佐藤康宏

東京大学名誉教授

プロフィール

1.略歴と専門分野
東京大学文学部美術史学専修課程卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程(美術史学専攻)修了。
東京国立博物館学芸部資料課、文化庁文化財保護部美術工芸課を経て東京大学大学院人文社会系研究科教授。
日本美術史を専攻する。主たる分野は室町時代末から江戸時代の絵画史。
2020年東京大学名誉教授。

2.主要な著書
『若冲・蕭白』、小学館、1991年
『歌麿と写楽』、至文堂、1996年
『浦上玉堂』、新潮社、1997年
『講座日本美術史』(共編著、全6巻)、東京大学出版会、2005年
『祭礼図』、至文堂、2006年
『伊藤若冲(改訂版)』、東京美術、2011年
『日本美術史(改訂版)』、放送大学教育振興会、2014年
『湯女図 視線のドラマ』、筑摩書房、2016年
『絵は語り始めるだろうか』、羽鳥書店、2018年刊行予定

3. その他
雑誌『UP』439号(2009年5月)から「日本美術史不案内」を連載中。文化審議会専門委員(文化財分科会)、美術史学会常任委員、『國華』編輯委員などを務める。

講義一覧


日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?

日本美術論~境界の不在、枠の存在(1)具象と抽象の共存

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、日本美術の特質について、美術史の知識を補足しながら解説する。ヨーロッパや中国では、具象的なものと抽象的なものが区別される傾向にあるが、日本美術にはそうした区別は存在しない。むしろ両者が一つの空間に共存するところに、日本美術の魅力は宿る。(全6話中第1話)


仏像における「具象」と「抽象」の共存

日本美術論~境界の不在、枠の存在(2)仏像彫刻

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、仏像に見られる、具象と抽象の共存について解説する。神護寺薬師如来立像には、現実らしい造形と抽象的な表現が混在している。特に、薬師如来立像は唐の表現様式の影響圏内にありながら、自然らしさや合理性を払拭した、抽象的な衣紋が際立っている。(全6話中第2話)


尾形光琳「紅白梅図屏風」…具象と抽象の共存と官能的な美

日本美術論~境界の不在、枠の存在(3)光琳「紅白梅図」

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、日本の絵画に見られる具象と抽象の共存について解説する。「日月山水図」や尾形光琳の「紅白梅図」は、具象的な自然描写と同時に、抽象的な文様や金銀箔による装飾技法を用いることで、複雑な人間的感情を表し、官能に訴える怪しい魅力を放っている。(全6話中第3話)


日本美術を特徴づける「枠」の存在とは?

日本美術論~境界の不在、枠の存在(4)枠の存在への意識

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、日本美術を特徴づける枠の存在について解説する。伝統的なヨーロッパや中国の絵画では、画面の枠の中に描くべき対象の全体が収められてきたのに対し、日本の絵画では、絵の中の空間が枠を超えて広がり、鑑賞者に枠の存在を意識させる技法が用いられてきた。(全6話中第4話)


俵屋宗達「風神雷神図」に見る枠を超えた表現

日本美術論~境界の不在、枠の存在(5)宗達と歌麿の枠

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、俵屋宗達「風神雷神図」と喜多川歌麿「北国五色墨 てっぽう」を例として、日本美術を特徴付ける枠への意識を解説する。宗達が南宋絵画の対角線構図を発展させるだけでなく、枠を超える表現にまで達したとすれば、歌麿は枠による切り取りを効果的に用いて、遊女の姿を描き出した。(全6話中第5話)


日本美術の魅力は矛盾が共存する柔軟性と構成意識の高さ

日本美術論~境界の不在、枠の存在(6)矛盾の共存

東京大学大学院人文社会系研究科教授の佐藤康宏氏が、現代の漫画にまで通じる、画面の枠への意識を解説し、境界の不在と枠の存在という2つの日本美術の特徴について総括するシリーズ最終回。西欧と中国という偉大な教師の生徒であり続けた、日本美術の独自性に迫る。(全6話中第6話)