坂村健

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長/東京大学名誉教授

プロフィール

<略歴>
1951年東京生まれ。
1984年からオープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。TRONは携帯電話の電波制御をはじめとして家電製品、オーディオ機器、デジタルカメラ、FAX、車のエンジン制御、ロケット、宇宙機の制御など世界中で多く使われている。現在、IoT社会実現のための研究を推進している。2002年1月よりYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長を兼任。
2015年ITU(国際電気通信連合)創設150周年を記念して、情報通信のイノベーション、促進、発展を通じて、世界中の人々の生活向上に多大な功績のあった世界の6人の中の一人として選ばれる。(ITU150Award)
2017年東洋大学情報連携学部 学部長に就任。
IEEEライフ・フェロー、ゴールデンコアメンバー。
2002年総務大臣賞受賞、2003年紫綬褒章、2006年日本学士院賞受賞。
著書に『ユビキタスとは何か』(岩波書店)、『変われる国、日本へ』(アスキー)、『不完全な時代』、『毛沢東の赤ワイン』、『コンピューターがネットと出会ったら』、『IoTとは何か』(角川書店)、『オープンIoT考え方と実践』(パーソナルメディア)など多数。
東洋大学教授 情報連携学部学部長、工学博士。

講義一覧


坂村教授が開発したTRON―知られざる世界標準

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(1)TRONは究極の「縁の下の力持ち」

国産組込みOS「TRON」開発の第一人者であるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が、IoT(モノのインターネット)時代のあるべき、組込みコンピューターの姿を展望する。坂村氏はTRON開発の功績により、ビル・ゲイツと並んで国連から表彰された。実はTRONは、世界中の機械制御に用いられる、知られざる「縁の下の力持ち」なのだ。(全9話中第1話)


IoT(モノのインターネット)の本質とは何か?

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(2)IoTの本質はオープン性にある

今でこそ人口に膾炙したIoTだが、かつてはさまざまな名前で呼ばれていた。しかし目指すところは同じで、「インターネットのようにモノをつなぐ」ことだ。ではその本質は何か。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏は、誰でも参加可能なオープンこそが、インターネット、そしてIoTの本質であることを強調する。(全9話中第2話)


IoT時代に必要なのはAPIのオープン化

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(3)家電をネットにつなぐために必要なこと

かつて日本では、家庭用の電化製品をネットにつなげる試みが流行した。しかしその時に生じた大きな問題は、それをクローズなシステムにしてしまったことであると、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏は述べる。IoT時代に必要なのは、自社の製品をネットで囲い込むのではなく、誰もが制御可能になるよう、APIを公開することだ。(全9話中第3話)


IoTで重要なのは「制御を制御する」ガバナンス

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(4)IoT時代のセキュリティーとガバナンス

IoT時代に適合したコンピューターモデルとして、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が進めているのが、TRON IoT‐Aggregatorだ。このモデルが目指すのは、IoT機器のガバナンスだ。APIの公開によって誰もが機器を自由に制御できるとなれば、どこまで制御してよいかを決める必要がある。それがIoT機器のガバナンスだ。(全9話中第4話)


IoT時代のビジネスモデルはモノでなくサービスを売るべき

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(5)端末よりクラウドサービスを売る時代

IoT時代に即した企業戦略は、端末の開発ではなくクラウドサービスの提供にある。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏はこう喝破する。端末は常に低廉化が求められ、模倣もされやすいため、その開発だけでは世界と競争できない。IoT機器から集まった情報をサービスに変えるクラウドこそが、事業の柱になる時代が来る。(全9話中第5話)


TRONプロジェクトが目指すのは少ない電力で長時間動くOS

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(6)最先端TRONが目指す、OSの在り方

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が進めるTRONプロジェクトでは、最先端のスマートフォンに載せるような高機能を目指さない。その代わり、少ない電力で高速に処理できることを目指す。こうした「必要最小限」のOSであることが、モノをネットにつなぐIoT時代には合っており、TRONは再び世界中から注目を集めている。(全9話中第6話)


IoTを進化させる「オープンデータ」とは?

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(7)オープンデータからイノベーションを

本格的なIoT時代が到来すれば、あらゆる情報がインターネットに集まるようになる。そのデータが公開されれば、いくつものイノベーションを起こすと、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏は強調する。その際に重要なのは、公開されたデータをコンピューターが読み込み、そのまま処理可能かどうかだ。(全9話中第7話)


ロンドン五輪の遺産となったオープンデータ

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(8)データ公開に乗り出した日本企業の試み

2012年のロンドン五輪では、さまざまなデータが公開され、それを活用したソフトウエア開発が進んだ。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏によれば、日本でも、自社のデータをオープン化してイノベーションを模索する民間企業が現れている。この回では、交通や物流の企業と連携した取り組みを紹介する。(全9話中第8話)


Xプライズ方式こそがIoT時代にイノベーションを起こす

IoTとは何か~モノのインターネットの本質(9)Xプライズと社会制度が開くIoTの未来

IoT時代に即したTRON開発を進めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が強調するのは、イノベーションに必要なインセンティブを高めること、そして技術の進展に合わせた社会制度を設計することの二つだ。イノベーションも安全性も、絶対ではなく確率の問題だという。だからこそ今後は、それを促す仕組みが求められる。(全9話中第9話)