。しかし、かつて宗教者たちは、「自我を捨てよ」と説いてきた。なぜ「自我を捨てるのか」。哲学的に苦闘してきた執行氏は、「真の幸福とは、他人に対して願い、祈るものだ」と気づく。「自分の幸せ」ばかりを際限なく求めるありかたは、「我利我利亡者」なのである。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(4)「豊かさ」の本質
戦後、日本国民が餓死の危機に怯えるほど窮乏していた時期に、松下幸之助は「繁栄による平和と幸福(PHP=Peace and Happiness through Prosperity)」という標語を掲げた。だが、もし現代に幸之助が生きていたら、「心を豊かにする」すごい産業を思いついたのではないか。天才は、その時代に何が求められているのかがわかるのだ。そして、「何が必要なのか」が見えるからこそ、物事に際限を設け、上限を打つことができる。そうでなければ、第3話でも論じたように、人間は「我利我利亡者」に堕してしまうのである。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
海外M&A成功の条件(1)サントリーのビーム買収に学ぶ
「M&A」は、「M&Aでいい企業を手に入れたから成功」などということは、けっしてない。むしろ、M&Aをしたあとにこそ、見せ場が訪れる。いかに、買収先企業の価値を高めることができるか、である。だが、日本企業はとりわけ海外企業のM&Aで失敗する事例が多い。高値でつかまされて、安値で売らざるをえなくなるのである。どうすれば成功できるのか。その詳細なヒントを、サントリーのビーム買収の事例から学ぶ(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(5)渇望する魂に叫べ
ダグラス・マレーというイギリスのジャーナリストが書いた『西洋の自死』という本には、「人間から渇望感がなくなったから、経済や世界がダメになった」ということが書いてある。本当に素晴らしいものになろうと思ってもなれず、枯渇感を抱き、呻吟することこそ、人間の人間たるゆえんである。本当に大切なのは、そのような「魂の問題」であり、「自分の命より大切なものに、向かって生きる」ことなのに、なんでもかんでも経済や金融の問題に収斂(しゅうれん)させようとするから、道を誤るのである。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
海外M&A成功の条件(2)慧眼、準備、そして猛獣
サントリーは、いきなりビームの大型買収に打って出たのではなかった。実は1980年代から小口、中口のM&Aを行なって、経験と人材を蓄積してきたのである。サントリーがこのビーム買収を「グローバル化のための最後のチケット」と位置付けて、大きな借金を背負う決断ができた背景には、それらの経験の積み重ねがあった。さらに、問題点をあらかじめ洞察し、多文化で育った猛獣を招き入れる決断まで行なったのだ。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(6)捨てることの大切さ
損切りをするのは、とても難しい。特に、まだ「完全な失敗」だと決まってはいないものを捨てる決断をするのは至難の業である。だが、そこで勇気を出して損切りをすればこそ、新しい幸運を招き寄せることができるのである。さらにいえば、昔は「人生はつらいものだ」と強調されていたので、かえって人生を楽しいものだと思うことができた。一方、現代では「人生は素晴らしい」などとばかりいっているから、かえって壁に直面するとすぐに心を病むような事態に陥ってしまうのだ。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
海外M&A成功の条件(3)不可欠な「情」「理」「伝統」
「何のために、ものを作っているのか」「何のために、われわれはこの会社にいるのか」。それは、M&Aにおいても重要な要素であるという。むしろ、異文化のものを統合するプロセスだからこそ、それをきちんとつめていくことが重要になるのだ。そのためには、ウィットに飛んだ「情」、経理システムなどの制度を確立する「理」、そして「伝統」をうまく伝達する熱意と工夫が重要になるのである。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(7)大家族主義の美点とは
昔の日本では、長男は地元の師範学校に進んで地元の学校の先生などになり、たとえ次男以下が東京大学を出て偉い官僚になろうとも、長男には頭が上がらなかった。また、生活水準は親程度でいいが、「人間的に伸びたい」という欲求を持っていた人も多かった。そのような点が、実は「大家族主義」の素晴らしいところだったのである。そのことを、いま日本人は思い出す必要がある。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
海外M&A成功の条件(4)日本におけるM&Aの歴史
日本では第二次世界大戦の折に、国による統制経済化が社会の隅々に浸透したため、民間のM&Aの気運がしぼんでしまった。さらに共同体論的な「日本的経営」の伝統が確立したため、M&Aは「乗っ取り」というネガティブな感情ばかりが強くなり、M&Aが持つ買収のダイナミック・ケイパビリティが、うまく発達しなかった。だがもはや、統制経済型の人がやってうまく行くほど、世界は単純ではなくなった(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(8)すべてを「自分のせい」にせよ
マイケル・ヤングの『メリトクラシー』という本を読んで、なぜビクトリア朝が素晴らしかったのかがわかった。あの時代は、皆が「負い目」を持っていたというのだ。たしかに、「負い目」を持って、なおかつすべてを「自分のせい」にし、「克己心」を持って挑んでいくところから、素晴らしいものが生まれてくるのである。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
海外M&A成功の条件(5)なぜ戦略性が育たないのか
無駄な仕事で疲れ果て、多忙で、まったく余裕がないなかで働いている日本人。だからこそ、野獣が育まれないし、戦略性も育たない。しかも、同調圧力が高いため、人と違うことをすることを恐れ、皆が「家畜」になっていく。これではいけない。ゆとりを持ち、人と違うことを楽しむことが不可欠である。そして、自分独自の「勝ち上がりの方程式」を追求すべきではないか。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
人間的魅力とは何か(特別篇1)民族の「魂」を呼び覚ませ
執行草舟は、「人間の魂を本当に伝えられるものは、残っている芸術作品だ」という信念に基づいて、書画を蒐集している。その作品から、作者の魂が確かに伝わってくるのである。この「特別篇」では、そのようにして集められた芸術作品を見ることを通して、山岡鉄舟、白隠、そして、その他の人々の本質に迫っていく。(全4話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
科学的思考はなぜ大切か(1)「状態図」という概念
松下幸之助は著書『道をひらく』の中で「なぜ」を繰り返し、科学的思考に着目することの重要性を説いている。そこで、岡部徹氏の用意した「水と塩を混ぜたらどうなるのか」「透明な氷を作るにはどうしたらよいか」などの問いに対して、科学的思考を働かせながら考えてみた。そこで大事なのは状態図などの科学的な概念だという。(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(特別篇2)死期を悟った日本男児たち
山岡鉄舟は、皇居に向かって座禅を組みながら亡くなったという。自分の死期を悟っていたのである。しかも、鉄舟の書が数多く残っているのは、廃仏毀釈で苦しんでいる仏教寺院を救うために、書を売ったお金を充てていたからであった。そのように崇高な武士の魂が、たしかに鉄舟の書からは伝わってくるのである。(全4話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
科学的思考はなぜ大切か(2)サイエンスの見方
一般家庭の冷蔵庫で作られる「白い氷」と、氷屋などで売られている「透明な氷」。この2つの違いは何か。また、「透明な氷」はどのような手法で作ることができるのか。その方法を解説しながら、サイエンスの見方、すなわち科学的思考の重要性、について説く。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(特別篇3)心意気あふれる白隠禅師の書
白隠は自分一人だけの禅を貫きながら、周りの人々に「南無地獄大菩薩」などと記した書を与えていた。「これを拝めば救われる」と、御札代わりに渡していたのだ。その白隠こそが、臨済宗の禅の中興の祖となった。そんな白隠の生き方、そして彼の書から、「人間一人の力」の偉大さが伝わってくる。(全4話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
科学的思考はなぜ大切か(3)工業的な応用
「透明な氷」を作るときの考え方は、工業的に広く応用されているという。また、透明な氷の作り方にはいろいろな方法があり、どの方法が最適であるかは、状況によって異なる。大事ポイントは、自然科学的な理解のもとに様々な方法を考えれば、必ず適切な方法にたどり着くということだ。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人間的魅力とは何か(特別篇4)執行草舟コレクションを見る
執行草舟のコレクションには、山岡鉄舟や白隠ばかりでなく、高橋泥舟や近藤勇、三島由紀夫などの書、さらに安田靫彦の絵画など、数多くの名品が含まれている。それらの書画に間近に接しながら、各々の人物に想いを馳せ、いまわれわれが受け取るべき「魂」を探っていく。(全4話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
科学的思考はなぜ大切か(4)基礎数学の大切さ
よく耳にする醸造酒と蒸留酒。この2つの違いや作り方などについて岡部徹氏の解説が進んでいくが、それを理解する上で伝えたいのは「基礎的な数学」の大切さだ。岡部氏も学生の時には、「自然対数など、何でこんな訳が分からない関数の勉強する必要があるのか」と思っていたという。実際には、工学を学び、それを使う上では数学的思考は必ず必要になるという。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(1)「命懸けの読書」とは何か
執行草舟は小学生のころ、1行もわからないのに、岩波文庫のカントによる『純粋理性批判』を読み通したという。当時は、結局カントはわからなかったものの、他の本が易しく思えてしかたがないということを経験した。しかも、時が経つにつれて、当時はわからなかったことも、「わかる時期」が来るという。なにより読書を「当事者」として実践することが大切なのである。そうすれば、おのずと「行間」も読めるようになってくる。(全10話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
科学的思考はなぜ大切か(5)錬金術師と現代科学
岡部徹氏は自らを「錬金術師の末裔」と呼ぶ。また、万有引力で知られるアイザック・ニュートンも錬金術師だったという。自然科学の巨匠と錬金術との関係は何なのか。古今東西、人間が魅了されている「金」はどのようなプロセスで作られているのか。学問としての錬金術について解説する。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(2)「本当のことが書いてある本」の価値
本は「本当のことが書いてある本」を読むべきだという。つまり、ある1人の人間が、本当に信じたことを書いた本を読め、ということである。ヒトラーの『わが闘争』にせよ、マルクスの『資本論』にせよ、あれほどの人を巻き込んだということは、それだけの力が内在しているということなのである。それをあえて看過するのは、歴史に押しつぶされた「文明の疲弊」である。(全10話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(3)「笑顔のファシズム」を越えてゆけ!
日本では、たとえば「戦争肯定」の話をすると、それだけで吊し上げられてしまう。だが、これは「ファシズム」であり、スターリンの所業と、その本質において変わらないのではないか。実はイギリスのジェントルマン教育の目的は、「ただ1つの哲学を持つ人間をつくる」ことだった。そして、自分でその発言に対する責任を取りさえすれば、どんな考えを持ってもよいとされていたのだ。(全10話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(4)読書だけが運命を知っている
いい人生を送った人とは、自分の運命だけに体当たりした人である。だが、自分の人生は誰にもわからない。だからこそ、読書をし、過去の偉い人もそうしてきたと知ることで、「自分もやるぞ!」という勇気を得るのである。そのためには、本に没入し、実践し、突進して、自分自身で突破していくしかない。(全10話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(5)読書の根本は神秘との対面
昔の人間は、わからぬものは、わからぬままに受け入れた。夫婦でも、「男は女をわからない」「女は男をわからない」と考えていたからこそ、かえって離婚も少なかった。だが、いまは、みんな賢しらで「わかった」と思い込み、思いどおりにならなければ、投げ捨ててしまう。そもそも、他者の魂など、そう易々と「わかるはず」がないのである。魂をわかるためには、体得するしかない。そのためには、自己責任の体当たりで向かっていくしかないのである。(全10話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
読書と人生(6)読書人がバカにされる時代
現代社会では、価値の主客転倒が起こり、読書人がバカにされるようにさえなった。だが、読書人がいなくなるということは、人間が「魂」に対する興味を失ったことを意味している。そして読書をしなくなったから、人間社会はヒューマニズムという化け物に喰われてしまうことになった。ノートルダム寺院の火災後に現われた状況は、欧州の魂が死んでしまったことの象徴である。そしてそれは、実は内村鑑三が予言したとおりだったのだ。(全10話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(7)人間は、「混沌」を持つ存在である
第5回で、「読書の根本は、神秘に対面すること」と説いたが、この「神秘」はすなわち「混沌」でもある。「混沌」とは、「理論では解明できない1つの持続した思考」である。そのような「混沌」があることが、人間の人生が尊い唯一のいわれだと、執行草舟はいう。また、あらゆる能力において人間を上回るAIが、どうしても人間に敵わないことこそ、「混沌」なのだ。「混沌」を否定する人は、単細胞になる。読書は、このような「混沌」を養うためにも不可欠なのである。(全10話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(8)合理性こそが愚かしい
あまりにキリスト教に血道を上げたためにイギリスとドイツに追い抜かれた国・スペインで、いまや教会の鐘が鳴らなくなった。騒音問題で訴えられたのだという。まさに社会がきれいごとに押し潰されているのである。これを打開するためには、「人生を捨てる」ような人物が必要だろう。そもそもキリスト教は、「すべてを捨てよ」と命じるような宗教であった。そして日本でも、内村鑑三の生き方が、大きくわれわれに訴えかけてくるのである。(全10話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(9)「護憲論者」に転じた理由
かつて憲法第9条に反対論を唱えていた執行草舟は、近年、憲法9条護持論者になったという。その理由は、日本があまりにも「自立」からかけ離れてしまったからである。江戸時代の武士たちは、刀を抜いたら切腹であった。抜けば切腹のもの持たせる。それが武士道なのである。だが、今の国民性では、核や軍隊を使ってしまいかねない。また、今の行き過ぎた「いじめ根絶」「パワハラ根絶」「働き方改革」などは「インパール作戦」と同じでもある。これでは危うくて仕方がない。(全10話中第9話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
読書と人生(10)思想とは破壊である
「怖さ」「恐ろしさ」がないものはダメである。成長のもとは「恐怖」なのだ。そもそも、すべての思想は破壊である。破壊されなければ建設はない。プラトンやアリストテレスから、ニーチェまで、みんなそうである。文学も、たとえばドストエフスキーなどは、読んで自殺を選んでしまう人まで出てくる。破壊されて挫けてしまうのなら、それはそれで諦めるしかない。それを恐れたら、何もできない。破壊され、落ちたところから、血のにじむような努力で這い上がっていく。それが思想であり読書なのである。(全10話中第10話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
魂の芸術(1)戸嶋靖昌との運命的出会い
執行草舟は、画家・戸嶋靖昌の「街・三つの塔-グラナダ遠望-」という絵を見て、この画家にぞっこん惚れ込み、肖像画の制作を依頼した。なぜ惹かれたか。それはその一枚の絵に、800年間の悲しみが沈み込んでいると感じ、空気中や地中にある人類の涙を絵に描ける人間であることがわかったからであった。本当に人間の魂を「賦活」できるものは、いまや芸術だけである。真の芸術だけが、哲学者・ハイデッガーの語る「時間化」作用のようなものを具現化できるのである。(全10話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(2)命を燃やした芸術
人間は「命懸け」のものに感動する。銀行強盗を描いた映画でも、その命懸けの姿を見せてくれるものは、感動するのだ。古来、大宗教家たちは、「俺のために、お前が死ね」と言えるような人だった。明治国家も、全盛期のアメリカも、「国のために死ね」「民主主義のために死ね」と言える国だった。だがいまや、命を吸い上げるほどの力を持っているのは、芸術だけである。だからこそ、今、芸術が重要なのである。(全10話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(3)芸術だけが魂を賦活する
芸術だけに、魂を揺さぶる力がある。だからこそ、そのような芸術を集め、後世に残していかなくてはならない。感性は「頭」ではよみがえらない。「心」からよみがえるのである。200年後、もし日本人の魂がもう潰れていたとしても、残された芸術を好きになってくれる人がいれば、「燃えるような魂」がその人の魂の中で、必ずや生き返ってくる。(全10話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(1)グローバル化が遅れる日本の医療
最先端手術支援ロボット「ダヴィンチ」の価格は、世界の中で日本だけが圧倒的に高いといわれている。なぜそのようなことが起きるのか。また、グローバル化を推し進める上で、日本の医療のどこが問題点なのか。堀江重郎氏に解説いただく。(全6話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識
現在の世界において、世界の全体像を把握するのは非常に困難である。知識の爆発が起き、専門家でさえ、状況を網羅的に理解するのが不可能になっている。その際に有効な方法は、各分野において信頼できる専門家を複数見つけ、そうした人たちの知見を吸収することである。テンミニッツTVは、こうした問題意識から作られた。
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(4)オリジナルとは「間違い」である
松下幸之助は、サミュエル・ウルマンの「青春」という詩を好んだが、自分で好きなところだけを、自己流にピックアップして飾っていた。「自分はこれが好きだ」ということが大切なのであって、それが正しいとか正しくないということは関係ないのである。「間違い」を信じるのは力が要る。だが、そのような「間違い」こそ、役に立つ。自分なりに解釈したオリジナルでないと、オリジナルな生き方はできない。そして世界に1つしかないオリジナルは、ほかの人たちからは「間違い」に見えるに決まっているのである。(全10話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(2)日米の医療制度の違い
日本の医療制度は非効率な部分が多いのに対して、アメリカの医療制度は効率的で、学ぶことが多い。堀江重郎氏の解説のもと、日本とアメリカの制度を比較して、日本の医療制度の問題点を改めて考えてみる。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
知識の構造化のために(2)専門分野の「前提」を疑え
フェイクニュースが世界を席巻しているが、こうした状況に対峙するには、信頼できる専門家からの「知的耳学問」の積み重ねが不可欠である。その意味で、テンミニッツTVは知的耳学問をデジタル化するイノベーションである。こうした試みにより、専門分野が疑わない、時に大災害を招いてしまう分野ごとの前提を疑うこともできる。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(5)「宇宙の呼吸」―求心と遠心
戸嶋靖昌は、がんを宣告され、自らの余命を2カ月~3カ月と聞いてから、最後に作品を完成させたいと、治療も受けずに絵を描くことに打ち込み、それが絶筆となった。戸嶋の絵の凄い点は放散していく力。いわば遠心力である。一方、もう1人、執行草舟が惚れ込んだ画家・平野遼の絵は「求心力」の絵である。遠心力と求心力、両者の組み合わせは、まるで宇宙の呼吸である。芸術家が全身全霊を傾けた作品は、自らの魂を賦活してくれる。(全10話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(3)日本の医療の生産性を上げるために
日本の医療費は国際的に比較してそこまで高くはないが、その背景として医師あるいは医療従事者が低収入で働いていることが大きいという。ただ、彼らの収入を上げるということに賛同する者は少ないだろうと堀江重郎氏は話す。そこで必要となるのは、医療現場で生産性を上げることだが、そのための新たな仕組み作りについて、他国の医療モデルなどを参考にしつつ、模索してみる。(全6話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
知識の構造化のために(3)教育と研究の新しい理念
知識の爆発という現在の状況下では、教育の位置付けや専門分野間の関係も変わるべきである。教育はもはや、一緒に成長し合う相互成長しかありえない。また、研究機関についても、専門分野間の連携によって、これまでなされてこなかった幅広い観点から研究成果を生み出すことができる。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(6)「自分が愛する芸術」を持つ大切さ
芸術作品について、誰かの解釈を信じたら、その芸術は自らの魂には響いてこない。どの芸術に、どのようなつながりがあるのか。精神的な連関性はどこにあるのか。それらはすべて自分自身で感じ取るべきものなのである。自らの魂に感応した芸術作品を愛し抜き、自分自身の魂に押し込んでいく。そうすることによって、自己の魂は成長していくのである。(全10話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(4)アンチエイジングと健康リテラシー
アンチエイジングについては情報が氾濫しているため、求められるのは健康に対する個々人のリテラシーだという。そこで、堀江重郎氏は専門分野である男性ホルモンについて、また最近耳にすることが多くなった「マインドフルネス」について、医学的見地から解説する。(全6話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
知識の構造化のために(4)学生の重要な役割
専門横断的な研究機構を作る上で重要なのは、社会的な視点と学術的な視点を生かすことである。そこで明らかなのは、日本では議論文化が足りないため、分野間連携が少ないということである。状況を改善するためには、学生の力を有効活用し、分野間の触媒としての役割や地域での活躍を支援することである。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(7)肖像画に見る「根源的共同化」とは
戸嶋靖昌の肖像画は、描く対象の顔と、戸嶋自身の顔が融合している。これこそ、まさにハイデッガーがいう「存在の根源的共同化」なのである。だから、その肖像画は、描く対象には似ていない。だから、戸嶋の肖像画はお金にはならなかった。お金になるのは、精密に、忠実に「写生」をした絵である。まさにそれが、多くの発注主が求める絵だからである。だが、真の芸術は、「存在の根源的共同化」を成し遂げるような「魂の共有」ともいうべき力から生み出されるのである。(全10話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(5)求められる医師の姿
医療の大原則は、「手当て」という言葉で表現されるように、患者さんと同じ場にいて、その場を共有することだと堀江重郎氏は話すが、現在の医療はそれを難しくしているという。いったいどういうことなのか。また、求められる医師の姿や医師に向いている人はどのような人なのか。(全6話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
知識の構造化のために(5)テンミニッツTVが担う今後の役割
テンミニッツTVは、日本に議論文化を根付かせるための有効なツールである。今後さらにシステムを進化させていくだろう。その取り組みの延長線上で、学術専門家と実務家が積極的に議論を展開させることが重要である。これはさらに、日本の官僚を再び活性化させるための、重要な契機になるだろう。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
日本のイノベーションのために(1)両利きの経営
イノベーションを生み出すには、確実性は低いけれども新しい変化を生み出すようなアイデアが必要である。しかし、大企業はそれが本流のビジネスを脅かすと考え、簡単に実行することができない。日本の多くの企業が抱えている、こうした「イノベーションのジレンマ」を打開するために注目すべきは、「両利きの経営」という考え方である。(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
日本のイノベーションのために(2)チャンスは地方にある
イノベーションに成功しているところはどこか。GAFAに代表されるようにそのほとんどがアメリカで、日本はかなり遅れを取っている。しかし、そうしたイノベーションは格差の問題を置き去りにしている。日本のチャンスは地方にある。地方にイノベーションの活路を見いだし、この問題を打開していくべきである。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
日本のイノベーションのために(3)鎖国状態を解決する
日本経済停滞の一因は、国際感覚の欠如にある。これによって成長が止まってしまった。それゆえ、海外の情報を積極的に入手することで、鎖国状態から脱することができるだろう。しかし海外のやり方を真似するだけでなく、世界中で進行している格差に抗うために、日本は人々が幸福になれる社会を作っていく必要がある。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
日本のイノベーションのために(4)多様性の重要度
新しい日本社会を構想していく上で重要なのは多様性である。特に女性や若者、外国人の視点を多く取り入れることで、さまざまな改革を行っていかなければならない。こうした構想は、地方で少しずつ実践されていっている。このように成功体験を積み上げていく試みは、ベンチャー企業に通ずるものがある。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
日本のイノベーションのために(5)人材育成とリーダー
イノベーションを考える上で、政府の補助金がどのような形式であるべきかを考えることも重要である。現在の仕組みではうまく機能していないため、見込みある事業に効率良く出資していく判断力が求められている。しかし問題は、こうした日本の状況を正確に理解できる人をいかに育成するかだ。ある意味、鎖国状態ともいえる現在の日本に必要なのは、力のあるリーダーである。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
魂の芸術(8)民主主義は再考せられねばならない
大衆民主主義が絶対に滅びることは、すでにキルケゴールや、オルテガが喝破していることである。しかも、日本や独仏など多くの国が、「間違いを排除する」社会になってしまっている。だから、子どもがケンカすらできないような状況が生まれている。そもそも、政治で言えば、議会が生まれたのは、絶対君主制に対抗するためだった。その絶対君主がいなくなったら、議会はファシズムにならざるをえない。今の時代のように「正しいことしかできない」のであれば、「死んだこと」しかできないのだ。政治は日々生きているのに、「正しいこと」しかできないのであれば、何も言えない、できない。つまり国家の滅亡にまで至る危機的時代に我々は生きている。(全10話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
世界と日本の医療~課題と未来(6)終末医療と在宅医療
終末期の死生観について、日本ではあまり議論されていないが、「人生の中で何をしたいのか」ということを考えることが、個人にとっても医療全体にとっても大切である。そこでシリーズ最終話では、終末医療について在宅医療などいろいろな実例を紹介しながらお話いただく。(全6話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(9)本当に社会を動かす「悪」の力とは
「家族を捨てた人間は冷たい悪人だ」というなら、仏陀は、まちがいなく「冷たい悪人」の代表例になってしまうだろう。逆にいえば、それが真実なのだ。女房子どもも捨てるような非情な男でなければ、社会を指導するなどということは無理な場合がある。極端に言えば。それがわかる社会に、もう一回戻らないとダメなのだ。そういう意味で、「悪人じゃないとダメ」であり、「悪いことをするのが正しい」と考えるべきだ。(全10話中第9話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
魂の芸術(10)人間が「自分のオリジナル」で生きる社会
IT産業の社長などが言うような、人間が遊んで暮らせる社会、社会保障が行き届いて、AIロボットが嫌な仕事は全部やってくれて、人間は嫌な労働もしないような社会は、きっと実現するだろうが、そう考えることによって実は人類が滅びるのである。そうではなくて、人間が「自分のオリジナル」で生きる社会にしなければならない。そのためには、不良を許し、間違いを許さなければならない。なぜなら、「正しいものを描こう」としたら、いい絵は描けないのというのと同じだからだ。(全10話中第10話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
経済学的発想とは何か(1)エンジニアリング的との違い
経済学は幅広く、奥も深い。それは、社会のありようを見つめ、人と人の相互作用を考える学問であるからだ。エンジニアリング的に明快にINとOUTを切り分けることもするが、その間のブラックボックスは人間任せの複雑さが影響している。(全3話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
経済学的発想とは何か(2)マルクス経済学の運命
50年ほど前には、日本の大学で主流にあったマルクス経済学が、近代経済学にその座を譲って久しい。なぜ、そうなったのだろうか。経済学の進歩と人類の発展は、果たして同期しているといえるのだろうか。(全3話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
経済学的発想とは何か(3)普遍的な社会科学として
科学的方法では、測定可能性と再現性が問われる。対象が社会や人間であり、測定や再現の難しい経済学が社会科学として普遍的な学問になり得た理由は、どこにあるのだろうか。また、コンピュータが可能にした経済学の「実験」とは。(全3話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
いま求められる「教養」とは(1)武器としての教養
ネット検索であらゆる情報がすぐ手に入る今ほど「教養」が必要な時代はない、と識者は口をそろえる。ただし、教養の在り方や中身は従来と様変わりしている。第1話では、そもそも教養とは何か、また、何を目指すことだったのかを明らかにしていく。(全4話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
いま求められる「教養」とは(2)教養と好奇心
教養を身に付けるには、「正解のない問いを考えて答えを見つけていく」こととともに、「相手の立場になってものを考える」ことが重要だと第1話で話された柳川範之氏。そこで大事なのは好奇心だが、「みんな、好奇心の芽を摘まれていっているんじゃないか」という。ではどうすればいいのか。(全4話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
いま求められる「教養」とは(3)教育と人材登用
教養のためには、専門性という「土台」をつくり、他分野の人とコミュニケーションをとり「土台を耕す」ことが肝心である。そのためには、好奇心と「聞く力」が必要になる。では、そのような人材に育てる教育はどうあるべきなのだろうか。(全4話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
いま求められる「教養」とは(4)建設的な議論のために
対談の最終回では、教養を磨くために必須となる「議論」のあり方を考えていく。建設的に議論を進めるには、「事実認識」と「価値判断」を分けて考えることが大事である。また、より良い議論をもたらす「経験」と「モデル共有」とは何だろう。(全4話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
これからのベンチャー論~スモールサイズと失敗に学ぶ~
「働き方改革」への是非はともかく、実際に若者たちの間では「就職」に対する意識が変化している。小さな会社を自ら興し、将来への布石にする潮流が目立っているのだ。それはイノべーションを生み出すエンジンへの目利きということかもしれない。
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
人生に活かす東洋思想(1)人生の成功とは何か
古文や漢文が高校の必修科目でなくなり、漢文の素養を持たない世代が増えている。漢文を読めなければ、日本文化の源泉であるさまざまな思想にふれる機会は激減する。儒教・仏教・道教・禅・神道が目指すものやその意義に迫っていく。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(2)絶対的存在と絶対的孤独
田口佳史氏は、大学卒業後、映画会社に入社し、ドキュメンタリー映画の映画監督を務めるが、25歳の折、タイで撮影中に二頭の水牛に襲われ、角で刺されて内臓が飛び出すほどの大けがを負ってしまう。その治療でタイの病院に入院していた折、絶対的な孤独を体験することになった。その結果、見えてきたものとは?(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(3)「儒・仏・道・禅・神道」
日本では、「儒教・仏教・道教・禅・仏教、神道」という思想が育まれ、現在でも根強く息づいている。田口佳史氏は日本にはこれらの教えがあるがゆえに、何か困ったことが起きてもなんらかの教えが導いてくれるのだと言う。それぞれの教えの基本とは、はたしてどのようなものなのか。各々の思想の根本的な原理と発想について、分かりやすく説いていく。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(4)感動、尚友、孤高
日本人の土台である「儒・仏・道・禅・神道」が示すことは一つであるという。それは、天(=道=神)のような絶対的存在と同行できる人になることだ。そのために、「感動人間になること」「尚友を求めること」「孤高の覚悟を持つこと」が奨励される。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
幕末の人材論~逸材の素顔(1)佐藤一斎、松浦静山、吉田松陰のすごみ
田口佳史氏が、佐藤一斎、松浦静山の辻斬りにまつわる逸話を紹介。また、田口氏は平戸の松浦文庫を通じて、吉田松陰との不思議な縁でつながったと言う。これらの話からうかがえるのは、一斎、静山、松陰という幕末期の賢人のとてつもない「すごみ」である。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(5)自覚が「運の強い人」をつくる
「覚悟」ということばは「悟りを覚える」と書く。では、悟りを覚えるにはどうすればいいか。なぜ悟りが必要なのだろうか。四書五経の隅々から「天」の願いを察した話者が、いざという時に「天佑」を得る人になるためのコツを説く。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
幕末の人材論~逸材の素顔(2)日本をつくった「玄人」たち
田口佳史氏が、人材育成の重要性に触れ、今こそ日本は原点に戻って儒・仏・道・禅・神を活かした国家づくりをすべきだと提言する。また、明治期の大久保利通、伊藤博文の実行力と気力について、また、日本初の自動車をつくった男のエピソードを紹介しつつ、日本の能力を育んできた数々の「玄人」の意義を説く。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(6)道元の思想
禅は難しいと感じている人が多い。まして曹洞宗開祖道元の『正法眼蔵』などは、名著と言われても歯が立たない人がほとんどだろう。しかし、禅の目指している境地、そこに道元が何を持ち込んだかを知れば、禅も道元も身近になるはずだ。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
人生に活かす東洋思想(7)太宗と『貞観政要』
『貞観政要』は古典活用のバイブルと呼ばれる。唐の太宗が武断政治から文治政治を行い、周囲の諫言(かんげん)を取り入れた様子が詳しく書かれているからだ。なぜ太宗は文治政治ができたのか。そして、殺されない諫言の方法とは。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
佐久間象山に学ぶ(1)第4次産業革命と危機感
『佐久間象山に学ぶ大転換期の生き方』を著した田口佳史氏が今、抱いているのは「日本はこのままで大丈夫だろうか」という危機感で、内憂外患のなか近代国家の建設を迫られた明治維新の頃と同じような状況に日本は直面しているという。当時、佐久間象山は、明治維新の直前まで理想の国家を構想した。根本が揺らいでいる現代日本の新たな道を考える上で、佐久間象山から学べるものは多いはずだ。(全5話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
人生に活かす東洋思想(8)東洋古典と石門心学
8回の連続講義を経て、東洋古典は難解で遠い存在から、現実に使えて役立ちそうなものに変わってきただろうか。そのような先達に石田梅岩の「石門心学」がある。哲学・思想を使い切って、「生きているだけで100点」の人生を送りたい。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
佐久間象山に学ぶ(2)道徳と科学技術の相互補完関係
佐久間象山が指摘した重要な点は、科学技術は常に道徳と相互補完的な関係になっていなければならないということだ。3.11の原発問題は、科学技術が先行してしまい、それを支える哲学がなかった。明治維新と同様の転換期を迎えている現代においては、新しい技術の基礎となる哲学が求められている。(全5話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
渋沢栄一の凄さ(1)渋沢栄一と秀吉・家康
令和の顔として注目される渋沢栄一には『論語と算盤』の著書がある。そのなかで彼は秀吉の長所と短所にふれ、そのがむしゃらな勉強ぶりをたたえつつ、古典の欠如を指摘している。一方、古典を幕府経営に取り入れたのが、徳川家康であった。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
佐久間象山に学ぶ(3)日本の近代国家を構想する
30歳ですでに一流の朱子学者になっていた佐久間象山は、その立場をあっさり捨て、外国語を学び、西洋近代技術を習得し、日本有数の蘭学者になった。ただ佐久間のすごさはその理論だけではない。今回は、日本の近代国家建設を構想した佐久間のすごさ、その秘密に迫る。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
渋沢栄一の凄さ(2)渋沢栄一と尾高藍香
日本資本主義の黎明を支えた渋沢栄一だが、なぜ、渋沢にはその力があったのか。そのことを考えるときに忘れてはいけないのが、渋沢の生家が藍に携わる農家だったことである。藍づくりは極めて複雑・専門的なビジネスで、かつ投機的な側面も備えている。また、渋沢に古典を教えた大人物もいた。渋沢はなぜ日本資本主義の父になれたのか、その謎に迫る。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
佐久間象山に学ぶ(4)「先憂後楽」と人材育成
吉田松陰をはじめ多くの人材を育てた佐久間象山。彼から学ばなければいけない一番のキーワードは「先憂後楽」で、政治に携わる者や国家を運営する者にとって大切な資質はそこにあると、田口佳史氏は言う。なぜ「先憂後楽」が重要なのか。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
佐久間象山に学ぶ(5)国家の構想係の重要性
佐久間象山はその後の日本を背負った多くの人物を育てたが、国家の構想係としてみると、彼が暗殺されなければ日本はどうなっていたのだろうか。その意味でも、根源的かつ長期的にものを考えることはとても大事である。(全5話中第5話)。
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
民主主義と政治(1)民主主義の危機
「民主主義は今、非常に危機に瀕している」と、曽根泰教氏は言う。そもそも現代の民主主義体制は、その始まりである古代ギリシャの体制とは大きく異なり、選挙を通じた間接的な民主政である。その中で問題となるのは、党派性の強さゆえに相手と議論し理解することを目的とせず、相手を否定するという慣行である。こうした性質は政治を尖鋭化させ、さまざまなポピュリストの台頭を招いている。曽根氏は、世界各国の例を引きながら、現代の民主主義体制の在り方に警鐘を鳴らす。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(2)民主政のモデルと多数派形成の失敗
かつて民主主義の2つのモデルとして議論された、イギリス型の民主政とヨーロッパ型(コンセンサス型)の民主政。現代では、どちらの制度の下でも多数派形成に苦しんでいる。よって、模範とすべき民主政の形は不明瞭になってきている。ヨーロッパのどこにも民主政のモデルがないとすると、日本はどこに何を求めたら良いのか。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(3)平成の二大改革とその評価
平成時代には、選挙制度改革と省庁再編という、2つの大きな改革が行われた。曽根泰教氏が、独自の視点からこれらの改革に評価を下す。まず省庁再編に関して、ただ組織を合併したのみで、機能の見直しと再編が不十分である点を指摘し、その実際上の目的が果たされていないと断じる。他方で、選挙制度改革に関しては、旧制度の中選挙区制が抱えるさまざまな民主主義の実現に関わる問題点を指摘し、その改革の必然性を説く。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(4)選挙制度と代表性の関係
選挙制度は、われわれ市民の声がどのように政治に反映されるのか、その方向性を決める、非常に重要な制度である。しかし、この選挙制度をどのように設計するのがベストなのか、政治学者の間にコンセンサスはまだない。曽根泰教氏は、選挙が誰の声をどのように届けるのかという代表性の視点から、現代の日本政治を読み解く。また、日本の国政では政治家の仕事を役人が肩代わりしてきた側面があることを鋭く指摘する。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(5)与党と役人の関係と日本の特殊性
曽根泰教氏が、さまざまな日本固有の制度を挙げて、日本の政策議論が非公開の場において与党と役人の間で行われてきたことを詳しく説明する。こうした制度が、いわゆる族議員などの日本特有の政治文化を育んできた。そのため、アメリカやヨーロッパとの比較政治分析を行う際には、そうした日本の特殊性を念頭に置かなければならない。例えば議員評価も、国会での活動だけではなく、与党内での活動も考慮に入れる必要があるだろう。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(6)役人と政治家の人材育成
役人への要求があまりにも多い現状では、官僚を志望する有能な学生は減少しつつあるのは必然である。曽根泰教氏は、昨今求められているエビデンスベースの政策議論から、政治家と役人がより建設的な関係を結ぶことができるのではないかと展望を述べる。そのためには政治家をどう育てるか、その仕組みをどう作っていくか、重要な問題である。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(7)政党マネジメントの難しさ
政党という組織は、各人が当選したという自負を持つ同列の人間たちをまとめなければならないために、企業よりもはるかにマネジメントが難しい。シニョリティールールは1つの方策ともいえるが、有能な政治家を選抜する仕組みも考えていく必要がある、と曽根泰教氏は指摘する。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
民主主義と政治(8)官僚の育成システムを改革するために
日本では、政党政治が機能しなくなっても霞が関文化があれば大丈夫だという認識があった。しかし、今はそれも崩れてきた。天下りの禁止や政権交代によって、官僚を取り巻く環境が大きく変化する中で、官僚の採用や育成のシステムも改革の必要性が高まっている。世界的にも公務員数が少ない日本で、さらに公務員数を減らすのは大きな問題である。現状を見極めて、優秀な官僚を採用・育成する仕組みを再設計していくことが喫緊の課題なのだ。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)