講義一覧
ヒトの性差とジェンダー論(8)変異こそ生物として大変重要な特徴
「子どもがゲイの場合、母親の育て方が間違っていたのか」「多様性は生き残りのためということを踏まえて、今を生きる世代が考えなければいけないことは何か」など、本講座終了後、さまざまな質問が会場から寄せられた。長谷川眞理子先生は、「生物学で重要なのは『生きていること』」「『変異』こそ生物として大変重要な特徴」だと喝破するが、その心とは。最終話ではそのような質疑応答を4つ取り上げて紹介する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第8話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(7)「配偶」と「個人化」の問題
結婚・配偶者選択の文化が大きく変わっている部分もあるが、それは生物学的に見ると、どう位置づけられるのだろうか。実は、生物学的に見ただけでも、雄雌がどうやって配偶して、一緒になって、子どもを持つかということには、たくさんの対立と葛藤が潜在的にある。人間の社会生活がかつての共同体中心から個人化へ向かった現在、配偶競争も配偶者選択も全て個人の責任になってしまった。このことをどう考えればいいのだろうか。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第7話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(6)身体と脳の性差と生業変化による影響
女性よりも男性のほうが大きい、毛深い、死にやすい――この3点はヒトだけでなく哺乳類全般にいえる身体的性差である。また、脳の性差として、空間・三次元認知は男性のほうが得意で、発話は女性のほうが優れているともいわれるが、これらも文化などの影響かどうか難しいところもある。狩猟採集から農耕への変化など、生業形態の変化によって男女の格差にも色々な影響が出てきたというが、それはどのようなことなのか。身体と脳の性差、その特徴とともに解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化
第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られる同性愛をどう考えればいいのか。そこで今回は、生物学的性差と文化、社会慣習という視点からジェンダーについて考えてみる。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(4)哺乳類の性決定と脳の性分化
哺乳類は全ての個体がまず雌になることがデフォルトとしてつくられている。そこから雄になる(雄化)ためには、性決定遺伝子XYのうちY染色体さえあればいいというわけではないという。受精卵の初期からさまざまな遺伝子やホルモンが働き、雌になるべき道筋を消して雄になっていく。さらに脳の働きにも同様のプロセスがある。いったいどういうことなのか。LGBTQが生まれるプロセスにも触れながら解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(3)動物たちの性差と配偶行動
雄同士の競争が激しいアシカでは、勝ち残った雄は大勢の雌を取り込んで生殖するが、子が産まれる頃には姿を消す。一方、グッピーや鳥のように、雄が雌に自身の美しさなどをアピールし、選んでもらおうとする例も多い。また、ヒトに近い類人猿の場合、その性行動は逆にヒトとはかけ離れている。つがいを重視するペアボンドを持つのはヒトの特徴といえるが、いったいどのような違いがあるのか。動物たちそれぞれの性差と配偶行動について解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(2)卵子と精子と性決定
多細胞生物の配偶子は卵子と精子の2種類に分かれている。卵子は大きく栄養があるが、動きにくい。精子は小さいが、よく動く。この両者が合体して次世代の多様性が保全されるのだが、卵子と精子の分断によって、その性には雌雄同体、性転換、矮雄、雌雄異体などさまざまな形が存在する。その具体的な違いについて具体例を挙げながら解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
近年、「LGBTQ」ということばが人口に膾炙し、いろいろ性のあり方についての議論が多く行われるようになったが、そもそも生物学的な性、その違いについては周知されていないのではないだろうか。いったい性とは何なのか。性差はどのように生まれるのか。ヒトや哺乳類はもちろん、単細胞生物にまでさかのぼって、進化と生物学に基づく知見をうかがっていく。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
ヒトはなぜ罪を犯すのか(3)変容する文化と罪の本質
ヒトは社会生活を送る上で、文化的規範として規範・慣習・掟などを発展させてきた。しかし、文化は社会状況の変化とともに変容し、過去に容認されていたことが罪となることが多く、またその逆もしかりだ。法律は国民国家を支えるものだが、そのための「善悪」の線引きはけっして簡単ではない。罪にも普遍的罪、社会的罪、そして個人の内面による判断としての罪があり、それぞれどう捉えればいいのか。この大事な問いについて考えていきたい。(全3話中第3話)
ヒトはなぜ罪を犯すのか(2)脳の構造と働き
脳の構造と情動・認知の進化はつながっている。脳内にある進化的に古い「大脳辺縁系」は何をしたらいいかという「動機づけ」に関与しているところで、そことその上にある「新皮質」の中の前頭連合野(前頭前野)が密接に関連し、葛藤として伝えられる情動がメタ認知によって処理される。とはいえ、ヒトの意思決定は必ずしも合理的ではない。報酬系の活性化が最終的な判断に大きな影響を与え、その基準を変動させる。今回は脳の構造とそれぞれの働きについて解説する。(全3話中第2話)
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
“ヒトの罪とは何か”――この問題について、法学や哲学的アプローチでなく、進化生物学・進化心理学的視点から考察するのが今回の講義の趣旨である。ヒトが社会的動物として集団生活を送る中で個人間に利害対立が生じ、これを調整するために文化的・社会的規範が発達してきた。まずは善と悪に関するヒトの脳神経基盤から見ていきたい。(全3話中第1話)
進化生物学から見た「宗教の起源」(3)集団の種類・サイズと宗教の関係
宗教の起源をめぐる研究の中に、「高みから道徳を説く神」など6つの要素について分析したものがある。人間の営みが狩猟採集中心の社会から「農耕・牧畜・定住・階層」社会へ変化すると、宗教にも大きな変化が訪れる。集団のサイズがダンバーの考えたヒトの脳の限界“150人”を超え、お互いの声が届かなくなったことで「高みから道徳を説く神」が必要になったというのだ。そこで最終話の今回は、宗教集団と世俗的集団それぞれのサイズの限界とあり方、宗教による内集団の結束などの解説を進めながら、進化から見た宗教の心的基盤に迫る。(全3話中第3話)
進化生物学から見た「宗教の起源」(2)宗教の機能とメンタライジングの次元
宗教には主に5つの機能がある。世界の説明、道徳的価値体系提示、死と死後の世界への言及、世の悲惨に対する救済、内集団の結束を固め、外の集団と闘うといった機能だが、集団生活する霊長類にとって、内集団の結束は不可欠である。そのための仕組みとして、霊長類には毛繕い(グルーミング)があるが、進化した脳を持つヒトの場合、毛繕いに代わる方法として宗教や言語が生まれたのではないだろうか。そこで今回は、その可能性に迫る一つとして「メンタライジング」に着目し、宗教の機能とともに解説する。(全3話中第2話)
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
宗教の起源について、進化生物学はどう考えるか。イギリスの自然人類学者ロビン・ダンバーの著書『宗教の起源』によると、宗教はヒトにとって普遍的な現象であり、そこには脳が大きな役割を果たしているが、文化の影響も否めない。特にダンバーは新皮質の容量に注目し、「ダンバー数」と呼ばれる、集団としてヒトが気持ちよく維持できる人数を発見した。そこで今回はダンバーの著書を手がかりにしつつ、脳の役割と文化への影響を踏まえ、神秘思考、宗教的回心、古い宗教の一つであるシャーマニズムなどの解説を進めながら、「宗教とは何か」という難しい問題に迫っていく。(全3話中第1話)
もっと知りたいイヌのこと(3)社会的動物としてのイヌ
サルの社会性については研究が多いが、イヌの社会性に関する研究は最近始まったばかりである。人間はサルの仲間であり、イヌとは違った系統なので、行動にも違う部分が多い。たとえばサルは「個食」だが、イヌは同じものを分け合って食べる。そのことは社会性にどんな影響を及ぼしているのだろうか。(全3話中第3話)
もっと知りたいイヌのこと(2)イヌの知性に迫る
人間のパートナーとして進化してきたイヌの知性について、われわれはどこまで知っているだろうか。まず、その世界認識は嗅覚に始まるが、身体や顔の構造上、制限される能力も多い。「しつけ」の途中で感じる「イヌは人間の言葉がわかっているの?」という疑問は、どこまで解明されているのだろうか。(全3話中第2話)
もっと知りたいイヌのこと(1)イヌの歴史を振り返る
イヌは「人類の最古の友」とも呼ばれる存在だ。オオカミがイヌになり、われわれの家庭のペットとして「うちの子」と呼ばれるようになるまでには、どのような経緯があったのか。まだまだ分かっていないことは多いが、最新の研究や知見と照らし合わせながら、イヌの歴史をひもといていく。(全3話中第1話)
現代人に必要な「教養」とは?(8)本質を捉えるための「知識の構造化」
「知識の構造化」のためにどんな方法があるのだろうか。検索社会といわれる現在、断片的知識はあふれるほどインプットされるが、いくつかの軸を立てて全体の構造を立体的に捉えることで、それらが生きた知識として役立つものに変わる。そうすれば、学ぶスピードも大きく変わっていくのだ。質疑応答編第3弾。(全8話中第8話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(7)日本型タテ社会と語学教育の問題
日本型タテ社会で多様性が叫ばれインターネットが進展するに伴って、社会的なつながりが希薄になっているといわれる昨今。ではそうした状況の中、どう社会性を育めばいいのか。母国語と英語教育についてと合わせて、両先生が非常に興味深い回答を展開していく。質疑応答編第2弾。(全8話中第7話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(6)議論と雑談、人間の本質について問う
「本質を捉える知」は教養にとって大事だが、では「人間の本質」とは何か。また、多様性の時代、「議論」とともにビジネス世界で見直されている「雑談」についてなど、ウェビナー参加者からの質疑応答編第1弾。(全8話中第6話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(5)生涯をかけて学ぶことの意味
世界に比べても変化のスピードが圧倒的に遅いと言われて久しい日本。スタートはアメリカだとしても、そこから出た新しい技術やモノを導入するスピードが遅すぎるのだ。ではどうすればいいか。それは、われわれが「生涯をかけて学ぶことの意味」ともつながる話である。(全8話中第5話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(4)社会を変えるためには
社会を本気で変えるためにはどうすればいいか。江戸時代は停滞した発展性のない社会だったと思われがちだが、鎖国の中でモノを考える素地が育まれた。そのため幕末に危機感を持ち、西洋の科学技術を取り入れる藩が相次いだ。物事を変革し、前進させるためにはパッションが必要である。ただ、そこに立ちはだかるのは「大きすぎる」という問題だ。(全8話中第4話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(3)ダイバーシティの場とタテ社会の問題
知識が圧倒的に不足していた時代には、いわゆる「知識人」とよばれる人が尊敬された。しかし、情報があふれ、それに誰でもたやすくアクセスできる現代では、知識の多寡は教養の有無にとって決定的な条件ではない。むしろ違う分野の人と交流し、互いの知識を結びつけ、新しいものを生み出す、ダイバーシティの場に着目したい。(全8話中第3話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(2)教養がある人とない人の差
明治以来、日本の教養人は行動を起こさず、高等遊民的に物事を傍観するというイメージがあった。しかし、アメリカではリベラルアーツが民主主義社会の一員として必要な要素と見なされている。実際に「教養がある」と思われる人とそうでない人の違いは、知識の問題ではなく、行動そのものに表れるものだという。(全8話中第2話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
「現代において教養が重要だ」とよくいわれるが、そもそも教養とは何なのか。小宮山宏氏は東京大学で学生たちにずっと言い続けてきたことが3つあるという。それは何か。長谷川眞理子氏との対談ウェビナーの中で飛び出した、痛快な教養論をお届けする。(全8話中第1話:2022年6月29日開催ウェビナー〈現代人に必要な「教養」とは?〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
心と感情の進化(3)脳の進化とこれからの課題
人間の行動には、自己制御によって認知が強く作用するものから情動的なものまでさまざまで、そこにはグラデーションがある。また、人間には生存や繁殖には直接関わらないように見えるが、高度な能力がある。それは抽象化・一般化からカテゴリー化、概念化、入れ子構造の理解などだ。ここまで脳を進化させてきた人間だが、昨今AIの進歩やオンライン会議の普及などもあり、「心と感情」の問題はこれからどうなっていくのだろうか。(全3話中第3話)
心と感情の進化(2)「知情意」と脳の関係
日本には昔から「知情意」という言葉があり、知にあたる認知・認識だけではなく、情にあたる感情・情動や、意にあたる意志も尊重される文化が育まれてきた。このことは、現代の脳科学によって感覚器と脳の関係、脳の構造が明らかになってきていることで重みを増す。フィニアス・ゲイジの事例や脳の仕組みを取り上げながら、感情と脳の関係について考えていく。(全3話中第2話)
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」を分析したり定義したりするのは難しい。行動生態学から考えると全ての基礎は、動物は「動ける」ということだ。そのため、つねに新しい状況に直面し、そのつど何をするかを決めなくてはいけない。その行動選択と意思決定において、人間は「感情・情動」が大きく関わってくる。(全3話中第1話)
「今、ここ」からの飛躍のための教養(2)日本の教養離れと知の構造化
日本で教養離れが起こった理由の一つに、いわゆる「教養人」の姿勢があった。世間から遊離して机上の空論をもて遊ぶのではなく、知を活用する人になるためには、広い興味を持って知識を集め、それを構造化する必要がある。そして自分なりの意見・疑問を持つと、未知な部分への興味はより広がっていく。(全2話中第2話)
「今、ここ」からの飛躍のための教養(1)4つの「限界」と「知の体系」を知る
「教養とは何か」を知るには、教養小説を読めばいいのだろうか。日本では1990年代以降、「教養部廃止」の議論が頻出したが、「教養とは何か」について議論し始めると収拾がつかなくなり、多くの大学で教養学部が廃止となってしまった。一方、リベラルアーツを核とするアメリカのイェール大学では、リベラルアーツ(教養)について人類が集積してきた「知の体系」として明快に整理され、その目的までもがしっかりと明記されている。(全2話中第1話)
進化医学からみた現代の病気(3)食への影響と人類学からの提言
人類の進化において、食事はどのような影響を与えてきたのか。現代では、生活習慣病とも密接な関係のある超加工食品の健康被害や、食料生産における環境汚染も指摘されている。ヒトにも地球にも優しい持続可能な食環境の改善・整備が求められている。(全3話中第3話)
進化医学からみた現代の病気(2)感染症と生活習慣病
厚生労働省による感染症の類型分けを見ていると、そのほとんどが1900年代以降に発生していることが分かる。しかもこの100年で急増している。なぜ近代において病気が増えているのか。また、それらを防ぐにはどうすればいいのか。生活習慣病についての話と合わせて解説する。(全3話中第2話)
進化医学からみた現代の病気(1)人類の進化と病気の関係
日本人の死因の第一位となっているがんや生活習慣病など、病気は常に私たちの生命を条件づけている。そうした病気とヒトの関係を進化生物学の観点から考えるのが、「進化医学」である。では、現代の病気は人類の進化とどのような関係にあるのだろうか。(全3話中第1話)
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(4)知識基盤社会での人権
LGBTは進化生物学の観点からいえば、その存在が広がることはないが必ず発生する、つまり、常にマイノリティの存在である。それゆえ、これまで世界の中で隠されてきたり、ないことになっていたりして、ずっと抑圧され続けてきた。しかし、今は知識基盤社会で、人権についての考え方が広がっている時代である。大事なことは、多様な性が心地よく生きられる社会を実現することではないだろうか。(全4話中第4話)
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(3)性分化の複雑性と性の不一致
雌と雄への性分化には、遺伝子のさまざまな働きによって起こる複雑な過程がある。さらにこれは胎児のときに起こることから、母体からの影響を受けることになる。そうした中、からだの性と脳の性が不一致となり、典型的ではない雄あるいは雌が発生する可能性がある。実際にそうしたことが毎世代、発生しているのだが、なぜ広がっていかないのか。(全4話中第3話)
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(2)哺乳類の性分化
雌雄同体や性転換を行う生物がいる一方で、ヒトを含む哺乳類の性は、一度決まると自然に変わることはない。遺伝子によって雌と雄が決まる際に、性決定のキーになるのがY染色体上にある「SRY遺伝子」の働きである。いったいどのような仕組みなのか。(全4話中第2話)
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
生殖には「無性生殖」と「有性生殖」の2種類がある。ヒトは雌と雄が交配して子孫を残す「有性生殖」を行う生物だが、子孫を残すという意味では、個体が単独で新しい個体をつくる「無性生殖」のほうが有利である。にもかかわらず、なぜ多くの生物が有性生殖を行うのか。そしてなぜ雌と雄という二つの性になったのか。(全4話中第1話)
老いなき世界が告げるもの~永遠の命は本当に必要なのか~
人新世によって人間活動に警鐘が鳴らされる時代にあって、人間の老化を治療しようという書籍が出版された。デビッド・シンクレアとマシュー・D・ラプラントの共著による『LIFESPAN 老いなき世界』である。生きものが老化して死に至るメカニズムを改変するようになったら、それは人間と呼べるのだろうか。
人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(3)無視できなくなった負の人間活動
「人間活動が地質学的な痕跡を残す」という人新世の問題提起に対して、地球を鳥瞰的に見ても「人間圏」の存在は明らかだという指摘がある。また、物質の循環を基準とした「エコロジカル・フットプリント」という指標の導入も進んでいる。いずれを見ても、文明は「見過ごせない」段階に入ったようだ。(全3話中第3話)
人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(2)人新世の始まり
人新世がいつ始まったのかについては議論が分かれる。農耕革命を始まりとする説もあれば、1960年代と指摘する説もある。今回は、2020年に発表された論文で人新世開始時期の痕跡を示した3つのグラフを通して、人新世のスタート地点に迫っていく。(全3話中第2話)
人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(1)地球史と人類の進化史
「人新世」という言葉が脚光を浴びている。人類の営みは、地質区分に新しい時代区分を産むほど、地球表面に影響を及ぼしているのだろうか。なぜ、世界中が注目するようになったのだろう。そして、人新世と呼べるようになるのはいつ頃からか。長いスパンで地球と人類の歴史を振り返ると、それらの疑問が解決する。(全3話中第1話)
ヒトの進化史と現代社会(1)自然人類学でみるヒトの進化
地球誕生から現在までを1年のカレンダーにすると、私たちホモ・サピエンスが発生したのは12月31日の午後11時半頃だ、とよく言われる。そこまでのスケール感は持てなくても、現代社会が抱えるさまざまな問題に対して、人類の進化史から見た場合の見地はどうなるのだろう。自然人類学者で総合研究大学院大学副学長・長谷川眞理子氏にお話を伺う。(全4話中第1話目)。
ヒトの進化史と現代社会(2)大繁栄の原動力
若い頃、タンザニアの野生チンパンジーを研究しながら2年半生活した自然人類学者で総合研究大学院大学副学長・長谷川眞理子氏。その経験は、学問上の素材のみならず、現代の人間の暮らしや社会のあり方を考えることにも役立っているという。チンパンジーとヒトの社会の違いに、人類の大繁栄の手がかりは隠されているのだろうか。(全4話中第2話目)
ヒトの進化史と現代社会(3)社会脳仮説とは何か
自然人類学者で総合研究大学院大学副学長・長谷川眞理子氏による、ヒトの進化と現代社会の関係を考えるシリーズ講話第3弾。ヒトは生物の進化史上、あり得ないほど大きな脳に進化したが、それはなぜか? その原因の一つといわれる社会脳仮説について解説する。(全4話中第3話目)
ヒトの進化史と現代社会(4)ヒトの社会は共同繁殖
自然人類学者で総合研究大学院大学副学長・長谷川眞理子氏が、ヒトの大きな脳と現代社会の関係を解説するシリーズ講話最終回。ヒトは異様ともいえる進化を遂げて、今の生活を手にしたわけだが、それは他の動物との決定的な違いがあったからだ。その大きな特徴とは?(全4話中第4話目)
性淘汰の理論~性差の意味は何か(1)ダーウィンによる二つのシナリオ
雄と雌はなぜ違っているのだろう。100年以上前にこのことを考えたのはダーウィンだった。生物の進化を説明した「自然淘汰」説だけでは説明しきれないほど、雄と雌には差が存在する。まず、その実態とダーウィンの考えた二つのシナリオを結び付けて考えてみよう。(全3話中第1話)
性淘汰の理論~性差の意味は何か(2)雄とは何か、雌とは何か
なぜ雄と雌では繁殖をめぐる競争のあり方が違い、それが性差となって現れるのだろう。そもそも雄と雌の定義とは何なのか。ダーウィンの理論から100年以上を経て、1990年代に立証された性淘汰のあり方に迫ってみよう。(全3話中第2話)
性淘汰の理論~性差の意味は何か(3)雌はなぜ選り好みするのか
19世紀当時、ダーウィンが提唱した「雌による選り好み」説は学会や世間から否定された。雌雄の能力に対する偏見も強かったが、立証ができなかったからだ。それから100年以上たった1990年代、「雌による選り好み」説は証明されたのだが、その意味についてはいまだ議論が続いているという。その中で出てきたのが「ランナウェイ説」だ。「ランナウェイ説」とはいったいどのような考え方なのか。総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授・長谷川眞理子氏が解説する。(全3話中最終話)
進化生物学から見た少子化問題(1)近代以前の嬰児殺
「近代以前の社会は母親の子殺しに割と寛容だった」と、総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏は語る。ヒトは昔から母親による子殺しが多いという。なぜかつて母親の子殺しは許されたのか。長谷川氏が進化生物学の観点から語る。(全5話中第1話)
進化生物学から見た少子化問題(2)現代の虐待リスク
「虐待はしてはならない行為だ」「母親なのになぜ虐待するのか」「虐待をする母親には人権の意識がない」などと言っても、子どもの虐待の問題は何も解決しないと、総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏は言う。では、いったいどうしたらいいのか。なぜ虐待は起こるのか。長谷川氏が進化生物学の見地から語る。(全5話中第2話)
進化生物学から見た少子化問題(3)避妊と時間割引
「自分たちの意志でかなり確実に避妊できるようになったことが、先進国の少子化の原因ではないか」と語るのは総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏だ。長谷川氏が、児童虐待・嬰児殺しと同じ枠の中で「少子化問題」について考える。(全5話中第3話)
進化生物学から見た少子化問題(4)少子化が起こる理由
社会・文化が発展して先進国となり、女性の学歴が上昇して社会進出が起こると、出生率が減るのはいったいなぜか。総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏が、少子化メカニズムの生物学的・脳科学的な理由を語る。(全5話中第4話)
進化生物学から見た少子化問題(5)少子化を変える方法
近現代文明は子どもを減らす方向に考えを推し進めるばかりで、子どもをたくさん持とうとはさせない社会だが、少子化の状況をどうにか変える手立ては考えられる。そう語るのは、総合研究大学院大学理事・学長で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏だ。それはどのような手立てなのだろうか。(全5話中第5話)
知性の進化と科学技術文明の未来(1)ヒトは本当に賢いか
人類の進化史は約600万年。それに引き換え、産業革命以来のおよそ100年間は、あまりの超高速で環境変化が起きていると、総合研究大学院大学長の長谷川眞理子氏は言う。変化の果てに待っているのは何なのか? 多忙な日々の中、時には立ち止まって、悠久の時の流れと人類の行く末について考えてみるのはどうだろうか。(全3話中第1話)
知性の進化と科学技術文明の未来(2)科学と技術は別物か
現在の科学技術文明があまりにも急激に進んできたことに、人類学の立場から疑問を覚えているのが、総合研究大学院大学長の長谷川眞理子氏である。今回は、科学の考え方はどこでどのように始まり、どう発展してきたのかを振り返るところから始まる。科学の原動力はどこにあり、技術に向かおうとする力とは、どう違うのだろうか。(全3話中第2話)
知性の進化と科学技術文明の未来(3)予測できない未来
人類の進化がもたらした現在の科学技術文明を、われわれは当然のごとく享受し、消費するばかりで振り返りを怠っている。そのことについて、人類学の立場から問題提起をするのが総合研究大学院大学長の長谷川眞理子氏だ。発展する科学技術は私たちをどこに連れていくのか。技術の原動力である欲望自体は、誰にも精査されないまま放置されていいのだろうか。(全3話中第3話)
「学びたい」心のための環境づくり
人生を豊かに、充実したものにするために、必要不可欠なスパイスとなるのが「好奇心」であることを否定する人はいないだろう。しかし、この「好奇心」は、進化生物学見地からすると、どのように考えられるのだろうか。行動生態学や自然人類学の専門家としてチンパンジーやクジャクなどの研究に携わってきた長谷川眞理子氏に「学びとは何か」について、人類を大きなスパンで捉えながら解説いただく。
進化心理学とは何か?~生物進化と心(1)ダーウィンと心理学
ダーウィンといえば「進化論」の提唱者として有名だが、彼の研究が心理面にも及んでいたことを知る人はあまり多くない。近代の心理学が始まったのは、彼の死後まもない19世紀後半。なぜダーウィンの研究は心理学の泰斗とならなかったのか。ダーウィン関連の著作も多い総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第1話)
進化心理学とは何か?~生物進化と心(2)行動主義から進化心理学へ
心理を物理学的に統合しようとした極致として、自由意志はないとしたのがスキナーの「行動主義」である。こうした方向に進む心理学に対して、1980年代末から進化心理学の動きが新しく始まる。その概要を、総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第2話)
進化心理学とは何か?~生物進化と心(3)心はアーミーナイフ
進化心理学では、臓器は進化の過程とともに環境適応するように発達してきたという。現代人が気になるのは、それが今なお備わっているのか、また大きく変化した環境のもとでどう働いているのかという点だろう。総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第3話)
進化心理学とは何か?~生物進化と心(4)今後の研究課題と隣接分野
進化心理学の研究課題は、多岐にわたっている。意思決定における進化バイアスは、進化経済学の方向に発展した。また、進化心理学では文化は環境だと考えるが、文化心理学という分野もある。それらはどのような学問なのか。総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第4話)
私のおすすめ本:『進化 生命のたどる道』
生物学の中でも進化生物学が一番面白いと長谷川眞理子氏は言う。その氏が進化についての多くの本の中から特におすすめの本を紹介する。それは、生物の進化に関する「なぜ」や「どのように」といった問いに応えてくれる貴重な書である。
人類学と「人種差別」(1)キリスト教世界観と人類学
人類学が「人種」というものをどう定義し、扱ってきたかという経緯を解説するシリーズレクチャー。人類学の背景にはキリスト教世界観があるため、生物は神の下、「自然の梯子」の序列の中に置かれ、さまざまな人種についても多様性より優劣で捉えられていた。18世紀、リンネの分類体系でようやく人種全てを「ホモ・サピエンス」と認識されるようになる。このリンネの定義は人類学史上、画期的なものだったが、亜種の記述にはいろいろな偏見が入り混じっていた。(全3話中第1話)
人類学と「人種差別」(2)人類学の成立と先住民の扱い
人類学の成立期は、西欧諸国によって世界中が植民地化して征服されていった19世紀で、先住民への人権というものが広がっていない時代だった。その時、どのようなことが行われていたのか。先住民への扱いはどのようなものだったのか。(全3話中第2話)
人類学と「人種差別」(3)人類学者の使命
人類学の研究という名目で、略奪、収奪を被ってきた先住民の扱いに関して、法律が整い、論争に解決がつくようになったのはごく最近、2010年以降のことだ。しかし、人類学者が先住民と対立していては問題の解決にはならないと、長谷川眞理子氏は言う。ではどう対処していけばいいのか。これからの人類学者の使命について提言する。(全3話中第3話)
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(1)BIG History
人類はその出現以降どのように発展してきたのか。宇宙の始まりから現在に至るまでの歴史を、人類の発展とともに振り返る「BIG History」が最近、注目を集めている。その代表ともいえるユヴァル・ノア・ハラリの二つの著作『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』について、長谷川眞理子氏が独自の視点で解説を行っていく。今回はまず『サピエンス全史』の内容についてだ。(全5回中第1回)
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(2)認知革命
ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』の第1部では、認知革命についての議論が展開される。人類は、主観としての認識だけではなく、他人も同じものを認識しているという認識を持つことによって、虚構を共有する能力を身に付けた。この能力こそが、人類の持つ集団としての力を発揮させることに大きく役立ったのである。(全5回中第2回)
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(3)農業革命
人類の発展にとって次に重要だったのは農業革命である。農業が発展することで人類は「計画可能性」を獲得し、未来の生活について思いを巡らすことができるようになった。また、富の蓄積が可能となり、その結果、行政機構や書字言語が発達した。しかし一方で、富の独占によるヒエラルキーと不平等が顕在化するなど、良くない側面についてもユヴァル・ノア・ハラリは言及している。今回は『サピエンス全史』第2部・農業革命について、長谷川真理子氏が独自の議論を展開する。(全5回中第3回)
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(4)人類の統一と科学革命
時はさらに進み、貨幣や帝国、世界宗教といった装置が生み出されることで、遠く隔たった場所に住む人類は、相互に集団として認識できるようになった。また、「知らないという事実を知る」ことで「知りたい」という強い欲求が生まれて、近代科学は急速に発展した。人類はこれまで説明してきた4つの要素によって、現在の繁栄を獲得してきた。今回は、『サピエンス全史』第3部・人類の統一と第4部・科学革命についての丁寧な解説とともに、今後その知見をどのように役立てて行くべきかの示唆を与える。(全5回中第4回)
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(5)人類の未来
『ホモ・デウス』という本には、人類の未来の話として、AIの発展と人類のさらなる欲求の形としての不老不死を求める動きが書かれている。現在に至るまでの発展の歴史の中で、戦争や飢饉、感染症を通じた死の確率は大幅に下がり全体として幸福になった人類は、次なるステップとして不老不死を求めると、『ホモ・デウス』では主張されている。果たして本当にそうか。長谷川真理子氏は、人類の未来に対して異なる視点を投げかける。(全5回中第5回)
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
ウイルスとはいったい何なのか。彼らは生物とは異なり、自分でエネルギーを生み出して生存するわけではなく、遺伝情報のみを持ち、他の生物の機能を利用して自らを複製している。そうした「ウイルスと宿主の関係」はきわめて特異的だと長谷川眞理子氏は言う。(全3話中第1話)
ウイルスの話~その本質と特性(2)感染メカニズムとDNA・RNA
ウイルスにはDNA(二本鎖)を持っているものとRNA(一本鎖)しか持っていないものが存在する。ポイントは変異の速度で、DNAウイルスは頻繁に変異が起こらないため、その間にワクチンを開発することができる。一方、RNAだけしか持っていないウイルスは非常に速く変異する。大きな被害をもたらすのはこのウイルスで、代表的なのは2020年現在流行している新型コロナウイルスや、SARS、エボラウイルスなどだ。(全3話中第2話)
ウイルスの話~その本質と特性(3)ウイルスの起源とグローバル化との関係
ウイルスの起源はどこにあるのか。起源はウイルスごとに異なるが、サル、ブタ、ニワトリ、水鳥などがウイルスに感染し、ヒトと一緒に暮らすことで接触が高まるあいだにそのウイルスが突然変異を起こし、ヒトに感染するようになるケースが多い。特に新しい種に感染するようになったウイルスは強い症状が出やすいので、適切に対処する必要がある。近年、こうしたウイルスの大流行は急速なグローバル化の帰結でもある。(全3話中第3話)
知能と進化(1)知性と身体性
進化生物学を専門とする総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と、人工知能(AI)およびディープラーニングを専門とする東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏による対談が行われた。長年、進化生物学を研究してきた長谷川氏にとって、AIはさまざまな点で腑に落ちない存在だが、ではそのAIにとって身体性とは何なのか。(全8話中第1話)
知能と進化(2)AIにとって意味とは何か
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と、東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏の対談において、次に問題となったのは、人々が何かを認知する際に把捉される「意味」についてであった。人工知能(AI)は「意味」を理解できているのだろうか。(全8話中第2話)
知能と進化(3)AIにとっての概念
人工知能(AI)はいかにして「概念」を把握するのか。AIにとっての身体性や意味について意見を交わしてきた総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏が、これまでの議論を踏まえ、自動運転やAlphaGoの事例から概念の導出過程について論ずる。(全8話中第3話)
知能と進化(4)人間の特殊性としての蓄積的文化
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏は、蓄積的に行われていくという人工知能(AI)の学習過程と類推的に、進化生物学でいわれる人間に固有な性質としての蓄積的文化について議論する。人間が有する猿とは違った性質とは一体何なのか。(全8話中第4話)
知能と進化(5)人間の知性と限界
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏が次に議題に挙げたのは、人間の知性の限界についてである。両者の専門的見地からすると、その限界の外にはどのような知性があり得るのか。(全8話中第5話)
知能と進化(6)自己概念の複雑さ
人工知能(AI)や生物にとって、「自己」とはいかに定義できるのだろうか。総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏が、シンギュラリティ以後の生命の在り方を含め、多彩な議論を展開する。(全8話中第6話)
知能と進化(7)人工知能の未来像
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏は対談の終盤、東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏に、人工知能の発展に伴い未来はどのような世界になるかを問うた。松尾氏によれば、それは死の消滅とそれがもたらす社会的リスクであるという。(全8話中第7話)
知能と進化(8)人工知能研究のための進化生物学
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏の対談シリーズ最終話は、今後の人工知能研究のために何を読んだらいいか、長谷川氏の勧めるものから話が始まった。人工知能研究と進化生物学が交わる点は、最終的にどこに求められるだろうか。(全8話中第8話)