第一次世界大戦から100年にあたって

世界史に類を見ない残酷な戦法や破壊的な結果をもたらし、「20世紀の病根のほとんどはこの戦争に由来する」といわれた第一次世界大戦から100年が経過した2014年は、第三次ガザ戦争とシリアの二重内紛、ロシアのクリミア併合、ISの台頭など、「ポスト・冷戦期の終わり」を象徴する緊張が続出した。第一次世界大戦と中東、そして日本の関係を見つめ直しつつ、現代につながる教訓を導き出す。


ISが挑戦しているのはサイクス・ピコ秘密協定の無効化

第一次世界大戦から100年にあたって(1)20世紀の病根と21世紀の進路

「2014年は後世、国際政治と世界史の転換点として記憶されるかもしれない」と山内昌之氏は言う。第一次世界大戦から100年。ようやく世界で一番むごかった戦争の痕跡が、中東でもウクライナでもそして日本でも、何か新しいものを吹き出そうとしているからだ。第一次世界大戦と中東、そして日本の関係を見詰め直すシリーズ講話の第一弾。

2014年は、第三次ガザ戦争とシリアにおける二重の内紛、ロシアによるクリミア併合など、「ポスト・冷戦期の終わり」を象徴する緊張が続出した。アメリカの影響力後退、地域主義の台頭、未承認国家の出現。とりわけ中東の地政学を大きく変動させる「イスラム国」は、国際世論を震撼させる存在だ。しかし、歴史的な見方を取れば彼らが挑戦しているのは、第一次世界大戦がアラブに強要した「サイクス・ピコ秘密協定の無効化」だ。イスラム国に対する拒否戦線を組むことで、世界は従来の国際秩序と国家観を守ろうとしているのだが…。(全4話中第1話目)


スエズ運河とアラビア湾が挟む中東の地政学的意味が大変化

第一次世界大戦から100年にあたって(2)帝国崩壊の余波と中東の役割

第一次世界大戦から100年、中東から黒海に至る地域で国際秩序を揺るがす事件が絶え間なく続いている。これまで第一次世界大戦に関する考察は、ヨーロッパの中心性を自明の前提とし、中東の事象は脇に追いやられる傾向があった。この考察は、驚くほど洞察力に欠けると山内昌之氏は指摘する。果たして、その理由は?  第一次世界大戦を機にヨーロッパと中東が外交、国際秩序という観点からどう変化していったのか、山内氏が解説する。(全4話中第2話目)


日本海軍の第二特務艦隊、地中海で奮戦す…その成果と教訓

第一次世界大戦から100年にあたって(3)第一次世界大戦における日本

概して、日本人の第一次世界大戦に対する見方は希薄であるが、この大戦が日本の立場を大きく変化させたのは確かである。その変化は何を日本にもたらしたのか? また何が第二次世界大戦の悲劇につながったのか? 山内昌之氏が100年前の大戦と日本の関係を振り返って解説する。(全4話中第3話目)


バブル景気、格差社会、政界再編‥100年前との共通点

第一次世界大戦から100年にあたって(4)大戦期と現代日本を比較して学ぶべきこと

第一次世界大戦は100年前のことでありながら、その戦中、戦後の様子には現代の日本と多くの共通点を見出すことができる。今、私たちは大戦と現代の比較に何を見出し、何を学ぶべきなのか。山内昌之氏による過去に学び現代を知るためのシリーズ講話最終回。(全4話中第4話目)


中東・ロシアの混乱は「サイクス・ピコ秘密協定」に起因

第一次世界大戦100年と日本(1)ポスト冷戦の終焉

日本人には印象の薄い第一次世界大戦だが、実は「20世紀の病根のほとんど全てが第一次世界戦に由来する」といわれるほど、歴史的に重要な転換点だった。一体その時、世界はどう変わったのか。そしてそれは今にどう影響しているのか。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第1回(全5回)。


石油における安全性と確実性は多様性と多元性に潜む

第一次世界大戦100年と日本(2)石油と安全保障

中東の紛争、「イスラム国」(IS)、ウクライナ。現在の国際秩序を揺るがす混乱のどれもが、まさか100年前に五つの大帝国が崩壊した余波だとは。歴史学者・山内昌之氏が“石油エネルギー”の視点からこの一世紀の近代史を読み解き、紛争の構造を説く。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第2回(全5回)。


地中海で学んだ通商破壊戦の重要性を帝国海軍は生かせず

第一次世界大戦100年と日本(3)生かされない教訓

日本人の第一次世界大戦に対する意識は、今も当時も希薄だ。だが、実は日本軍は陸軍・海軍ともに参戦し、地中海にも軍を派遣していた。第一次世界大戦における日本の意外な動向とその影響を、歴史学者・山内昌之氏が語る。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第3回(全5回)。


平成バブルの崩壊はさながら第一次大戦後の反動不況

第一次世界大戦100年と日本(4)バブルの類似性

第一次世界大戦後の不況と現在の不況は似ている、と歴史学者・山内昌之氏は指摘する。一体どこがどのように似ているのだろうか。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第4回(全5回)。


大国の没落やパワーシフト、相次ぐ外交失策・・・

第一次世界大戦100年と日本(5)歴史は繰り返す

「歴史から学ばぬ者は歴史を繰り返す」が、「学者も無学の者も、ともに歴史を理解することができる」のが、歴史の特徴だ。歴史学者・山内昌之氏が、歴史から学ぶ姿勢を改めて問う。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第5回(全5回)。